『アエネーイス』 ウェルギリウス(岩波文庫)

アエネーイス (上) (岩波文庫)アエネーイス (上) (岩波文庫)
(1997/03)
ウェルギリウス

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アエネーイス (下) (岩波文庫)アエネーイス (下) (岩波文庫)
(1997/03)
ウェルギリウス

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書名:アエネーイス
著者:ウェルギリウス
訳者:泉井 久之助
出版社:岩波書店
ページ数:497(上)、453(下)

おすすめ度:★★★★




ウェルギリウスは、ダンテが『神曲』で地獄を巡る際の案内人に選んだことでも知られているラテン文学最大の詩人で、その最高傑作と言われているのがこの『アエネーイス』だ。
話の内容のみならず、作品全体にホメロスからの影響が顕著に見て取られ、『イリアス』、『オデュッセイア』に続けて読むとより興味深く感じられる作品だろう。

『アエネーイス』は、トロイア戦争の末、陥落したトロイアから逃げ出した王子アエネーアスが、遍歴の末にイタリアの地にたどり着き、そこでまた土着の民族と戦になる模様を描いた詩作品だ。
トロイアからの脱出の際に父アンキセスを背負うアエネーアスや、カルタゴの女王ディードーの悲恋などは、中でも特に有名なエピソードなので記憶に留めておく価値がある。

アエネーアスは、『イリアス』においてもギリシア名であるアイネイアスの名で活躍している。
しかしながら、『イリアス』の項でも紹介したブラッド・ピット主演の映画『トロイ』では、ささやかな演出としてほんの一瞬だけ登場の機会を与えられているに過ぎない。
アイネイアスのファンはただただがっかりするばかりだが、トロイア戦争を一本の映画にしようというのがそもそも無理な話なのであって、アイネイアスが脇役に回されるのも仕方のないことなのだろう。
アイネイアスの活躍を読まれたい方は、彼を主人公とした『アエネーイス』をぜひ読んでみてほしい。

『アエネーイス』には、時の皇帝アウグストゥスへの追従とも感じられる文言が多かったりするので、ウェルギリウスの人品に対してとは言わないまでも、少なくともウェルギリウスの生きていた時代に対してはいくらか失望を感じてしまう。
文学作品が権力者の顔色を窺いながら執筆されていたのであれば、今日の読者からすればラテン文学全般の魅力が乏しく感じられたとしてもやむをえないことだろう。
そんな時代背景もあるにせよ、ラテン文学の最高峰とも言われる『アエネーイス』は確固たる地位を占めている傑作であるので、中には訳文のスタイルに抵抗を感じる方もいるかもしれないが、ぜひ一度読んでみていただきたいと思う。
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『牧歌/農耕詩』 ウェルギリウス(京都大学学術出版会)

牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)
(2004/05)
ウェルギリウス

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書名:牧歌/農耕詩
著者:ウェルギリウス
訳者:小川 正広
出版社:京都大学学術出版会
ページ数:279

おすすめ度:★★☆☆☆




ウェルギリウスの『牧歌』と『農耕詩』を一冊にまとめたのがこの本である。
ラテン詩の雰囲気を感じ取ることのできる作品だが、『アエネーイス』と比べると格段にストーリー性に乏しく、退屈に思う人も少なくないだろう。
あまり一般受けする作品ではないと思うので、ラテン文学や、『アエネーイス』や『神曲』でウェルギリウスに興味を持った人向けである。

『牧歌』は、短い十の歌を集めたもの。
当時の世相を反映している詩行も多いが、脚注が充実しているので理解に苦しむ部分はまったくないと言ってもいいほどだ。
テオクリトスに始まる「牧歌」というスタイルは、ウェルギリウスを経て、後のタッソの牧歌劇『アミンタ』へと受け継がれていくだろう。

『農耕詩』は、ヘシオドスの『仕事と日』につながる作品として読むことができる。
畑作や葡萄の栽培、家畜の世話から養蜂まで、農村で必要な知識を網羅した詩作品となっている。
当時の世界観・宇宙観や自然学の未発達なさまなどを読み取ることができて興味深い反面、ほとんどの部分が実践を前提にした記述なので、後世でいうところの田園小説には程遠く、『アエネーイス』のような物語詩を期待すると大いに失望するに違いない。

作品数が少ないということもあり、たとえ翻訳であっても『アエネーイス』と『牧歌/農耕詩』を読めば、ラテン文学最高の詩人と評されるウェルギリウスの作品がどのようなものか、そのだいたいの輪郭をつかむことができる。
しかし、この『牧歌/農耕詩』に関して言えば、わかりやすい解説でウェルギリウスに対する理解を深めることができるという利点こそあるものの、必ずしもすべての人に楽しい読書時間を提供することはないだろう。
私のようにラテン語での鑑賞ができない読者には、あくまでギリシアからルネサンスをつなぐ鍵として読むことをお勧めしたい。
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