『変身物語』 オウィディウス(岩波文庫)

オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)
(1981/09/16)
オウィディウス

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オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)
(1984/02/16)
オウィディウス

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書名:変身物語
著者:オウィディウス
訳者:中村 善也
出版社:岩波書店
ページ数:366(上)、371(下)

おすすめ度:★★★★




ギリシア・ローマ神話に関する古典として有名な『変身物語』。
ギリシア神話には神の力によって様々な形に変身させられる人物が無数に登場するが、それらを一覧できるのが本書だ。
文学や絵画など、西洋文化に関心のある人は目を通しておくべき本の一つだろう。

『変身物語』には無数の話が詰まっているが、その中でもエコーやナルキッソスなど、今日に至るまで使用されている単語の語源になった物語は特に興味深く読めることだろう。
また、恋多き神であるユピテルの恋愛遍歴も読むことができる。
ユピテルはなんと好色の主神かと呆れてしまいそうになるが、何十年かで人生を閉じる人間と違い、不死の身である者ならそれくらいの数の色恋沙汰は普通なのかもしれない。

オウィディウスの代表作である『変身物語』は、しばしば同時代の詩人であるウェルギリウスの代表作『アエネーイス』と比較される。
いずれもラテン文学の傑作とされている作品だが、一方はエピソードの宝庫であり、一方はまとまりのある一つの物語であるから、単純に比較できるものでもないだろうが、私個人の意見としては、本自体としては『アエネーイス』の方が面白く、教養を得るための古典としては『変身物語』がはるかに優れているように思う。
西洋美術に関心のある方ならば同意していただけるように思うのだがいかがだろうか。

『変身物語』は、後世の芸術家に無数のモチーフを提供しているテーマを集めているだけに、たいへん興味深い本ではある。
しかし、古代ギリシアに詳しくない人が初めて手にするにしては、訳注こそあるものの、神や人物、地名などの固有名詞があまりにも多すぎて、おそらく何が何やら区別がつかなくなることだろうから、一度で全部を覚えようとはせず、最初は心の片隅にエピソードの輪郭を留めるくらいの気持ちで読むのがいいのかもしれない。
いずれにしても、辞典的な使い方もできるので、書架に並べておいて損はない本だと思う。
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『恋愛指南―アルス・アマトリア』 オウィディウス(岩波文庫)

恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)

書名:恋愛指南―アルス・アマトリア
著者:オウィディウス
訳者:沓掛 良彦
出版社:岩波書店
ページ数:214

おすすめ度:★★★☆☆




変身物語』の作者として知られるオウィディウスは恋愛に関する作品も数点物しているが、それらの中の一つがこの『恋愛指南―アルス・アマトリア』である。
後年、風紀を紊乱したかどでオウィディウスはローマを追放されることとなるが、その一因となったのがこの著作らしい。
今日的な観点からすればさほど問題視されるような内容ではないにせよ、古典文学としては珍しく卑猥な部類に入る作品だ。

『恋愛指南』は、その表題のとおり、どうすれば異性をものにできるかといった問題が中心となっている。
世の中、何事にもうまいやり方があってしかるべきなのだから、色恋の達人とも言うべき筆者が読者に恋愛の技法を伝授しようというスタンスで書かれている。
テーマから予想がつくように、全体に上品さには欠ける部分が多いが、読者は風紀の乱れてきていたローマの様子を窺わせる品のなさをこそ楽しむことができるはずだ。

あえて『恋愛指南』の難点を挙げるとすれば、それはギリシア・ローマ神話への言及がきわめて多いことだろうか。
訳注が充実しているために内容を把握できないことはないはずだが、中には数十ページに及ぶ訳注を煩わしいと思われる方もいることだろう。
しかし、ギリシア・ローマ神話に対する豊富な言及も、後に『変身物語』を書き上げることとなるオウィディウスらしい書きぶりと言えるのかもしれない。

2008年に岩波文庫入りした『恋愛指南―アルス・アマトリア』は、以前からそれぞれ異なる邦題で何度か日本語訳が出版されていたこともあり、おそらくオウィディウスの作品の中では『変身物語』に次いで多くの日本人に読まれてきている作品だろう。
そしてこの一冊を読んでいるかいないかで、オウィディウスに対するイメージは大きく変わるに違いない。
今回のこの文庫化を機に、『変身物語』とは異なるオウィディウスの一面がいっそう普及してくれればと思う。
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