『ガリヴァー旅行記』 スウィフト(岩波文庫)

ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)
(1980/10/16)
スウィフト

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書名:ガリヴァー旅行記
著者:ジョナサン・スウィフト
訳者:平井 正穂
出版社:岩波書店
ページ数:461

おすすめ度:★★★★★




あまりにもその名を知られた作品である『ガリヴァー旅行記』、おそらくこの名を知らぬ人はいないのではなかろうか。
とはいえ、子供向けのダイジェスト版を除けば、それを読んだ人はさほど多くないかもしれない。
スウィフトは、大人が読んでも十分楽しめる洞察力の深さや風刺力の鋭さを備えた作家なので、ぜひ子供向けの抄訳ではない原典からの完訳を読んでみてほしいと思う。

『ガリヴァー旅行記』についてあまり知らない人は、よくガリヴァーの訪れた異国を小人の国と巨人の国だけだと思っていたりする。
現に私が子供の頃に読んだダイジェスト版では、それらの二つ国への旅行、というか漂着のみを扱っていたはずだ。
だが、実際にはガリヴァーはラピュタと呼ばれる天上の国にも、聡明な馬たちの国をも訪れている。
そしてこの「ラピュタ」とは、宮崎駿監督による『天空の城ラピュタ』の源であり、事実、映画内で登場人物の口から「スウィフト」の名が語られてもいる。
今日の読者が読んでも斬新に感じられる着想に満ちた『ガリヴァー旅行記』は、創造を仕事とする人々にインスピレーションを与えてやまない作品と言えるだろうか。
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(2011/12/14)
ジャック・ブラック、ジェイソン・シーゲル 他

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過去に何度も映画化されている『ガリヴァー旅行記』だが、最も新しいものは右のジャック・ブラックによるコメディー映画だろう。
『ガリヴァー旅行記』における数々の名場面を作品内に導入してはいるものの、当然ながら原作に忠実に作られたものではないし、ガリヴァーが訪れる異国の数も限られているので、あくまで『ガリヴァー旅行記』風のものとして見られることをお勧めしたい。

有名なタイトルの小説こそ一度は読んでおきたいものだ、そう考えている方には、この『ガリヴァー旅行記』を強くお勧めしたい。
一読すれば、『ガリヴァー旅行記』は子供向けの冒険譚だと思っていたイメージが、がらりと一新されることだろう。
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『奴婢訓』 スウィフト(岩波文庫)

奴婢訓 (岩波文庫)奴婢訓 (岩波文庫)

書名:奴婢訓
著者:ジョナサン・スウィフト
訳者:深町 弘三
出版社:岩波書店
ページ数:122

おすすめ度:★★★☆☆




風刺の筆を執らせれば右に出るものなしのジョナサン・スウィフトによる、風刺と皮肉に満ちた作品がこの『奴婢訓』である。
『奴婢訓』というタイトルがかしこまった古めかしい感じを醸し出してはいるが、原題は"Directions to Servants"であり、スウィフトが使用人の心得を書いたものとでもいったところだ。
もちろん一筋縄ではいかないのがスウィフトの作品。
読者をいい意味ではぐらかしてくれるに違いない。

『奴婢訓』の読者は、おそらくその1ページ目から驚かされることになる。
何しろスウィフトが召使いたちに対して瞞着や怠慢、金銭的・物質的利益の追求を大真面目に推奨し始めるのだから。
スウィフトが例示し、その実践を要求するごまかしやまやかしの数々に、ついほくそ笑んでしまうのは私だけではないだろう。

『奴婢訓』には、『貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』という、何とも長大なタイトルの小品も併録されている。
10ページ程度の非常に短い作品だが、その風刺の痛烈さには定評があるらしい。
スウィフトの提案する前代未聞の解決法は読者を驚かせることだろうが、風刺が鋭すぎて読む者が心地よささえ感じてしまう、そんな読み応えのある小品に仕上がっている。

本書『奴婢訓』の難点を挙げるとすれば、『奴婢訓』自体が未完の作品であることと、仮名遣いが古いことがある。
未完であることはやむをえないし、未完にもかかわらず十分面白いのが『奴婢訓』なのであるが、仮名遣いが古いとやはり一般受けは望めない。
知らぬ者とてない『ガリヴァー旅行記』の作者であるスウィフトの手になる作品であるだけに、いつの日か改版が出されることに期待したいと思う。

『桶物語・書物戦争 他一篇』 スウィフト(岩波文庫)

桶物語・書物戦争 他一篇 (岩波文庫)桶物語・書物戦争 他一篇 (岩波文庫)

書名:桶物語・書物戦争 他一篇
著者:ジョナサン・スウィフト
訳者:深町 弘三
出版社:岩波書店
ページ数:281

おすすめ度:★★★☆☆




スウィフト初期の作品三点を収録したのが本書『桶物語・書物戦争 他一篇』だ。
論敵を褒めるかのように見せて、その実、徹底的にこきおろすという皮肉な言い回しなど、きわめてスウィフトらしい鋭さを感じさせる作品となっている。
いい意味でも悪い意味でも、いかにもスウィフトという作品が収録されているので、スウィフトに関心のある読者にはお勧めだ。

そもそも『桶物語』という何のことやら察しのつかぬタイトルに興味を抱く読者も少なくないはずだが、その緒言において述べられるように、『桶物語』はたとえ話である。
すべての読者に明解なたとえ話であるとは思えないが、親切な訳注が補ってくれるので、読者がスウィフトの風刺を見失うことはないはずだ。
そうはいっても、数々の脱線をはらむ蛇行した文体には、好き嫌いが分かれるかもしれない。

『書物戦争』と『人工神憑の説』においても、スウィフトは皮肉の手を緩めない。
当時、古代と近代のどちらの学問が優れていたかが論争になっていたようで、これはしばしば『桶物語』にも見られる特徴だが、『書物戦争』においてスウィフトの論敵に対する個人攻撃が最も顕著に表れていて、作品自体がどこか私闘の観すら帯びている。
そういう意味ではあまり普遍性が感じられない作品となっているようだが、ホメロスやアリストテレスなどが古代派の代表として登場するくだりは多くの読者を楽しませることだろう。

1968年に初版となったこの『桶物語・書物戦争』、訳文に古めかしい雰囲気はあるが、仮名遣いは新しいものが採用されている。
ガリヴァー旅行記』以外に何かスウィフトの作品を読みたいという方には、内容的に気楽に読めるが仮名遣いの古い『奴婢訓』と、やや堅苦しい文章ではあるが仮名遣いが読みやすく、さらに新品での入手も容易な『桶物語・書物戦争』と、どちらをよりお勧めするべきなのか判断に迷うところではある。
とはいえ、それぞれ毛色が異なるので、両方を手にしていただくのがベストであることは間違いないだろう。
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