『ロビンソン・クルーソー』 デフォー(岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)
(1967/10/16)
デフォー

商品詳細を見る
ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)ロビンソン・クルーソー〈下〉 (岩波文庫 赤 208-2)
(1971/09/16)
デフォー

商品詳細を見る

書名:ロビンソン・クルーソー
著者:ダニエル・デフォー
訳者:平井 正穂
出版社:岩波書店
ページ数:416(上)、423(下)

おすすめ度:★★★★




キャスト・アウェイ [DVD]キャスト・アウェイ [DVD]
(2009/04/10)
ヘレン・ハント、トム・ハンクス 他

商品詳細を見る
『ロビンソン・クルーソー』といえば、誰もが孤島での一人暮らしというエピソードを知っているし、作者であるデフォーの名をはるかにしのぐ知名度を備えた作品であろう。
当然ながら登場人物は限られているし、ストーリーの振幅には限界があるものの、一人称で語られていく現実的な物語はたいへん読み応えがある。
右は現代版ロビンソン・クルーソーとでも言うべき、トム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』だ。
この映画を見てロビンソン・クルーソーの名を思い出さない人はいないように思うし、孤島で暮らすというモチーフを世に知らしめた『ロビンソン・クルーソー』はやはり一読に値するのではなかろうか。

『ロビンソン・クルーソー』の上巻では、誰もが知る無人島への漂着とそこでの暮らしぶりが語られる。
下巻は第二部として後日発表された作品で、原題は『The farther adventures of Robinson Crusoe』であり、普通日本で『ロビンソン・クルーソー』として出版されている本では訳出されていないようで、二巻組みとなっている岩波文庫の『ロビンソン・クルーソー』が他の出版社のそれより二倍ほどの分量があるのはそういうわけだ。
下巻ではロビンソンが過ごした島を再訪するというエピソードが大半で、その後さらに航海、冒険を行う様子が描かれているが、『ロビンソン・クルーソー』の醍醐味はやはり上巻にあると言わざるをえない。
いかに窮地に陥ろうとも人道的な見地を固守しようとするロビンソンだが、他民族を見下すような言辞や宗教臭さが感じられる部分も多く、デフォーの作品に強い関心を抱いている方以外はあまり楽しめないかもしれない。
同時代の日本人、江戸時代中期の日本人が欧米人をどのように見ていたかを考え合わせれば、ロビンソンがキリスト教信仰や文明の恩恵を受けていない人々を「蛮人」だ「未開」だと蔑視することに対しても寛容にならなければならないのかもしれないが、そのような書きぶりを今日の読者が愉快に感じることは甚だ難しいから、『ロビンソン・クルーソー』の下巻は今後次第に読まれなくなっていく文学作品の一つであると思われる。

何はともあれ、あまりにも有名な古典である『ロビンソン・クルーソー』、上巻だけでもぜひ読んでみていただきたい作品だ。
スポンサーサイト

『モル・フランダーズ』 デフォー(岩波文庫)

モル・フランダーズ 上 (岩波文庫 赤 208-3)モル・フランダーズ 上 (岩波文庫 赤 208-3)
(1968/03/16)
ダニエル・デフォー

商品詳細を見る
モル・フランダーズ 下 (岩波文庫 赤 208-4)モル・フランダーズ 下 (岩波文庫 赤 208-4)
(1968/02/16)
ダニエル・デフォー

商品詳細を見る

書名:モル・フランダーズ
著者:ダニエル・デフォー
訳者:伊澤 龍雄
出版社:岩波書店
ページ数:278(上)、268(下)

おすすめ度:★★★☆☆




ロビンソン・クルーソー』の作者として知られるデフォーだが、そもそもの作品数が多くないとはいえ、彼の長編作品はあまり翻訳されていないのが現状だ。
そんな中の一つとしてかつて岩波文庫入りを果たしたのが、この『モル・フランダーズ』だ。
主人公がある行動に至るまでを細密に描き出す論理的な筆致は、多くの読者がいかにもデフォーによるものであると感じることができるのではなかろうか。

『モル・フランダーズ』は、同名の女主人公がその生涯を語るというスタイルの作品である。
語り手たるモルの回顧は、ロビンソンとはまったく異なった意味合いではあるものの、まさに波乱万丈と言っていいだろう。
というのも、結婚を繰り返す中で奔放な愛人関係を改めようともせず、金銭のためなら法をも犯すという悪女の一代記なのだ。
残忍さではかなり劣るものの、とはいえこの点において劣っているということは登場人物にとって決して不名誉なことではないだろうが、モルの無軌道な生活を読んでいて、私はサドの『悪徳の栄え』の主人公であるジュリエットを思い起こしたほどだ。

イギリス文学において、ファム・ファタル的な要素を備えた女主人公はそういないように記憶しているのだがいかがだろうか。
イギリス文学に対して基本的に道徳的な作品が多いというイメージを抱いているのは、おそらく私だけではないだろう。
ひょっとするとこの『モル・フランダーズ』は、その結末はともかくとして、イギリス文学中における数少ない悪女を描いた作品の一つなのかもしれない。

岩波文庫では少しも珍しいことではないが、『モル・フランダーズ』も絶版になって久しい作品である。
たいていの読者は『ロビンソン・クルーソー』を知った上でこの本を手にすることだろうが、『モル・フランダーズ』は必ずしも『ロビンソン・クルーソー』を読んだことがなくとも十分楽しみうる作品だと思う。
それどころか、『ロビンソン・クルーソー』より楽しめたという読者がいても、私は少しも驚かないことだろう。

『ペスト』 デフォー(中公文庫)

ペスト (中公文庫)ペスト (中公文庫)
(2009/07)
ダニエル デフォー

商品詳細を見る

書名:ペスト
著者:ダニエル・デフォー
訳者:平井 正穂
出版社:中央公論新社
ページ数:453

おすすめ度:★★★★




デフォーの代表的な小説の一つである『ペスト』。
ペストが蔓延したロンドンで、ある人はこうしたとか、こうする人々が多かったという傍観者が記した記録的要素が強い作品であるのに加え、行政の対応や統計的な資料を示していたりもするので、個別の人間に焦点を当てた人間ドラマを描いたというよりは、大きな都会にペストが広がるという一つの事象を包括的に描いた作品である。
ロビンソン・クルーソー』にも通ずるところが多く、デフォーの作風や文体を好む人ならば必ずや楽しんでいただける作品であろう。

時は17世紀の半ば、ロンドンの町をペストが襲う。
富裕層の多くが田舎へと逃げ出す中、筆写である「私」は神の摂理かと思われる数々の支障に遭遇し、結局ロンドンに留まることを決めた。
生命に危険を招くほどの好奇心が「私」を街路へと招き寄せ、そこで「私」は多くの凄惨な場面に立ち会うことになる・・・。
神の摂理を基礎に、道徳的かつ理路整然と物事を考える「私」はロビンソン・クルーソーに似ており、まして好奇心からわざわざ危地に赴くとあっては、「私」はイギリスで生活中のロビンソンなのではないかと思ってしまうほどだ。
また、ロンドンを逃れ、森の中でキャンプ生活をする一団の人々を描いたくだりは、読者にロビンソンの孤島での生活を思い出させるのではなかろうか。
ペスト (新潮文庫)ペスト (新潮文庫)
(1969/10)
カミュ

商品詳細を見る

デフォーの『ペスト』の読者にお勧めしたいのは、カミュによる同題の小説『ペスト』だ。
カミュの作品の方が世に知られているかもしれないが、ある町に伝染病が流行したという作品を描くのに、二人の作家の採る視点がまるで異なるため、それだけ一層互いの特徴を引き立たせていると言える。
デフォーの『ペスト』を気に入られた読者は次にカミュのそれを手にしていただきたいと思うし、その逆もまた然りである。

伝染病を扱ったストーリーは、いまやハリウッドを席巻しているとも呼べるほどに世界に蔓延している。
しかし、デフォーが扱ったのは実際の出来事なのであり、それらの作り話とは迫真性も異なれば、現実味もまったく違い、それだけ読者の心にずしりと響く重みのある作品となっている。
名訳者平井正穂氏によるこの『ペスト』、非常にお勧めの一冊である。
カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク