『レ・ミゼラブル』 ユーゴー(岩波文庫)

レ・ミゼラブル〈1〉 (岩波文庫)レ・ミゼラブル〈1〉 (岩波文庫)
(1987/04/16)
ヴィクトル ユーゴー

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レ・ミゼラブル〈2〉 (岩波文庫)レ・ミゼラブル〈2〉 (岩波文庫)
(1987/04/16)
ヴィクトル ユーゴー

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レ・ミゼラブル〈3〉 (岩波文庫)レ・ミゼラブル〈3〉 (岩波文庫)
(1987/05/18)
ヴィクトル ユーゴー

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レ・ミゼラブル〈4〉 (岩波文庫)レ・ミゼラブル〈4〉 (岩波文庫)
(1987/05/18)
ヴィクトル ユーゴー

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書名:レ・ミゼラブル
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:豊島 与志雄
出版社:岩波書店
ページ数:608(一)、611(二)、597(三)、623(四)

おすすめ度:★★★★★




フランスの国民的作家とも言われるヴィクトル・ユーゴー、そんな彼の代表作として知られるのが『レ・ミゼラブル』だ。
精彩に富む個性的な人物が複数登場し、彼らの織り成す人間模様は歴史とも絡み合い・・・最後まで目を離せない波瀾に満ちたストーリー展開に読者は釘付けとなるだろう。
感動的で印象的な場面も多く、非常に読み応えのある傑作なので、一度は全訳を読んでいただきたい作品である。

すでに確固たる名声を築いている『レ・ミゼラブル』の素晴らしさを伝えるのに、一介の読者に過ぎぬ私があまり多くを語る必要はないだろう。
私が何を言うにしても、それが賛辞であることに変わりはないのだから。
作品全体を貫いている人間性の称揚こそが多くの読者に受け入れられるゆえんなのかもしれないと感じたと、こう述べるだけで十分ではなかろうか。
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『レ・ミゼラブル』は非常に有名な作品であるうえに、筋書きがドラマティックだからでもあろうが、ハリウッドや母国フランスで何度か映画化されている。
右の二点はその中でも比較的よく知られているものだと思う。
ジョン・マルコヴィッチがジャベールを演じた右側のものは、フランス映画なのでレンタルなどで見つけるのが難しいかもしれないが、約三時間に及ぶ作品だけに見応えがある。
『レ・ミゼラブル』のように原作が名場面の多い長編作品だと、それを二時間程度の映画にしたのでは物足りなさを感じてしまうことが多いが、原作に忠実に作られた上述の映画はとても出来がいいように思われた。

『レ・ミゼラブル』に脱線が多いことはよく指摘されているし、しばしば登場人物の言動にも難癖が付けられることがある。
それにもかかわらず、いまだに数多くの読者に感動を与え続けているのが『レ・ミゼラブル』であり、まさに世界的名作という名に値する。
ユーゴーの描いた世界文学屈指の人間ドラマを、ぜひ一人でも多くの方にお読みいただきたいと思う。
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『エルナニ』 ユーゴー(岩波文庫)

エルナニ (岩波文庫)エルナニ (岩波文庫)
(2009/07/16)
ユゴー

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書名:エルナニ
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:稲垣 直樹
出版社:岩波書店
ページ数:308

おすすめ度:★★★★




ユーゴーの戯曲が全集以外で出版されることはあまり多くないのが現状だが、数少ない一つがこの『エルナニ』だ。
二十代後半の頃の作と、ユーゴーがまだ若いときのものだが、『エルナニ』は彼の名を世間に知らしめた出世作でもある。
制作年代こそかけ離れているが、作品から読み取ることのできる思想にユーゴーの代表作である『レ・ミゼラブル』へと通ずるところの垣間見られる作品なので、ユーゴーに関心のある方には特にお勧めだ。

『エルナニ』の舞台はスペインである。
山賊となり、過去になされた非道に対して復讐心を燃やすエルナニだが、ついに敵を追い詰める日がやってくる・・・。
血と短剣に彩られたかのような主人公だが、そんなエルナニには殺伐たるスペインの野がよく似合う。
主人公の剛毅さは、それだけで作品を面白くするものだが、『エルナニ』もその例外ではない。
男気あふれるエルナニに惹かれる読者も多いことだろう。

『エルナニ』は、古典派とロマン派の大論争を引き起こした、いわゆる「エルナニ合戦」で知られる問題作でもある。
しかし、今日の読者が本作を読んでも、我々にはそもそも古典的劇作がいかなるものかという下地ができていないので、解説を読んで納得こそすれ、読書中にはその革新性に気付かない読者が大半だと思う。
そういう意味では、戯曲に関する一教養として読むという側面がおのずと強調されやすい作品かもしれないが、ロマン派ののろしとでも言うべき『エルナニ』には教養的な価値も十分あるはずだ。

ストーリーそのものを楽しむこともできるし、劇作上の作法の差異を考察することもできる。
当然ながら、ユーゴーに対する理解を深めることもできる。
戯曲ということでたいへん読みやすい作品でもあるので、多様な読み方の可能な『エルナニ』が、この文庫化を機に多くの方に読まれることを期待したい。

『九十三年』 ユーゴー(潮文学ライブラリー)

九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)
(2005/03)
ヴィクトル ユゴー

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九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)
(2005/03)
ヴィクトル ユゴー

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書名:九十三年
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:辻 昶
出版社:潮出版社
ページ数:294(上)、381(下)

おすすめ度:★★★☆☆




ユーゴー晩年の長編作品である『九十三年』。
「九十三年」とは1793年を意味していて、これはすなわちロベスピエールが台頭してきた時代であり、フランス革命の混乱が頂点に達していた頃の物語である。
レ・ミゼラブル』にも革命を志す人々が描かれているが、『九十三年』は革命と反革命とのせめぎあいがより鮮明に描かれており、革命をテーマにした作品と言ってもいいだろう。

『九十三年』は、フランス革命の最中にフランス西部のヴァンデ地方で起きたヴァンデの反乱を題材にしている。
ヴァンデの反乱そのものはあまり日本では知られていないように思うが、フランス革命前後のおおよその事情を知っていれば、作品中でなされるユーゴーの説明の意味も把握できるだろうし、共和国派と王党派との間の熾烈な戦いの由来はほぼ察することができよう。
反乱軍と革命政府軍の激しい戦闘、権力を巡って揺れ動くパリ、司令官の心に生じた良心と義務の葛藤・・・大作家としての地位を不動のものとしていたユーゴーの手になる『九十三年』の読みどころは豊富である。
革命もの、戦争ものの好きな読者は必ずや楽しめるはずだ。

革命期を描いた文学作品は少なくないが、たいていの作品はごく一部の登場人物にスポットを当てて、革命はその背景として存在することが多いように思う。
歴史書ではなく文学作品であるから、そうなるのも当然といえば当然のことだろう。
文学作品として書かれた『九十三年』にしても、そういった私的なエピソードから成っている部分が目立つが、私には革命が凄惨をきわめた「九十三年」自体を描き出そうとしたユーゴーの意図が透けて見えるような気がした。
自由と博愛をうたった革命の負の側面を、「九十三年」が流した多くの血を・・・。

生と死が紙一重の戦争状態を多く描いた作品だけに、『九十三年』は決して明るい話ではない。
ユーゴーならではの、読者の心を揺さぶる重みのあるストーリーを求めている方にお勧めしたいと思う。

『ノートル=ダム・ド・パリ』 ユーゴー(ヴィクトル・ユゴー文学館)

ノートル=ダム・ド・パリ (ヴィクトル・ユゴー文学館)ノートル=ダム・ド・パリ (ヴィクトル・ユゴー文学館)
(2000/11)
ヴィクトル ユゴー

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書名:ノートル=ダム・ド・パリ
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:辻 昶、松下 和則
出版社:潮出版社
ページ数:507

おすすめ度:★★★☆☆




ユーゴー初期の長編として知られるのが本作『ノートル=ダム・ド・パリ』だ。
かつては『ノートルダムのせむし男』という邦訳も出されていたようだが、さすがに最近では「せむし」という表現が避けられるようになっていて、『ノートル=ダム・ド・パリ』という原題が一般的になっている。
岩波文庫版が絶版になって久しかったりと、『レ・ミゼラブル』を除けばユーゴーの長編作品は入手しにくいのが現状だが、潮出版社の「ヴィクトル・ユゴー文学館」はいまだに新品での入手が可能なので、ユーゴーに関心のある方にはこのシリーズがお勧めだ。

『ノートル=ダム・ド・パリ』は、その表題のとおり、パリのノートル=ダム大聖堂を舞台にしている。
それにもかかわらず、物語を進行させていく主な要因は人間世界の愛憎である。
主要登場人物の多くが誰かを強く愛していて、彼らはその愛のために・・・。
レ・ミゼラブル』や『九十三年』にもしばしば類似の描写が見られるが、暴徒と化した群集の勢いには読者を圧倒させるものがある。
激しい情念のほとばしる人間ドラマに迫真の臨場感をもたらすあたり、さすがユーゴーと、その手腕に感心してしまわずにはいられない。
ノートルダムの鐘 [DVD]ノートルダムの鐘 [DVD]
(2004/09/03)
アラン・メンケン

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『ノートル=ダム・ド・パリ』は、けっこう前の話になるが『ノートルダムの鐘』というディズニー映画の原作にもなっていて、現在ではおそらくこちらの映画のほうが有名だろう。
原作を知っている人からすれば、あの暗澹たるストーリーをディズニーがどうアニメ化するのかと少々不思議に思うところだが、やはり原作に大きく手を加えたハッピーなラブロマンスに仕上がっている。
幾人かの登場人物とノートルダムという舞台を提供したに過ぎないのではないかと思えてしまうほど、『ノートル=ダム・ド・パリ』はその原形を留めていないので、それぞれをまったくの別物とみなして鑑賞するほうがいいように思われる。

『ノートル=ダム・ド・パリ』にはいかにもユーゴーの筆らしい脱線部分もあるし、ストーリー自体も明るいものではない。
それでも読み終えた読者の心には確実に何かが刻み込まれる。
その「何か」を求めている方は、一度『ノートル=ダム・ド・パリ』を手にしてみてはいかがだろうか。

『死刑囚最後の日』 ユーゴー(岩波文庫)

死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8)死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8)
(1982/06/16)
ヴィクトル・ユーゴー

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書名:死刑囚最後の日
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:豊島 与志雄
出版社:岩波書店
ページ数:169

おすすめ度:★★★★




ユーゴーが若い頃に書き上げた中編作品がこの『死刑囚最後の日』だ。
人が人の命を合法的に奪うという死刑制度の撤廃を求める立場から書かれた本なので、作品に盛り込まれた思想自体は容易に読み取ることができる。
死刑囚の目線で書かれた独白というスタイルが本書をたいへん読みやすくしており、ページ数も手頃なので、多くの人が死刑制度について考えるいい機縁となることだろう。

『死刑囚最後の日』には、主人公である死刑囚が刑の執行を一日一日と数え、迫りくる死に怯えながらも奇跡的な救いの訪れを期待せずにはいられないという哀れな様が克明に描かれている。
視点が一方的であるという事実は否めないが、そんな彼に同情しないでいることもまた不可能であろう。
同情に値する死刑囚を引き合いに出して死刑制度の是非を問うのはやや不適切な気がしないでもないが、あくまで文学作品として読んだ場合、この本の心理描写が優れていて、読者の興味を強く引き付けるものであることは間違いないように思う。

既述のとおり、『死刑囚最後の日』は死刑反対の立場で書かれたものなので、いくらか思想的なプロパガンダとしての性格も備えているため、読者が死刑制度に賛成か反対かによって、本書の評価が分かれたとしても何ら不思議ではない。
私自身が死刑制度をどう考えているかはともかくとしても、そもそも私は自らの主張を広めるための手段として芸術を用いるというやり方にあまりいい気がしないほうだ。
とはいっても、ユーゴーが『死刑囚最後の日』を執筆した頃のフランスは、同じ法治国家といえども、死刑判決の下される頻度や合理性、犯罪捜査の緻密さなどにおいて、今日とはまったく状況が異っていたのであろうという点は考慮すべきかもしれない。
ユーゴーの正義感がそのような人命の軽視を許すことができなかったということなのだろうか。

『死刑囚最後の日』は、タイトルから読者が想像し、期待するところの内容を備えた本である。
テーマがテーマだけに大いに議論の余地のある作品ではあるが、その余地をも楽しむことのできる作品として、強くお勧めしたい一冊だ。

『ライン河幻想紀行』 ユーゴー(岩波文庫)

ライン河幻想紀行 (岩波文庫 赤 531-9)ライン河幻想紀行 (岩波文庫 赤 531-9)
(1985/03/18)
ヴィクトル・ユーゴー

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書名:ライン河幻想紀行
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:榊原 晃三
出版社:岩波書店
ページ数:288

おすすめ度:★★★☆☆




フランスを代表する文豪ユーゴーが、ライン河に沿って旅をした際の印象や、ライン沿いの廃墟に関して知りえたエピソードなどを綴った作品がこの『ライン河幻想紀行』である。
原書のタイトルは『LE RHIN』らしいので、「幻想紀行」という邦題は本書独自のもののように思われるが、大自然に包まれながら太古のロマンに浸ったユーゴーによる詩的な描写に加え、幻想的なエピソードを数多く収録していることから、この邦題もどこかしっくりときている感じがする。
また、本書には当時のラインの様子を伝えるために数々の挿絵があり、中にはユーゴー自身のスケッチも収められているので、ユーゴーのファンであれば必ずや楽しめるはずの一冊だ。

『ライン河幻想紀行』は抄訳とのことであるが、オリジナルが数百ページにも及ぶ大著であるらしいため、本来であれば片手落ちに思えて仕方のない抄訳を嫌う私といえども、いくらかこの抄訳での出版を歓迎したい気持ちに傾いている。
すべての話がライン河とその周辺地域にまつわるものであるという共通点はあっても、全体が明確な一つのストーリーを成している作品ではないから、そこから抜粋を行ってもほとんど違和感のない仕上がりとなったのだろうか。
全般にやや歴史的な観点が強いという印象を受けたので、ある程度のドイツ史を予備知識として持っているほうがより楽しめるかもしれない。
とはいえ、挿絵も豊富で活字も大きめなので、それだけ敷居の低い本であると断言できるのもまた事実だ。

『ライン河幻想紀行』は紀行文であるから、やはり実際に現地を訪れる人が一番楽しく読めるのではなかろうか。
ドイツ行きのパック旅行といえば、メルヘン、ロマンチックなどの街道を巡るものが人気のようだが、その行程にライン河下りを加えているものも意外と多い。
ライン河を訪れる前後に本書を読めば、きっと旅先でのライン河の見え方、もしくはライン河の思い出も、一味変わった奥行きのあるものになるのではないかと思う。

『ビュグ=ジャルガルの闘い』 ユーゴー(潮出版社)

ビュグ=ジャルガルの闘い (1982年)ビュグ=ジャルガルの闘い (1982年)

書名:ビュグ=ジャルガルの闘い
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者: 辻 昶、野内 良三
出版社:潮出版社
ページ数:272

おすすめ度:★★★☆☆




ユーゴー初期の長編小説の一つがこの『ビュグ=ジャルガルの闘い』である。
後に大幅に書き直されたという経緯があるとはいえ、処女作とも言えるほどに初期の作品であり、それなりの粗さというか、緻密さに欠けるところがあるにはあるが、ユーゴーらしい作品になっていることは疑いを入れないように思う。

『ビュグ=ジャルガルの闘い』は、戦闘となれば比類なく勇敢でいながら平時には至って物憂げな様子をしているとある大尉が、カリブ海のフランス植民地であったハイチにおける黒人奴隷の反乱を思い出話として語るという、回想風のスタイルだ。
黒人奴隷の身でありながら、高慢とも言えるほどの毅然とした態度を崩さないピエロに対して、大尉は生意気だという反感だけではなく尊敬の念すら抱き始めるが、奴隷たちを虐げ続けていた植民地には不穏な空気が漂い始めていて・・・。

作品の中頃でストーリーが少し停滞しているように感じられる箇所があるとはいえ、『ビュグ=ジャルガルの闘い』はあくまでスリリングかつスピーディーな展開が基調となっており、一度読み始めれば読者を引き付けて離さないのではないかと思われる。
レ・ミゼラブル』や『エルナニ』を思い出させるような、人間としての誠実さも描かれていて、初期作品にもそういったユーゴーの特徴が表れていることを知れば、読者はそれこそがユーゴーの生涯のテーマであったということを実感できるのではなかろうか。

ユーゴーの小説のあら捜しをしようとすれば欠点は見出せるかもしれないが、何はともあれ、ストーリー性に富んでいて面白いものであることは間違いない。
日本に意外と研究者が乏しいのか、出版界の事情なのかは知らないが、多くの小説作品を残したユーゴーはもっと翻訳紹介されてしかるべき作家の一人であろう。
非常にレアな本となってしまっているのが残念ではあるが、可能であれば『ビュグ=ジャルガルの闘い』を手にしていただければと思う。
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