『静かなドン』 ショーロホフ(岩波文庫)

静かなドン (1) (岩波文庫)静かなドン (1) (岩波文庫)
(1959/01/25)
ショーロホフ

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静かなドン (2) (岩波文庫)静かなドン (2) (岩波文庫)
(1988/10)
ショーロホフ

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静かなドン (3) (岩波文庫)静かなドン (3) (岩波文庫)
(1959/03/25)
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静かなドン (4) (岩波文庫)静かなドン (4) (岩波文庫)
(1959/04/25)
ショーロホフ

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静かなドン (5) (岩波文庫)静かなドン (5) (岩波文庫)
(1959/05/25)
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静かなドン (6) (岩波文庫)静かなドン (6) (岩波文庫)
(1959/06/25)
ショーロホフ

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静かなドン (7) (岩波文庫)静かなドン (7) (岩波文庫)
(1959/07/05)
ショーロホフ

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静かなドン (8) (岩波文庫)静かなドン (8) (岩波文庫)
(1959/07/25)
ショーロホフ

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書名:静かなドン
著者:ミハイル・ショーロホフ
訳者:横田 瑞穂
出版社:岩波書店
ページ数:337(一)、361(二)、301(三)、333(四)、338(五)、334(六)、339(七)、457(八)

おすすめ度:★★★★★




ノーベル賞作家であるショーロホフの代表作がこの『静かなドン』だ。
ロシア革命前後のコサック社会を描いた大長編で、ロシア人同士で内戦を繰り広げる凄惨な模様と、それに付随して揺れ動くドン地方の人々の幸薄き生活、それらが読者の心に訴えかける力の強靭さは他の追随を許さないと言っても過言ではない。
御用作家をイメージしがちなソビエト文学ということで、ショーロホフはやや敬遠されがちな作家かもしれないが、この『静かなドン』は、発表直後に共産党に偏らない中立的な立場がソビエト国内で問題視されたほどの作品なので、赤みがかった作風によって損なわれていない、ある意味で非ソビエト的な傑作と考えていいように思う。
ロシア文学のみならず、世界文学屈指の傑作と断言できるので、ぜひ読んでみていただきたい。

『静かなドン』は、ドン地方に暮らす一家が相次ぐ戦闘に巻き込まれていく運命を中心に描いている。
親子の絆、コサックとしての誇り、すべてをなげうってでも貫き通したい愛情と、相手を死に至らしめたいと思うほどの憎悪・・・。
ストーリー性の強い読み応えのある人間ドラマは、最後まで読者を釘付けにしてやまないことだろう。
そして『静かなドン』の読者はみな、長らく戦争を経験していない国家に暮らせることをとても幸せなことであると再認識させられるのではなかろうか。

戦争によって劇的に運命が変化する人々を描いたロシア文学の一大長編作品ということで、『静かなドン』はトルストイの『戦争と平和』と比較されることが多いようだ。
一方はナポレオン戦争、他方はロシア革命期という、およそ一世紀の期間を経て起きた事件を中心に据えた作品であるが、どちらもあまりにも素晴らしい大河小説であり、優劣付けがたいというのが私の印象だ。
とはいえ、『静かなドン』のほうが登場人物がより庶民的にもかかわらず、粗野で暴力的なコサック気質が如実に打ち出されているため、『戦争と平和』の貴族的な人々の方が、今日の日本人からすると受け入れやすいかもしれない。

私にはなぜ『静かなドン』ほどの有名作品が現在入手困難なのか、不思議で仕方がない。
いかに再版を重ねようとも、それどころか数社から新訳が出版されても、私はそれに驚くどころか当然のこととして喜びたい気持ちでいる。
プルーストの『失われた時を求めて』に匹敵する20世紀の最高傑作の一つであることは疑いようもないので、ぜひ大河小説ならではの大いなる感動を心に刻み付けてほしいと思う。
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『人間の運命』 ショーロホフ(角川文庫)

人間の運命 (角川文庫)人間の運命 (角川文庫)
(2008/11/22)
ショーロホフ

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書名:人間の運命
著者:ミハイル・ショーロホフ
訳者:漆原 隆子、米川 正夫
出版社:角川グループパブリッシング
ページ数:188

おすすめ度:★★★★




静かなドン』で知られるノーベル賞作家ショーロホフの五作品を収めた短編集が、この『人間の運命』である。
戦争によって悲惨な状況に追い込まれた人々を描いた作品が主だが、そんな過酷な境遇の中からでも沸々と湧き上がる温かい人間性、また、ドン地方に生まれ育ったショーロホフの、ドンへの愛着が感じられるような作品群を成している。
ショーロホフの文体はなじみやすく、まして本書は短編集ということでとても読みやすいので、ぜひショーロホフを読み始めるきっかけにしていただければと思う。

表題作『人間の運命』は、渡し場で「私」が出会った男が、その不幸と波瀾に満ちた半生を語るというものである。
絶望的なと言って差支えがないほど残酷な運命に見舞われた男が、どうにかして生きていく希望の光を見出すという、悲しくも美しい作品だ。
ショーロホフの人間に対する信頼や期待の念が感じられるようにも思う。

『人間の運命』以外の四編は、いずれも『静かなドン』の萌芽を含んでいると言われている、処女短編集『ドン物語』から採られている。
戦争に翻弄される人々が見せる非情さと、雲間から差し込む光かのような思いやりが示すコントラストは、双方を強調しながらも作品世界をぎゅっと引き締めており、緊張感のみなぎった佳作に仕上げるのにたいへん効果的のように感じられた。

ショーロホフの作品は、非常に優れているにもかかわらずあまり文庫などの手頃な出版物がないのが現状だ。
そんな中で角川文庫入りしたこの『人間の運命』は、貴重な一冊と言えるように思う。
本書をきっかけにしてショーロホフに強い関心を抱いたとしても、その後読み進めにくい作家なのが残念なところだが、独特な感動を与えてくれる作家ショーロホフ、ロシア文学に関心のある方であればぜひ親しんでいただきたいお勧めの作家の一人だ。
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