『トム・ジョウンズ』 フィールディング(岩波文庫)

トム・ジョウンズ〈1〉 (岩波文庫)トム・ジョウンズ〈1〉 (岩波文庫)
(1975/06/16)
フィールディング

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トム・ジョウンズ〈2〉 (岩波文庫)トム・ジョウンズ〈2〉 (岩波文庫)
(1951/12)
フィールディング

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トム・ジョウンズ〈3〉 (岩波文庫)トム・ジョウンズ〈3〉 (岩波文庫)
(1975/08/18)
フィールディング

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トム・ジョウンズ〈4〉 (岩波文庫)トム・ジョウンズ〈4〉 (岩波文庫)
(1975/09/16)
フィールディング

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書名:トム・ジョウンズ
著者:ヘンリー・フィールディング
訳者:朱牟田 夏雄
出版社:岩波書店
ページ数:300(一)、320(二)、329(三)、294(四)

おすすめ度:★★★★★




18世紀のイギリスを代表する作家の一人で、「イギリス小説の父」とも呼ばれるフィールディングの代表作がこの『トム・ジョウンズ』である。
同じイギリス人であるモームの選んだ『世界の十大小説』に入ってもいるほどの作品だが、残念ながら今日の日本ではあまり読まれていないのではなかろうか。
イギリス版『ドン・キホーテ』とでも言うべき愉快な物語である『トム・ジョウンズ』は読みやすいことこの上なく、幅広い読者層に受け入れられるように思われる名作の一つなので、少々長いがぜひ読んでみていただきたい作品の一つだ。

『トム・ジョウンズ』は、実直で正義感の強い青年であるトム・ジョウンズの珍道中を描いた作品である。
親族との亀裂があったり、かなわぬ恋に身をやつしたり、痴話騒ぎに巻き込まれたりと、波瀾に満ちたストーリー展開が読者を飽きさせることはないはずだ。
読者は好感の持てる主人公トムと共に、登場人物たちが絶妙に絡み合う大団円に向けて突き進んでいくことができるだろう。

イギリス小説といえば、スウィフトやディケンズを筆頭に、ユーモア精神に富んだ傑作を物した作家たちの宝庫であるが、フィールディングもその系譜中の一人である。
それどころか、最も重要な作家の一人でもあるだろう。
そういう意味では、純粋に楽しい読み物を求めている読者も、イギリス文学史に関心のある読者も、いずれをも満足させうる作家がフィールディングであるように思う。

物語性が強く面白い上に、朱牟田氏の翻訳も非常に読みやすいので、繰り返しになるが『トム・ジョウンズ』はぜひ読んでみていただきたい作品だ。
『トム・ジョウンズ』を気に入られた読者には、数年前に同じくフィールディングの『ジョウゼフ・アンドルーズ』が岩波文庫から出されたので、そちらも非常にお勧めしたい。
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『ジョウゼフ・アンドルーズ』 フィールディング(岩波文庫)

ジョウゼフ・アンドルーズ〈上〉 (岩波文庫)ジョウゼフ・アンドルーズ〈上〉 (岩波文庫)
(2009/04/16)
フィールディング

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ジョウゼフ・アンドルーズ〈下〉 (岩波文庫)ジョウゼフ・アンドルーズ〈下〉 (岩波文庫)
(2009/05/15)
ヘンリー フィールディング

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書名:ジョウゼフ・アンドルーズ
著者:ヘンリー・フィールディング
訳者:朱牟田 夏雄
出版社:岩波書店
ページ数:336(上)、353(下)

おすすめ度:★★★★




フィールディングの代表作として知られる『ジョウゼフ・アンドルーズ』。
ストーリーや作風は『トム・ジョウンズ』に似ているし、どちらかといえば『トム・ジョウンズ』の方が出来がいいように思われるが、全四冊からなる『トム・ジョウンズ』が少々長すぎるように思われる方には『ジョウゼフ・アンドルーズ』から読み始めてみるのもいいだろう。
喜劇的精神に満ちた『ジョウゼフ・アンドルーズ』、内容にややこしいところもなく、読みやすい文章でもあるので、気軽に手にとっていただける作品としてお勧めだ。

主人公の若者ジョウゼフ・アンドルーズと、その友人であり師でもあるアダムズ神父が、面白おかしい珍道中を繰り広げる。
謹厳なはずの神父が滑稽な事件に巻き込まれるというギャップはたまらなく愉快で、必ずや読者を楽しませてくれるだろう。
豊富な好人物に彩られた『ジョウゼフ・アンドルーズ』、活気に満ちた名作と呼べるのではなかろうか。

以前は『ジョウゼフ・アンドルーズ』は文学全集に収められていただけだったが、うれしいことについ最近岩波文庫に収められた。
本書を読み通せば、フィールディングはもちろん、訳者の朱牟田氏の魅力も感じていただけるのではないかと思う。
フィールディングを気に入られた読者には、こちらも朱牟田氏の翻訳によるほぼ同時代の作家、スターンの傑作『トリストラム・シャンディ』をお勧めしたい。
ユーモアあふれる作風が、イギリス文学をより身近に感じさせてくれること請け合いである。

作品の構成自体は非常に緩いが、それだけ登場人物たちが自由で動的なのかもしれない。
フィールディングの創り上げた人間味に富んだ物語はとても面白く読めるものと思うので、ぜひ気軽に手にしていただきたい作品だ。

『シャミラ』 フィールディング(朝日出版社)

シャミラシャミラ

書名:シャミラ
著者:ヘンリー・フィールディング
訳者:能口 盾彦
出版社:朝日出版社
ページ数:99

おすすめ度:★★★☆☆




トム・ジョウンズ』で知られるフィールディングの初期作品がこの『シャミラ』だ。
一世を風靡したリチャードソンの『パミラ』をパロディ化した書簡体の短編小説となっていることから、『パミラ』の内容を知っているほうがより一層楽しめるではあろうが、本書の場合は訳注が細かく補ってくれるので、必ずしも『パミラ』を読んでおく必要はないと言えるように思う。

若く美しい使用人であるシャミラは、ご主人であるブービー氏から常々言い寄られている。
彼女の思わせぶりな素振りに自らの欲望を焚き付けられて見境のなくなったブービー氏は、強姦まがいのことまでやってのけるほどであり・・・。
シャミラによる財産狙いの打算的な結婚に至るまでの裏事情が見事に描き出されていて、全般にストーリー性は強めと言えるだろう。
シャミラの愛人が牧師であるというのも、本書の反社会的な性格を決定づける設定の一つと思われる。

確固たる原作の存在するパロディ作品ということもあり、『シャミラ』のあらすじにフィールディングの独創性はあまり期待できないだろうが、その反面、フィールディングのユーモアセンスが本書の見どころの最たるものとなっている。
同じイギリス文学でも、ビクトリア時代のユーモアと違って、性的な事柄への言及が多く見られるのも特徴と言えるかもしれない。

いろいろな事情が予想されはするが、フィールディングは生前、本書『シャミラ』が自作であることを認めなかったらしい。
確かに自作であることを自負できるような名作とは言い難い作品ではあるが、『パミラ』に対する痛烈な皮肉として興味深いものであることは間違いない。
リチャードソンの愛読者に向いているとは思わないが、フィールディングに関心のある方にはお勧めできる作品だ。
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