『神曲 地獄篇・煉獄篇・天国篇』 ダンテ(河出文庫)

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)
(2008/11/04)
ダンテ

商品詳細を見る
神曲 煉獄篇 (河出文庫 タ 2-2)神曲 煉獄篇 (河出文庫 タ 2-2)
(2009/01/26)
ダンテ

商品詳細を見る

神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)
(2009/04/03)
ダンテ

商品詳細を見る

書名:神曲 地獄篇・煉獄篇・天国篇
著者:ダンテ・アリギエーリ
訳者:平川 祐弘
出版社:河出書房新社
ページ数:509(地獄篇)、509(煉獄篇)、525(天国篇)

おすすめ度:★★★★★




数ある世界文学の中でも、最高峰に存するものとして高い評価を受け続けているのがダンテの『神曲』である。
後世への影響については言うまでもないし、読めば納得していただけることと思うが、今後も世界文学における『神曲』の地位が揺らぐことはないと断言することさえ可能な、深甚な魅力をたたえた作品だ。
『神曲』というタイトルの仰々しさや予想される宗教臭さ、まして長編叙事詩であるということもあり、ひょっとすると敬遠されがちなのかもしれないが、名高い古典的作品にはやはり歴史によって証明された読み応えが備わっているものである。
教養のためと割り切るのもいいだろうし、とにかくぜひ読んでみていただきたい。

『神曲』は、ダンテがローマ最高の詩人と評されるウェルギリウスに導かれて地獄と煉獄を、さらに今は亡き乙女ベアトリーチェに伴われて天国を巡る物語である。
ダンテはそこで数々の偉人や同時代人たちに出会い、彼らと言葉を交わしもする。
特に「地獄篇」には鮮烈な印象を与えるエピソードが満ちていて、三篇の中ではキリスト教色も薄いほうなので、多くの読者は「地獄篇」を最も出来がいいと感じられるのではなかろうか。
地獄、煉獄、天国、いずれも概ね当時の正統神学に則って構成されているとはいえ、ここまで体系的に描かれた死後の世界像は、いかに賞賛してもし過ぎることはないというものだ。
ボルヘスの「神曲」講義 (ボルヘス・コレクション)ボルヘスの「神曲」講義 (ボルヘス・コレクション)
(2001/05)
ホルヘ・ルイス ボルヘス

商品詳細を見る

『神曲』の読者には、右の『ボルヘスの「神曲」講義』をお勧めしたい。
『神曲』を世界文学の最高傑作と宣言して憚ることのないボルヘスは、ダンテを、そして『神曲』を愛してやまなかった文人の一人だ。
そんな彼による『神曲』に関する小論の数々は、『神曲』の読者に必ずや多大な関心を喚起し、さらに新たな視点を提供してくれることだろう。

あまりに有名な傑作であるだけに、『神曲』はこれまでいくつか翻訳がなされてきていたが、おそらくはこの河出文庫版が最も読みやすいように思われるし、また、いくつも挿入されているギュスターヴ・ドレの挿絵も非常に魅力的である。
まずはおそらく一番人気である「地獄篇」から、ぜひ読み始めてみていただきたいと思う。
スポンサーサイト

『新生』 ダンテ(河出書房新社)

新生新生
(2012/03/17)
ダンテ

商品詳細を見る

書名:新生
著者:ダンテ・アリギエーリ
訳者:平川 祐弘
出版社:河出書房新社
ページ数:229

おすすめ度:★★★★




神曲』の作者として知られるダンテ・アリギエーリの若い頃の作品がこの『新生』である。
30を超えるソネットやカンツォーネが収録されている一種の作品集で、それらが作られるまでの経緯をも自ら述べているという少々珍しいスタイルの作品であり、ある意味では自作の詩に対する解説的な作品とも呼べるかもしれないが、自叙伝風の作品として読むことも十分可能であるように思う。
神曲』の読者であれば誰もがベアトリーチェと呼ばれる女性が一体どのような人物であったのか気にかかるところだろうが、それを説明してくれているのがこの『新生』であるため、『神曲』理解、ひいてはダンテを理解する上では欠かせない作品と言えるはずだ。

『新生』は、まだ若い、と言うより、まだ幼いベアトリーチェにダンテが出会い、一目惚れするところに始まる。
ところが彼が美徳の鑑として崇めていたベアトリーチェは、若くして天に召されることとなる。
「愛」の神にとらわれてしまったダンテは、ことあるごとに思いの丈を詩の形に留めていくのだが、それを時の流れに即して一冊の本に集め、ダンテ自らが簡単な説明を施したのがこの『新生』だ。
特定の数字へのこだわりも随所に垣間見られ、数的構成の光る『神曲』を読まれた読者であれば、そこにダンテらしさを見出すことができるのではなかろうか。

本書の表紙には、『新生』の英訳者の一人でもあるもう一人の「ダンテ」、すなわちダンテ・ゲイブリエル・ロセッティによる『ベアタ・ベアトリクス』という、『新生』の表紙を飾る上でこれ以上ない見事な選択がなされている。
本文中にベアトリーチェが登場するたびにロセッティの絵を思い浮かべながら読んでみるのも面白い読み方なのかもしれない。

大いに興味深い作品である『新生』であるが、やはり『神曲』あっての作品という性格が強い気がする。
制作年代から言うと『新生』のほうが先なので、後に『神曲』を読むという前提ならば先に『新生』を読んでみるのも悪くないように思うが、『新生』だけを読むとすると作品としての魅力はかなり削がれるのではなかろうか。
逆の言い方をすれば、『神曲』にさらなる面白さを与える著作がこの『新生』であるということなのだろう。
神曲』に、またダンテに興味のある方は、ぜひ本書を手にしてみていただきたいと思う。
カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク