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『失われた時を求めて』 マルセル・プルースト(集英社文庫)



書名:失われた時を求めて
著者:マルセル・プルースト
訳者:鈴木 道彦
出版社:集英社
ページ数:495(一)、570(二)、624(三)、608(四)、736(五)、712(六)、616(七)、696(八)、480(九)、472(十)、648(十一)、568(十二)、488(十三)

おすすめ度:★★★★★




プルーストが生涯を懸けて仕上げた超大作がこの『失われた時を求めて』だ。
その質からも長大さからも20世紀を代表する長編作品と呼ばれていて、確かにプルーストの巧緻な文体には読者を圧倒する何かがある。
スピーディーなストーリー展開が読者を釘付けにするような作品ではないうえにこの長さなので、一般受けはまるで望めないが、静かなゆったりとした時間を読書に費やしたいという真の本好きの方には強くお勧めしたい。

『失われた時を求めて』の語り手は、内向的で体の弱い青年である。
そんな彼が、自らの家族をはじめ、貴族階級やユダヤ人家族との交流、そして恋人とのやり取りを経験しながら、「時」を見出すというあの有名な結末部分へと向かっていく・・・。
『失われた時を求めて』のテーマは多岐にわたり、精緻な心理分析のなされた恋愛小説のようにも読めるし、上流階級の腐敗や成り上がり者を揶揄するような部分も多い。
かと思いきや、ユダヤ問題や芸術論、さらには同性愛を取り上げているページも少なくない。
あまりにも長いために結局確固たるつかみどころがない作品になっているような気がしないでもないが、これだけの筆紙を尽くして一時代における一群の人々を多面的に描写すれば、自ずとそのような印象の作品になることだろう。

現在刊行中の岩波文庫をはじめ、『失われた時を求めて』は複数の全訳が出されているが、ここまで長い作品に複数の翻訳が存在するということ自体、『失われた時を求めて』に対する高い評価を裏付けるものと言えるだろう。
すべての翻訳を読み比べてみたわけではないが、プルースト研究の第一人者として知られる鈴木道彦氏の翻訳は、何かの翻訳賞のようなものを受賞したというお墨付きの訳業だったと記憶している。
長い作品だけにどの翻訳で読み始めるべきか迷う方も多いことと思うが、私は文庫化された鈴木氏の翻訳が最も手頃かつ信頼の置けるものであると思う。

静かなドン』や『ジャン・クリストフ』などもそうだが、長大な作品ならではの読了時の感動は何物にも代えがたいものがある。
一人でも多くの読者が『失われた時を求めて』を読み通し、語り手が「時」を見出すまでの道筋を存分に楽しんでいただければと思う。
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