『対訳 ブレイク詩集』 ウィリアム・ブレイク(岩波文庫)

対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉 (岩波文庫)対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉 (岩波文庫)
(2004/06/16)
ウィリアム ブレイク

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書名:対訳 ブレイク詩集―イギリス詩人選〈4〉
著者:ウィリアム・ブレイク
訳者:松島 正一
出版社:岩波書店
ページ数:345

おすすめ度:★★★★




おそらく詩人としてよりは銅版画家として有名なウィリアム・ブレイクだが、彼の代表的な詩作品の多くを対訳の形で収録したのがこの『対訳 ブレイク詩集』だ。
「幻視者」と呼ばれることからもわかるように、特異な思想を抱いていたブレイクの神秘的かつ幻想的な詩風は誰にも真似のできない無二のもので、ロマン派というくくりの中に限らず、世界文学の中でもある意味で飛び抜けた存在である。
文学史の流れに収まりきらない個性の強い作家に関心のある方は、ぜひブレイクを手にしていただきたい。

本書には『無垢と経験の歌』、『セルの書』、『天国と地獄の結婚』、『アルビヨンの娘たちの幻覚』などが収録されている。
いずれもブレイクの性格をよく表すものとして抜粋されているようで、全訳でない部分が残念に思われるところもあるにせよ、詩人ブレイクの相貌を窺うには最適の一冊に仕上がっていると言えるだろう。

右は『無垢と経験の歌』の口絵である。
画家・銅版画家としても比類なき才能を発揮したブレイクは、自らの詩集の彩飾印刷にもこだわりを見せていて、詩作品だけではなく画業においても鑑賞者が掘り下げていく余地を大きく残している。
また、自らの詩集に付するためのものばかりでなく、詩人として敬愛していたダンテの傑作『神曲』の名場面を描いた水彩画も数多く残しており、知れば知るほど面白いのがブレイクという「幻視者」ではなかろうか。

ブレイクの詩は、少なからざる読者から支持を受けているに違いないにもかかわらず、あまり邦訳されていないというのが現状だ。
ブレイクの手になるイラストをそのまま再現した詩集が出されれば、そこそこ売れるように思うのは私だけだろうか。
岩波文庫のイギリス詩人選の一冊に入ったこの『対訳 ブレイク詩集』だが、英詩の対訳ということで、必ずしも万人が楽しめる本ではないかもしれないが、ブレイクのヴィジョンを共有してみたいと思われる方は、ぜひ本書を読んでみていただきたい。
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『ブレイク詩集』 ウィリアム・ブレイク(平凡社ライブラリー)

ブレイク詩集―無心の歌、経験の歌、天国と地獄との結婚 (平凡社ライブラリー)ブレイク詩集―無心の歌、経験の歌、天国と地獄との結婚 (平凡社ライブラリー)

書名:ブレイク詩集
著者:ウィリアム・ブレイク
訳者:土居 光知
出版社:平凡社
ページ数:174

おすすめ度:★★★☆☆




ウィリアム・ブレイクの詩作品のうち、『無心の歌』、『経験の歌』、『天国と地獄との結婚』という初期の代表的な3作を収録したのが本書である。
ブレイクの詩をあまり知らない人が初めて手にするブレイクの詩集としては悪くない内容になっているのではなかろうか。

神秘的な宗教思想で知られるブレイクの詩はしばしば難解なものであるが、『無心の歌』と『経験の歌』は、何しろとっつきやすいのが特徴である。
特に『無心の歌』がテーマとする純真無垢は、容易に読者の心を和ませる力を備えており、誰もが優しい気持ちになって読み進めることができるに違いない。

その一方で、『天国と地獄との結婚』は詩作品としての形式においてもその思想内容においても、ブレイクならではのオリジナリティが鮮明に打ち出されていて、それだけブレイクらしい作品とも言えるのだが、やはり『無心の歌』や『経験の歌』と比べると少々難しい詩となっている。
とはいえ、『無心の歌』と『経験の歌』だけからブレイクのイメージを形成するとしたら、それはあまりに平板なブレイク像になってしまうことは否めない。
ブレイクの真骨頂はその神秘性にあると考えている読者も少なくないことだし、ブレイクを語る上で『天国と地獄との結婚』は欠かせない作品の一つと言えるだろう。

本書に苦言を呈するとすれば、2013年に岩波文庫から出された『ブレイク全集』と内容が完全に重複している点が挙げられる。
訳文もそちらの方が読みやすいという印象を受けたし、岩波文庫版には『無心の歌』、『経験の歌』、『天国と地獄との結婚』以外の詩も訳出されているときている。
ブレイクの詩を読みたいという方には本書よりも岩波文庫版『ブレイク詩集』をお勧めしたいと思う。

『ブレイク詩集』 ウィリアム・ブレイク(岩波文庫)

ブレイク詩集 (岩波文庫)ブレイク詩集 (岩波文庫)

書名:ブレイク詩集
著者:ウィリアム・ブレイク
訳者:寿岳 文章
出版社:岩波書店
ページ数:448

おすすめ度:★★★★




ブレイクの初期の詩作品を中心に訳出したのが本書『ブレイク詩集』である。
『無心の歌』、『有心の歌』、『セルの書』、『天国と地獄の結婚』、『永遠の福音』、『小品詩集』、『ユリゼンの書』などが収録されており、ブレイクの詩の翻訳としては入手の容易さやその内容の充実度から見て現在最もお勧めできる一冊だ。

本書を一般的な詩の翻訳と分け隔てている最大の特徴は、巻末に「向日庵私版」というブレイクの出版した『無心の歌』と『有心の歌』を再現したものが、対訳という形式で掲載されていることだ。
昭和初期に成された訳文がやや難解である点、また、色合いやサイズの都合で英文の判読が困難なページもあるという点が欠点ではあるが、詩人でもあり画家でもあるブレイクの醸し出す各ページの雰囲気は十分読者に伝わってくることだろう。
欲を言えば、原本を再現したページがすべてカラーであればなお美しかったに違いないが、画家としてのブレイクの魅力を感じ取りながら彼の詩を読めるのは嬉しい限りだ。

本書の出版年は2013年だが、故人である寿岳文章氏の訳業を集約して出版された本書は、掲載されている訳文の訳出年代にけっこうな開きがあり、後半部分においてしばしば読みにくい箇所にも出会うというのが少々残念なことである。
特に『ユリゼンの書』などは、ブレイクらしさが存分に発揮されている作品であるだけに、ブレイクに興味を持つ読者のためにも読みやすい訳文が望まれるのではなかろうか。

そうはいっても、ブレイクが創り上げたページと見比べながら『無心の歌』と『有心の歌』が読めるという本書が与えてくれるメリットはかなり大きなものなので、多少の欠点はあっても本書がお勧めの本であることに変わりはない。
ブレイクに関心を持つ人はぜひ手にしていただければと思う。
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