『エゴイスト』 ジョージ・メレディス(岩波文庫)

エゴイスト〈上〉 (岩波文庫)エゴイスト〈上〉 (岩波文庫)
(1978/05/16)
G. メレディス

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エゴイスト〈下〉 (岩波文庫)エゴイスト〈下〉 (岩波文庫)
(1978/07/17)
G. メレディス

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書名:エゴイスト
著者:ジョージ・メレディス
訳者:朱牟田 夏雄
出版社:岩波書店
ページ数:496(上)、459(下)

おすすめ度:★★★★




ヴィクトリア朝の典型的な作家の一人と言っても過言ではないジョージ・メレディスの代表作が、この『エゴイスト』だ。
ディケンズほどの滑稽味はないものの、ウィットに富むメレディスの文体は、彼を正統イギリス文学の系譜中の一作家と位置付けるに足るものであるように思う。
それほど有名な作品でないとはいえ、読み物としての面白さを多分に備えた『エゴイスト』には、ついついページを繰らされるに違いない。

地位もあり、容姿も優れている名家の若き主人ウィロビーは、彼の自信を踏みにじられたという苦い過去を抱えている。
そこへ新たな花嫁候補が現れるが、決して従順とは言い難い、強気の彼女との関係はうまくいくのだろうか・・・。
『エゴイスト』の主人公は、肝心の「エゴイスト」の方ではなく、むしろその女性なのではないかとも思えるほど、女性の心情についてのきめ細やかな描写がなされているのが読みどころとなっており、さほど重大な事件の起こらないストーリーをたいへん興味深いものに仕上げてくれている。

『エゴイスト』というタイトルを聞くと、救いがたいほどに自己中心的な人物が主人公であるに違いないと思われる方もいるかもしれないが、私個人の感想としては、主人公はそれほどエゴイストではないように感じられた。
地位や財産の占める割合の大きい階級社会においては、それらに恵まれた人物が少々尊大になるというのは当然起こりうる事柄のように思えるし、ウィロビーにそこまで排他的な言動が目立つわけでもない。
そういう意味では、あまり苛立ちを覚えることなく「エゴイスト」の描写を読み進められるはずだ。

同時代性にも助けられてか、漱石らによって比較的早くに日本に紹介されたメレディスも、今日の出版事情を眺めてみた限りでは、めっきり読まれることがなくなってきているようだ。
正直に言えば、イギリス本国において非常によく読まれているというのも想像しがたい。
しかし、メレディスは漱石が目を付けただけの素質を備えている作家であるし、名訳者朱牟田氏の訳文はこの『エゴイスト』においてもとても読みやすいので、イギリス文学に興味のある方であればぜひ読んでみていただきたい作品だ。
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『喜劇論』 ジョージ・メレディス(岩波文庫)

喜劇論―改訳 (岩波文庫)喜劇論―改訳 (岩波文庫)
(1953/11/25)
ジョージ・メレディス

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書名:喜劇論―改訳
著者:ジョージ・メレディス
訳者:相良 徳三
出版社:岩波書店
ページ数:105

おすすめ度:★★☆☆☆




ウィットに富んだ作風で知られるジョージ・メレディスの翻訳は意外と少ないが、その中の一つがこの『喜劇論』だ。
本書の原題は"Essay on Comedy"であり、その名の通り、論文というよりはエッセイとして気楽に読める内容となっている。
「改訳」とは銘打たれているものの、改訳の施された時代がすでに古いため、いくらか厳めしい訳文ではあるが、読み進めるのに困難を伴うというほどではなく、イギリス文学に頻繁に見出される喜劇の精神とはいかなるものか、この点に興味のある方は、イギリス文学史にその名を留める一作家の手になる本書を読んでみてはいかがだろうか。

決して有名な作品ではないこの『喜劇論』は、メレディスの代表作である『エゴイスト』との関連で手にされる方が多いように思う。
何を隠そう私もその一人なのだが、『エゴイスト』で言及があり、訳者によって『喜劇論』の参照を促されていた部分に関して、十二分にとは言い難いが、メレディス自身が説明をしてくれている。
100ページそこそこの薄い本ということもあってか、系統立てた論旨が進められていくというよりは、やはりエッセイとしての性格が強いように感じられた。

『喜劇論』は現在新品を入手することが非常に困難である。
今日のメレディスの人気度、さらには膨大な文学的遺産から成る岩波文庫の絶版作品のラインナップを考えてみると、今後この『喜劇論』が復刊になる可能性にもあまり期待が持てないような気がする。
中古品であればアマゾンで比較的安価で入手することができるので、新品にこだわらない方はそちらを購入されるといいだろう。
エゴイスト』と同時期に発表されたこの『喜劇論』、『エゴイスト』を補完する作品として、『エゴイスト』の読者にお勧めしたい。
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