『トリストラム・シャンディ』 ロレンス・スターン(岩波文庫)

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)
(1969/08/16)
ロレンス・スターン

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トリストラム・シャンディ 中 (岩波文庫 赤 212-2)トリストラム・シャンディ 中 (岩波文庫 赤 212-2)
(1969/09/16)
ロレンス・スターン

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トリストラム・シャンディ 下 (岩波文庫 赤 212-3)トリストラム・シャンディ 下 (岩波文庫 赤 212-3)
(1969/10/16)
ロレンス・スターン

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書名:トリストラム・シャンディ
著者:ロレンス・スターン
訳者:朱牟田 夏雄
出版社:岩波書店
ページ数:400(上)、378(中)、319(下)

おすすめ度:★★★★★




スターンの傑作長編、『トリストラム・シャンディ』。
いかにもイギリスらしいユーモアに満ちた作風は、フィールディングやディケンズと並び、伝統的なイギリス文学の系譜の一角を成している。
イギリス文学、ひいては世界の文学の中でも、他の作家には到底真似のしようがない独特の作品で、まさに奇作と呼ぶにふさわしいのが、スターンの代表作であるこの『トリストラム・シャンディ』だ。

トリストラムの生涯を描くというのが小説の本筋なのだが、脱線に次ぐ脱線でトリストラムの生涯の方はなかなか進まない。
だがその脱線がなにしろ面白いので、バルザックのような作家のうんちく披露のための脱線とはわけが違い、早く本筋に戻ってくれないものかと期待することもなく、読者は次から次へとページを繰ることができる。
『トリストラム・シャンディ』は岩波文庫から3分冊で発行されているが、おそらくすぐに読み終わってしまうことだろう。
ただ一つ非常に残念なのは、スターンの死により作品が完結していないということだ。
しかし、途中で終わるとわかっていても独特な作風は十二分に楽しめる作品なので、欧米文学に興味のある方には強くお勧めしたい。

今日の日本ではあまり知名度も高くなく、さほど広く読まれている作品であるとも思わないが、『トリストラム・シャンディ』の登場人物に対する言及は、18、19世紀の他の作家の作品にしばしば見受けられるし、ジョイスなど20世紀の作家への影響も指摘されている。
私の読後の率直な感想は、なぜこんなに面白くもあり興味深くもある作品が日本でもっと有名にならないのだろうか、といったものだった。
「イギリス文学」のカテゴリーを追加するにあたり、一番最初に紹介する作品として『トリストラム・シャンディ』を選んだのも、その気持ちがいまだに根強く存在するからだ。

岩波文庫によくあることだが、この『トリストラム・シャンディ』も時折再版されてはいるものの、常に在庫があるわけではないので、在庫があるときにぜひ買われることをお勧めしたい。
他では味わえないオリジナリティあふれる小説に触れることができるはずだ。
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『センチメンタル・ジャーニー』 ロレンス・スターン(岩波文庫)

センチメンタル・ジャーニー (岩波文庫 赤 212-4)センチメンタル・ジャーニー (岩波文庫 赤 212-4)
(1952/10/25)
スターン

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書名:センチメンタル・ジャーニー
著者:ロレンス・スターン
訳者:松村 達雄
出版社:岩波書店
ページ数:214

おすすめ度:★★★★




ロレンス・スターン晩年の作品がこの『センチメンタル・ジャーニー』だ。
『センチメンタル・ジャーニー』だけでも十分鑑賞に値するが、『トリストラム・シャンディ』と重複する部分もあるので、どちらか一方を選ぶというのであれば、『トリストラム・シャンディ』を読むべきだろう。

『センチメンタル・ジャーニー』は、『トリストラム・シャンディ』に登場する牧師ヨリックのフランスでの体験記という形式を採っているが、スターンは牧師であったし、静養のために大陸旅行を経験してもいるので、スターンがヨリックの名を借りて自らの体験をつづっているとする見方が一般的のようだ。
トリストラム・シャンディ』と同じくゆったりとした進みぶりで、こちらもまた未完に終わってしまったが、スターンの文章が帯びるしっとりとした味わい深さは備えている。

スターンの魅力は、独特なユーモアセンスだけではなく、人情味あふれる筆致にもある。
人情味を素直に表現しすぎるあまり、牧師のくせにずいぶんとふしだらな人間だと評されることもあるようだが、同じ牧師が書いたものでも説教集なんかよりはよほど人間的で面白い作品に仕上がっているのは間違いない。
『センチメンタル・ジャーニー』には、牧師ならではの他者を慮る気持ちも表れているし、病を患う人間ならではの線の細さも感じられる。

朝日出版社からも小林亨氏の翻訳で出版されていて、実を言うと私が読んだのはそちらの方なので、岩波文庫版の『センチメンタル・ジャーニー』は確認したことがない。
版が古いので活字の古さや多少の読みにくさはあるのかもしれないが、朝日出版社の方はアマゾンに登録されていなかったので、岩波文庫版を紹介せざるをえないというのが現状だ。
そしてその岩波文庫版も長らく欠品が続いている。
漱石も高く評価していたスターンが、日本で日の目を見るときはやってこないのだろうか・・・。

職業作家ではなかったスターン、体調を崩しがちだったスターンの小説作品は、いずれも未完の『トリストラム・シャンディ』と『センチメンタル・ジャーニー』だけであるから、バルザックやディケンズなんかと比べるとはるかに簡単に読破できる。
優しさと温もりのあふれるスターンの小説を、ぜひ読破していただきたい。
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