『完訳 カンタベリー物語』 ジェフリー・チョーサー(岩波文庫)

完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)
(1995/01/17)
チョーサー

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完訳 カンタベリー物語〈中〉 (岩波文庫)完訳 カンタベリー物語〈中〉 (岩波文庫)
(1995/01/17)
チョーサー

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完訳 カンタベリー物語〈下〉 (岩波文庫)完訳 カンタベリー物語〈下〉 (岩波文庫)
(1995/01/17)
チョーサー

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書名:完訳 カンタベリー物語
著者:ジェフリー・チョーサー
訳者:桝井 迪夫
出版社:岩波書店
ページ数:350(上)、472(中)、326(下)

おすすめ度:★★★★




ジェフリー・チョーサーの主著であり、英語で書かれたイギリス文学最初期の作品として知られているのがこの『カンタベリー物語』だ。
カンタベリー大聖堂への巡礼の途上、チョーサーも含めた複数の登場人物がそれぞれ自分の知っている面白い話を披露するという、いわゆる枠物語という形式が採られており、作品中で語られるエピソードの内容などと合わせて、非常に中世風の雰囲気が漂っている作品である。

『カンタベリー物語』の登場人物には、騎士や尼僧、法律家や商人など、幅広い階層の人々が選ばれている。
彼らの本来の目的がカンタベリーへと巡礼に向かうことであるから、経済的余裕のない貧困層は登場せず、さらに聖職関連の職業に就いている人間の割合が高いようにも思えるが、いい意味で雑多な取り合わせとなっているように思う。
作中にはそんな登場人物同士のやり取りもあり、エピソードをはめ込むための単なる枠を超えた面白さを味わうこともできる。

時代が古いこともあってか、チョーサーの生涯についてはあまり多くのことが知られているとは言い難いが、使節としてイタリアを訪問したことは間違いないとされており、その際にボッカッチョの『デカメロン』も読んだのではないかと推定されている。
作品の構成の類似だけではなく、逸話の重複もしばしば見られるので、『デカメロン』と比べて読んでみるのも興味深いことだろう。

作品の冒頭で語られる『カンタベリー物語』のブループリントを完成することなく、チョーサーはこの世を去ってしまったが、元来が多くのエピソードの連なりである『カンタベリー物語』は、冒頭での約束が果たされないという物足りなさこそあれ、未完であってもさほど中途半端な印象を受けることのない作品だ。
それどころか、もしチョーサーが当初の予定通りの作品を完成させていたとしたら、あまりの長大さゆえに本書のような完訳が文庫本という形で出されることもなかったかもしれない。
古い時代のイギリス文学に興味のある方にはもちろん、実際にカンタベリーに赴く機会のある方が道中の退屈を紛らすための本としてもお勧めしたいと思う。
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