『草の葉』 ホイットマン(岩波文庫)

草の葉 (上) (岩波文庫)草の葉 (上) (岩波文庫)
(1998/01/16)
ホイットマン

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草の葉 (中) (岩波文庫)草の葉 (中) (岩波文庫)
(1998/02/16)
ホイットマン

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草の葉 (下) (岩波文庫)草の葉 (下) (岩波文庫)
(1998/03/16)
ホイットマン

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書名:草の葉
著者:ウォルト・ホイットマン
訳者:酒本 雅之
出版社:岩波書店
ページ数:411(上)、439(中)、464(下)

おすすめ度:★★★★★




アメリカの国民的詩人であるウォルト・ホイットマンが、その生涯を懸けて書き連ねた詩集がこの『草の葉』だ。
自由とデモクラシーを力強く歌い上げる詩風が特徴的で、たいていは内向的な作品が多い詩の世界において、『草の葉』ははるかに外向的な性格を帯びており、個の枠を突破したホイットマンはアメリカ全土を包み込むかのような雄大さを見せている。
それでいてホイットマンが他国でも評価されるのは、単にアメリカを称賛するだけではなく、その根底において人間性を称揚する姿勢ゆえなのであろう。
南北戦争期を生きたホイットマンは、19世紀のアメリカのかかえる問題点をテーマに選ぶことも多く、『草の葉』にはその時代性も色濃く打ち出されているので、読者の興味を強く喚起するはずだ。
おれにはアメリカの歌声が聴こえる―草の葉(抄) (光文社古典新訳文庫)おれにはアメリカの歌声が聴こえる―草の葉(抄) (光文社古典新訳文庫)
(2007/06)
ウォルト ホイットマン

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数十年の時を経てようやく今ある形が完成した『草の葉』は、物語詩ではない一つの詩集としてはかなり長大なものとなってしまっている。
そのこと自体がアメリカの広大さを髣髴とさせる観がないでもないが、とりあえずホイットマンの詩がどのようなものなのかを知りたいという読者に対しては、全三冊の詩集というのはやや敷居が高く感じられるかもしれない。
そのような方には近年光文社から刊行された右の抄訳、『おれにはアメリカの歌声が聴こえる―草の葉(抄)』をお勧めしたいと思う。
抜粋とはいえホイットマンの放つ力強い息吹に触れることで、『草の葉』をきっと全訳で読みたくなるに違いない。

アメリカを代表する詩人を一人だけ選べと言われれば、ホイットマンの名を挙げる人は少なくないだろう。
彼の思想、ひいては詩想は、発表当時に猥褻なものだとして物議をかもしたにせよ、概ね現在のアメリカにも根付いているようで、決して古びていない。
最もアメリカらしいアメリカ詩人ホイットマンは、後世の文人からの評価も群を抜いており、アメリカ文学に関心のある方であれば彼の詩作の集大成である『草の葉』は必読の書と言えるだろう。
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『ホイットマン詩集―対訳』 ホイットマン(岩波文庫)

ホイットマン詩集―対訳 (岩波文庫―アメリカ詩人選)ホイットマン詩集―対訳 (岩波文庫―アメリカ詩人選)
(1997/03/17)
ホイットマン、木島 始 他

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書名:ホイットマン詩集―対訳
著者:ウォルト・ホイットマン
訳者:木島 始
出版社:岩波書店
ページ数:189

おすすめ度:★★★☆☆




ホイットマンが打ち立てた金字塔とも言うべき詩集『草の葉』から33編を抜粋し、対訳という形で出されたのがこの『ホイットマン詩集―対訳』だ。
ホイットマンの詩は、堅苦しい単語の使用が少なく、語順も著しく崩されていない詩行が多いため、英詩の中では比較的読みやすい部類に入るようには思うのだが、翻訳で読むのと比べればはるかに難解であることは事実であり、本書を手にするに当たりある程度の覚悟は必要かもしれない。
そうはいっても、高校生レベルの英語力があればホイットマンの詩の帯びる雰囲気をなんとなく感じ取ることは可能であるし、詩の形式的な方面に関して知識がなくともホイットマンの詩を鑑賞する上でさしたる障害にはならないはずなので、『草の葉』に関心のある方であれば本書は一読の価値ある本だと言えるだろう。

本書には「わたしはアメリカが歌うのを聞く」や、「わたしじしんの歌」のうちの数編をはじめ、黒人奴隷に関するものやリンカーン大統領を悼んで書かれたものなどが収録されており、ホイットマンらしさを非常によく堪能できる選集となっている。
そういう意味では、紙幅の限界によって若干の偏りは見られるものの、『草の葉』の相貌を見事に圧縮した一冊になっているように思われる。

ホイットマンの翻訳には、ホイットマンの奔放さを強調したくだけた文体のものと、他の詩人の作品を訳すのとさほど変わらない文体を用いているものとがある。
具体的に言えば、"I"を訳すのに「わたし」を使うか「ぼく」を使うか、はたまた「おれ」を使うのかといった単語の選択や、文章の調子の高低にけっこう差があるのである。
本書『ホイットマン詩集―対訳』の文体はというと、どちらかといえば堅い方のものを用いているように思うので、ホイットマンの詩といえばくだけたものというイメージを持っておられる読者は、ひょっとすると本書の訳文に少々違和感を覚えられるかもしれない。
しかし、そこは原文が参照できる対訳であるという長所を存分に生かして、ホイットマンのイメージを更新していただければと思う。
ホイットマン、『草の葉』、さらにはアメリカ文学、そして英詩に興味のある方にはお勧めの一冊だ。
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