『ハムレット』 シェイクスピア(新潮文庫)

ハムレット (新潮文庫)ハムレット (新潮文庫)
(1967/09)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:ハムレット
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:284

おすすめ度:★★★★★




言わずと知れたシェイクスピアの代表作であり、シェイクスピアの最高傑作との呼び声も高い悲劇『ハムレット』。
イギリス文学のみならず、西洋文学における基本中の基本と言うべき名作であるため、読んで損をすることはないのではなかろうか。
『ハムレット』をどれだけ深く読み込むかは読者の双肩にかかっていると言えるが、戯曲という読みやすいスタイルは気軽な読書をも可能にしているように思われるので、人生において一度は手にすることをお勧めしたい。

先王でもあった父を亡くしたデンマークの王子、ハムレット。
今は彼の叔父が王位を継いでいるが、その王位継承の秘密を知ったハムレットは、父の復讐を固く誓うことになる。
不実な母をなじり、敵討ちのための策略をめぐらすハムレット、オフィーリアとの恋の行方はいかに・・・。
意味深な台詞の数々によって紡がれるプロットの巧みさは見事なもので、ドミノ倒しのような悲劇の連鎖も驚嘆に値するものがある。
ハムレット (岩波文庫)ハムレット (岩波文庫)
(2002/01/16)
シェイクスピア

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ハムレットQ1 (光文社古典新訳文庫)ハムレットQ1 (光文社古典新訳文庫)
(2010/02/09)
ウィリアム シェイクスピア

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シェイクスピアの作品の中でもその名が最も知られた作品の一つである『ハムレット』は、当然ながら邦訳の種類もたくさん存在している。
右にそれらの一例として比較的近年になって新訳で出された文庫版のものを紹介しておくが、とりあえず読んでみたいという方には価格設定が手頃な新潮文庫版がいいように思う。
入手が容易で安価であるという点を除けば、新潮文庫版を紹介していることに他意はないので、『ハムレット』をより深く味わいたい方は、いくつかの種類を読み比べて最善と思える一冊を探してみるのも面白いのではなかろうか。

あれこれと思い悩むタイプであるハムレットは、後世の文学作品においても悩める人の典型として頻繁に言及されているし、ツルゲーネフは「ハムレット型」という人物類型を用いることにもなる。
数多くの傑作を残しているだけに代表作の絞りきれないのがシェイクスピアであるが、どれから読み始めるべきかと尋ねられたとすれば、他の多くの方々と同様に私は『ハムレット』をお勧めすることだろう。
この推奨に弊害があるとすれば、シェイクスピア世界へのイントロとしてシェイクスピア作品の最高峰に触れてしまったのでは、あとは自ずと下り坂になってしまうかもしれないという危惧の念だけだ。
しかし、シェイクスピアを読むということは、遅かれ早かれ『ハムレット』を読むということでもあるように思う。
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『リア王』 シェイクスピア(新潮文庫)

リア王 (新潮文庫)リア王 (新潮文庫)
(1967/11)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:リア王
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恆存
出版社:新潮社
ページ数:232

おすすめ度:★★★★★




シェイクスピアの四大悲劇の一つに数えられるのがこの『リア王』だ。
タイトルロールであるリア王をはじめ、高貴な身分の登場人物が中心となって物語が進んでいくものの、家族の絆と欺瞞が重要なファクターとなっている悲劇であるため、今日の日本の読者でも作中で物語られる悲哀を身近に感じることができるのではなかろうか。
そういう意味では、史的かつ政治的な『リチャード三世』などと比べてはるかに人間味の強い戯曲になっていると言えるだろうし、そのことによって『リア王』はより普遍的な文学的価値を備えているとも言えるはずだ。

古代ブリテンの王、リアは3人の娘たちの誠意を試した結果、虚飾を見抜くことができずに最も優しく誠実な末娘には愛情が足りないと判断する。
実の娘の誠意を試すという行為自体が不誠実な気がしないでもないが、いずれにせよ、この判断の誤りがリア王の運命を大きく変えていくことになり・・・。
リア王 (岩波文庫)リア王 (岩波文庫)
(2000/05/16)
シェイクスピア

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リア王 (光文社古典新訳文庫)リア王 (光文社古典新訳文庫)
(2006/09/07)
シェイクスピア

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ハムレット』同様、シェイクスピアの代表作である『リア王』にも文庫本だけでも数種類の翻訳が出回っている。
どれが最も読みやすいと感じるかは読み手によって異なるだろうから一概には言えないし、私自身もしっかりと読み比べたわけではないのだが、新訳をお探しの方にはとりあえず右の二つをお勧めしたい。
特にこだわりのない方は最も安価な新潮文庫が手頃なのではないかと思う。

悲劇作品ということで、作品に読者の心を揺さぶる深みこそあれ、読後にそれほど爽快感は望めないことだろう。
そうはいっても、あまりに有名な作品であるので、悲劇があまり得意ではないという方も、後世の多くの文学作品の中でたびたび言及されている『リア王』は、そのあらすじだけでも知っておいて損のない作品の一つであるように思う。
欧米文学に関心のある方であれば、蔵書に加えておくことを強くお勧めしたい一冊だ。

『オセロー』 シェイクスピア(新潮文庫)

オセロー (新潮文庫)オセロー (新潮文庫)
(1973/06)
シェイクスピア

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書名:オセロー
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恆存
出版社:新潮社
ページ数:214

おすすめ度:★★★★★




ハムレット』や『リア王』と並び、シェイクスピアの四大悲劇の一つと言われている『オセロー』。
『ヴェニスの商人』や『ロミオとジュリエット』など、シェイクスピアにはイタリアを舞台にした作品が多いが、ヴェニスで展開するこの『オセロー』もその代表格である。
シェイクスピアの名作の常であるが、『オセロー』もまた含蓄ある台詞の宝庫であり、ぜひ舞台にかけられているのを見たくなる作品だ。

ヴェニスの将軍オセローは、美しき妻デスデモーナをこよなく愛していたが、イアーゴーがその愛情を逆手にとって奸計をめぐらすことに。
燃え盛る嫉妬の念に焼き尽くされたオセローの行きつく先は・・・。
『オセロー』は、当然ながら一般的にはオセローが主人公とされる作品であるが、作品中におけるイアーゴーの存在感がきわめて強く、イアーゴーの方に比重を置いて読んでみるのも面白いと思う。
そもそもなぜイアーゴーがオセローの嫉妬をかきたてたのかを考えると、この戯曲がまた違った色合いに見えてくるのではなかろうか。
オセロウ (岩波文庫)オセロウ (岩波文庫)
(1960/06/25)
シェイクスピア

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『オセロー』は、同じくシェイクスピアの四大悲劇に数えられている『ハムレット』や『リア王』と比べると少々翻訳の種類は少ないのかもしれないが、もちろん作品としてそれらと比べた場合に何らかの遜色があるわけではない。
シェイクスピアの最高傑作としてどれを選ぶかは論者によってまちまちであろうし、その点は元来それぞれの読者が決定すべきことであるように思うが、最も優れた作品として『オセロー』を選ぶ読者がいてもまったく不思議ではない。
再読するたびに一味違った感銘を受けることのできる、「嫉妬」の代名詞でもあるオセローの悲劇、ぜひ一読いただきたい。

『マクベス』 シェイクスピア(新潮文庫)

マクベス (新潮文庫)マクベス (新潮文庫)
(1969/08)
シェイクスピア

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書名:マクベス
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:162

おすすめ度:★★★★★




シェイクスピアの四大悲劇の一つである『マクベス』。
四大悲劇の出来栄えに関して順位をつけるとすると、おそらくそれぞれの読者が異なった判定を下すことになるだろうが、幻想的かつ運命的な筋書きを持つ点で他の三作と若干雰囲気の異なるこの『マクベス』は、読者の嗜好に応じて一位か四位という順位を獲得することが多いのではないかという気がする。
シェイクスピアにしては比較的短めの作品ということもあるのかもしれないが、伏線の多用によって構成自体はとても緊密に仕上がっているように感じられ、そこも好みが分かれるところなのではなかろうか。
しかし、いずれにしても『マクベス』が戯曲として傑作の域に達しているということに異を唱える人はきわめて少ないように思う。

スコットランドの一将軍として華々しい戦果を挙げたマクベスは、その帰途において未来のことを言い当てる魔女に遭遇する。
城に戻り、現スコットランド王であるダンカンから武功をねぎらわれるも、魔女の言っていた言葉、すなわちマクベスこそが後のスコットランドの王になるという予言が気にかかって仕方のないマクベスとその妻は・・・。
いかにもシェイクスピアらしい、些細な言葉尻をとらえた劇の展開は、読者にシェイクスピアの劇作家としての巧みさを感じさせるに違いない。
マクベス (岩波文庫)マクベス (岩波文庫)
(1997/09/16)
シェイクスピア

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マクベス (光文社古典新訳文庫)マクベス (光文社古典新訳文庫)
(2008/09/09)
ウィリアム シェイクスピア

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シェイクスピア作品の中で、日本においてよく読まれているものの一つである『マクベス』は、当然ながら翻訳の種類も豊富である。
新訳が必ずしもその質において古くからあるものを上回るわけではないが、世代が変われば読者が平明と感じる言葉遣いなども変化するだろうから、古い言い回しなどを避けたい方はとりあえず出版年を参考にするのが無難な選抜法であるとは言えるかもしれない。

代表的な作品を数多く持つシェイクスピアだけに、四大悲劇をすべて読んでも非常に偏ったシェイクスピア像しか描くことはできないように思うが、そうは言ってもやはりシェイクスピアが類まれな才能を発揮したのが悲劇というジャンルであることに変わりはなく、四大悲劇は読破しておくことをお勧めしたい。
そして他の作品との比較対照によってその特徴がいっそう浮き彫りになる『マクベス』を心行くまで楽しんでもらえればと思う。

『ロミオとジュリエット』 シェイクスピア(新潮文庫)

ロミオとジュリエット (新潮文庫)ロミオとジュリエット (新潮文庫)
(1996/12)
シェイクスピア

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書名:ロミオとジュリエット
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:中野 好夫
出版社:新潮社
ページ数:267

おすすめ度:★★★★★




ハムレット』や『リア王』と並び、言わずと知れたシェイクスピアの代表的悲劇作品の一つがこの『ロミオとジュリエット』だ。
数々のパロディの元となった有名な場面もあれば、シェイクスピアの物した名言としてよく引用される台詞も複数含んでおり、シェイクスピア以降の文学を深く鑑賞する上で外せない作品の一つであると言えるように思う。
タイトル自体が何しろ非常に有名なので、読書家ではない方も一度は読んでおいて損はないのではなかろうか。

相思相愛の仲であるロミオとジュリエットだったが、彼らの属する一族はというと、互いに激しく憎み合っている間柄だった。
なんとか二人が結ばれる道を模索するロミオは・・・。
ネタばれを避けるよう努めているので、結末に関して言及するのはいつもながら控えることにするが、その結末はすでに多くの人の知るところとなっているのかもしれない。
ロミオ&ジュリエット [DVD]ロミオ&ジュリエット [DVD]
(2003/04/11)
レオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ 他

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ロミオとジューリエット (岩波文庫)ロミオとジューリエット (岩波文庫)
(1988/02/16)
W. シェイクスピア

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『ロミオとジュリエット』の映像化作品としては、レオナルド・ディカプリオ主演の『ロミオ&ジュリエット』がもっとも一般的なものだろう。
現代風のアレンジが色濃いため、原作の読者がこの映画をどう感じるかは意見が分かれるかもしれない。
また、新潮文庫以外の翻訳としては、岩波文庫版が古くからあり、訳者も名訳者として定評のある平井正穂氏であるため、岩波文庫ファン以外の方にも安心してお勧めできる一冊だと言える。

『ロミオとジュリエット』の舞台となったヴェローナには、二人が愛を語り合ったとされるバルコニーが存在しているらしい。
その歴史的な真偽はともかくとしても、『ロミオとジュリエット』が世界的に最も有名なロマンスの一つであることは疑いようがない。
古典的名作であるとはいえ、戯曲というスタイルであるためにたいへん読みやすいので、イギリス文学やシェイクスピアにそれほど興味のない方でも、ぜひ気軽に手にとっていただきたい作品だ。

『ヴェニスの商人』 シェイクスピア(新潮文庫)

ヴェニスの商人 (新潮文庫)ヴェニスの商人 (新潮文庫)
(1967/10)
シェイクスピア

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書名:ヴェニスの商人
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:176

おすすめ度:★★★★★




ヴェニスの商人 [DVD]ヴェニスの商人 [DVD]
(2006/04/05)
アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ 他

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シェイクスピアの喜劇作品として最もよく知られているのがおそらくこの『ヴェニスの商人』だろう。
右はシェイクスピア作品に対する造詣の深いアル・パチーノがシャイロックを演じた映画『ヴェニスの商人』で、概ね原作に忠実な中に、わずかに現代的な視点が盛り込まれている作品となっていて、ひょっとすると今日の日本人にはこちらの方が受け入れやすいものになっているのかもしれない。
いずれにしても、俳優陣や衣装などのクオリティーは大いに満足のいくものに思われたので、ぜひ原作と合わせて鑑賞いただきたい。

どうしてもお金が必要だという友人のために、ユダヤ人の金貸しシャイロックに借金を申し込んだアントニオ。
日頃から蛇蝎のごとくに毛嫌いしていたシャイロックだけに、てっきり法外な金利を請求するに違いないと踏んでいたアントニオだったが、シャイロックが担保として求めたものは意外なもので・・・。
『ヴェニスの商人』の優れたところとしては、登場人物の巧みな性格造形もさることながら、プロットの面白さも挙げることができ、おそらくは最後の一ページまで読者の関心を引きつけてやまないことだろう。
ヴェニスの商人 (岩波文庫)ヴェニスの商人 (岩波文庫)
(1973/01)
シェイクスピア

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ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫)ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫)
(2007/06)
ウィリアム シェイクスピア

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作品自体の知名度や読みやすさもあってか、『ヴェニスの商人』も翻訳の種類には事欠かない。
右には一例として岩波文庫版と光文社古典新訳文庫を挙げておくが、出版社や訳者に特にこだわりのない方には最も安価な新潮文庫版をお勧めしたい。

ハムレット』や『リア王』で知られるシェイクスピアは、どうしても悲劇作家としての印象が強いように思うが、軽いタッチの、それでいて読み応えのある喜劇作品も複数残している。
シェイクスピアの喜劇の中で、作品としても非常に優れていて入手も容易なのが『ヴェニスの商人』なので、シェイクスピアの喜劇作品に興味のある方はぜひ『ヴェニスの商人』から始めていただければと思う。

『テンペスト』 シェイクスピア(ちくま文庫)

テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)テンペスト―シェイクスピア全集〈8〉 (ちくま文庫)
(2000/06)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:テンペスト
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:松岡 和子
出版社:筑摩書房
ページ数:186

おすすめ度:★★★★




シェイクスピアがストラトフォード・アポン・エイヴォンに引退する前の最後の作品として知られるのがこの『テンペスト』だ。
”Tempest”が「嵐」を意味するため、邦題としては『あらし』も広く一般的に用いられているが、近年ではひょっとすると『テンペスト』という片仮名表記が優勢になりつつあるのかもしれない。
喜劇に分類される作品であるために非常に読みやすいにもかかわらず、深読みも可能な作品であり、執筆の背景などの点で言えばシェイクスピア作品で最も興味深いものの一つに数えられるのではなかろうか。

ミラノを追われた元大公プロスペローは、今はひっそりと娘と孤島で暮らしている。
魔法の知識を得た彼は、配下の精霊に命じて自らに仇をなした肉親の乗る船を嵐に遭わせ、乗船している人々を自身の住む島に漂着させる。
復讐をするには絶好の機会を得たプロスペローは・・・。
シェイクスピアの肉声とも思えるような台詞が散在する『テンペスト』は、読者の側で注意を払えば払っただけ奥行きが生じてくる作品であるはずなので、ぜひシェイクスピアの肖像を思い浮かべながら熟読してみていただきたいと思う。
テンペスト [DVD]テンペスト [DVD]
(2012/03/02)
ヘレン・ミレン、ラッセル・ブランド 他

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夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)
(1971/08/03)
シェイクスピア

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映像化作品としてお勧めしたいのは、いろいろな意味合いで野心的な作品である右の『テンペスト』だ。
映画というよりは舞台風の演出も随所に見られ、精霊の取り扱い方も特徴的で、そして何より、プロスペローを女性に置き換えるという一大変更を加えており、たいへん興味深い作品に仕上がっているように思う。
また、新潮文庫からは『夏の夜の夢・あらし』として二作品を一冊に合わせた文庫本も出されているので、お得さで選ぶなら新潮文庫といえるだろう。

シェイクスピア作品の導入として読むよりは、複数作品を読んだ上で『テンペスト』を紐解かれることをお勧めしたい。
シェイクスピアに対する思い入れが強まれば強まるだけ、シェイクスピア自身に共通するところの多い主人公により強い共感を覚えることができるに違いない。

『夏の夜の夢・あらし』 シェイクスピア(新潮文庫)

夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)夏の夜の夢・あらし (新潮文庫)
(1971/08/03)
シェイクスピア

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書名:夏の夜の夢・あらし
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:291

おすすめ度:★★★★




シェイクスピアの傑作喜劇二編を一冊の文庫本に収めたのが本書『夏の夜の夢・あらし』だ。
『あらし』に関しては『テンペスト』として別の記事で紹介済みなので詳細はそちらに譲ることにするが、シェイクスピアの代表的な喜劇二作品が非常に手頃な価格で読める本書は、『ヴェニスの商人』に匹敵するほど、シェイクスピア喜劇の中でお勧めの一冊となっている。
『夏の夜の夢』と『あらし』とは、いずれも同じ喜劇に分類される作品であり、それ以外にもいくつか共通点を備えているにもかかわらず、それぞれどことなく作品の性質が異なっているというのも、読者の関心を引くのではないかと思う。

『夏の夜の夢』の舞台はアテネとその郊外。
若き二組の男女と妖精王夫妻という、三組のカップルはそれぞれ円満な結末を迎えることができるのか・・・。
ギリシア神話との連関性もあり、妖精たちも多数活躍するその物語展開は軽快そのもので、欧米文学における典型的かつ王道的な喜劇作品の一つと言えるのではなかろうか。
シェイクスピア全集 (4) 夏の夜の夢・間違いの喜劇 (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (4) 夏の夜の夢・間違いの喜劇 (ちくま文庫)
(1997/04)
W. シェイクスピア

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出版年が新しく入手が容易な本に限って言えば、『夏の夜の夢』はちくま文庫からも出されている。
こちらは『間違いの喜劇』と合わせて一冊になっているので、お得であることには変わりがないのではなかろうか。
ただ、新潮文庫で買うべきかちくま文庫で買うべきか迷った場合には、シェイクスピアの引退前最後の作品である『あらし』を収録している新潮文庫の方をお勧めしたいと思う。

『夏の夜の夢』の中で、最も印象的な登場人物、というか登場妖精はパックだろう。
いたずら好きでおっちょこちょいという妖精像の確立にも功績があったとされるパックの活躍は、いかに注目してもし過ぎたことにはならないはずだ。
いずれにしても、世界文学の巨匠シェイクスピアの作品だからと肩肘を張る必要はまったくないので、ぜひ夏の夜にでも気軽に手にしていただきたい作品だ。

『リチャード三世』 シェイクスピア(新潮文庫)

リチャード三世 (新潮文庫)リチャード三世 (新潮文庫)
(1974/01/30)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:リチャード三世
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:232

おすすめ度:★★★★★




リチャード三世 (岩波文庫)リチャード三世 (岩波文庫)
(2002/02/15)
シェイクスピア

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シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫)
(1999/04)
W. シェイクスピア

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数々の悲劇、喜劇によって知られるシェイクスピアは、同時に優れた史劇の書き手でもあった。
そんなシェイクスピアの史劇における代表作がこの『リチャード三世』だ。
劇としての質の高さは言うまでもないことながら、右に示すように文庫本として日本語に訳出されている種類も多いので、シェイクスピアの史劇を読んでみたい方が最初に手にするのに格好の作品と言えるのではなかろうか。

『リチャード三世』は、血のつながりが人間同士を結ぶ絆としての意味を持たないほどの権力抗争が行われているイングランドが舞台。
王位継承者の一人として、平静を装いながらも沸々とたぎる野心を秘めるグロスター公リチャード。
次々と政敵を排し、目指していた権力の座へと上り詰めていくのだが・・・。
主人公のインパクトがあまりに強いため、他の登場人物の影が薄く感じられてしまうほど、リチャード三世は興味深い人物像として描き出されている。
善人とは言い難い狡猾な人柄にもかかわらず、少なくとも文学の上ではとても魅力的な人物と言えるだろう。
リチャードを探して [DVD]リチャードを探して [DVD]
(2006/01/13)
アル・パチーノ、アレック・ボールドウィン 他

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右は、少し古いがハリウッドが誇る名優アル・パチーノがリチャードを演じた映画『リチャードを探して』だ。
ドキュメンタリー風の作品なので『リチャード三世』のストーリーをそのまま鑑賞したい方には不向きかもしれないが、『ヴェニスの商人』でシャイロックをも演じたアル・パチーノによる『リチャード三世』の解釈と演技は、公開から15年以上の時を経た今でもなお一見の価値があると思う。

ただ単に権力欲だけで動いている登場人物は、どうしてもその性格が平板になりがちだ。
しかし、リチャード三世には他の王位を狙う男達にはない独特の深みがあり、その深みが存在するからこそ、シェイクスピアの史劇の中で他を引き離して確固たる代表作として知られているのだろう。
当時のイングランドの歴史的背景を知らずとも十分楽しめる『リチャード三世』、シェイクスピアのファンならずとも、ぜひ読んでみていただきたい作品だ。

『ヘンリー四世〈第1部〉〈第2部〉』 シェイクスピア(岩波文庫)

ヘンリー四世〈第1部〉 (岩波文庫)ヘンリー四世〈第1部〉 (岩波文庫)
(1969/11/17)
シェイクスピア

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ヘンリー四世〈第2部〉 (岩波文庫)ヘンリー四世〈第2部〉 (岩波文庫)
(1970/06/16)
シェイクスピア

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書名:ヘンリー四世〈第1部〉〈第2部〉
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:中野 好夫
出版社:岩波書店
ページ数:210(1)、225(2)

おすすめ度:★★★★




イギリスの歴史に題材を求めたシェイクスピアの史劇の一つとして、高い評価を得ているのがこの『ヘンリー四世』である。
ヘンリー四世に関する歴史的背景となると、日本ではよほど歴史に詳しい方でもない限り知らないことだろうが、他の多くの史劇と同様、予備知識がなくとも十分に戯曲を楽しむことができるはずだ。
第1部と第2部とから成る長めの作品であるために読み応えは十分なので、シェイクスピアに関心のある方にはたいへんお勧めできる。

ヘンリー四世を取り巻く状況は、決して安穏というわけにはいかなかった。
息子である皇太子の振る舞いですら頭痛の種であるし、不満を抱く者たちが兵を起こそうという動きもある。
ヘンリー四世は自らの陥った窮地を打開できるのか・・・。

話の筋との直接的な関係は薄いものの、『ヘンリー四世』における道化役ともいうべきフォルスタッフという人物は大いに注目に値する。
一つのキャラクターとしてあまりにも愉快に仕上がってしまったフォルスタッフは、『ヘンリー四世』で脇役を務めるだけには飽き足らず、喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』で主役の座にありつくことにもなるという、シェイクスピアが生み出した登場人物の中でも別格の存在だ。
権力争いや戦場の場面などから成る歴史劇はとかく重々しい雰囲気で進行しがちであるが、フォルスタッフの性格と軽妙な台詞によって作品中に見事なコントラストが持ち込まれ、『ヘンリー四世』がいっそう面白くなったとも言えるだろう。
ヘンリー四世 第一部  シェイクスピア全集 〔15〕 白水Uブックスヘンリー四世 第一部 シェイクスピア全集 〔15〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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ヘンリー四世 第二部  シェイクスピア全集 〔16〕 白水Uブックスヘンリー四世 第二部 シェイクスピア全集 〔16〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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これまで何種類か翻訳があったはずの『ヘンリー四世』だが、その文庫版にはほとんど新版が出ていないらしい。
中古品であればそれだけ安価に売られているようだが、新品をお探しの方には右の白水Uブックスをお勧めしたい。
シェイクスピアの歴史劇の中で『リチャード三世』に次いでお勧めの『ヘンリー四世』、途中で退屈に感じられてくる作品ではないと確信しているが、まずは第1部だけでも手にしてみていただければと思う。

『ソネット集』 シェイクスピア(岩波文庫)

ソネット集 (岩波文庫 赤 205-5)ソネット集 (岩波文庫 赤 205-5)
(1986/11/17)
シェイクスピア

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書名:ソネット集
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:高松 雄一
出版社:岩波書店
ページ数:295

おすすめ度:★★★★




戯曲の作者としてのみならず、優れた詩人としての評価も高いシェイクスピア。
そんなシェイクスピアの詩作の才を垣間見てみたいという読者に最もお勧めしたい一冊がこの『ソネット集』だ。
様々な題材で書かれた詩を集めた詩集というわけではなく、概ね一定の脈絡に沿ったソネットが並んでいる本なので読みやすい上に、幾多の謎が散りばめられている作品であるため、『ソネット集』に対する読者の関心は尽きないことだろう。

『ソネット集』は、シェイクスピアが愛したとされる一人の青年に向けて書かれたソネットが大半を占めている。
諸説はあるものの、その青年が誰であるかは結局特定できていないし、通称「ダークレディ」と呼ばれる妖艶な女性の存在もまた文学史家たちの憶測に次ぐ憶測を呼んでいる状態だ。
そういう意味では、たいていの詩集を超えた面白さを秘めていると言えるのではなかろうか。
W・H氏の肖像 (プラネタリー・クラシクス)W・H氏の肖像 (プラネタリー・クラシクス)
(1989/09)
オスカー ワイルド

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ソネット自体の内容の吟味もさることながら、それがいつ誰に向けて書かれたものなのかを同定しようとする試みが長らく重ねられてきた『ソネット集』。
その読者にお勧めしたい本が、岩波文庫版『ソネット集』の解説でも触れられているオスカー・ワイルドによる右の『W・H氏の肖像』だ。
献辞で述べられているW.H氏とはいったい何者なのかについて、ワイルド独自の説を小説風に仕立てた一冊で、その学術的な価値はともかく、文学的にはきわめて興味深い著作であることは間違いない。

詩というジャンルに関心の持てない方も少なくないだろうし、詩の翻訳は不可能であると考えておられる方もおられることだろう。
しかし、単なる詩作品としての楽しみ方以外にも、読者の知的好奇心をくすぐるという面白さを備えた『ソネット集』は、詩をあまり好まれない方でも楽しめる可能性を十分に備えた作品だ。
まして著者は有名極まりないあのシェイクスピアなのだから、一読の価値はあるように思う。

『十二夜』 シェイクスピア(岩波文庫)

十二夜 (岩波文庫)十二夜 (岩波文庫)
(1960/03/25)
シェイクスピア

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書名:十二夜
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小津 次郎
出版社:岩波書店
ページ数:173

おすすめ度:★★★★




シェイクスピアの喜劇の中でも特に評判の高い作品の一つである『十二夜』。
原題である"Twelfth Night"は、日本語としては文字通り『十二夜』であるが、本来はクリスマス後の十二日目である顕現日の夜のことを指している。
それでいて、作中においては直接的に十二夜を指し示すような台詞はなく、明確にされていない執筆年代も含めて、研究者の間では何かと議論の対象となっているようである。
そうはいっても、一般の読者が鑑賞する分にはまったく難解さの感じられない読みやすい作品であるため、幅広い読者層に受け入れられうる作品ではないかと思う。

『十二夜』の中心人物は、ヴァイオラとセバスチャンという、容姿のそっくりな双子の兄妹。
二人の乗った船が嵐に遭い、それぞれ助かりはしたものの、嵐の最中に別れ別れになった二人はお互いが死んだものと思い込んでいたのだが・・・。
人違いから生じる滑稽味という喜劇としてはやや典型的なプロットは、それほど意外性こそないものの、安心して読み進めることのできる筋書きであるといえるのではなかろうか。
十二夜 (光文社古典新訳文庫)十二夜 (光文社古典新訳文庫)
(2007/11/08)
シェイクスピア

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シェイクスピア全集 (6) 十二夜 (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (6) 十二夜 (ちくま文庫)
(1998/09)
W. シェイクスピア

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右に挙げるように、『十二夜』には翻訳の種類も豊富だ。
翻訳の種類が多ければすなわち名作というわけではないにせよ、複数の出版社によって、多くの読者が楽しめる作品であるととらえられていることは事実だろう。
翻訳にそれといってこだわりのない方には、新品が安価で購入可能な岩波文庫と光文社古典新訳文庫とをお勧めしたい。

テンポよく軽快にストーリーが進んでいく『十二夜』は、シェイクスピアの人物造形における偉大さを感じ取るための作品としては少々不適切かもしれない。
しかし、喜劇作品の場合は、登場人物の心理にあまり深く立ち入ってしまっては劇としての面白みが削がれることにもなるだろう。
そういう意味では、各登場人物を適度に描ききった『十二夜』の喜劇作品としての仕上がりは見事と言うべきで、『十二夜』の読者はもれなくその見事さを味わっていただけるのではないかと思う。

『お気に召すまま』 シェイクスピア(新潮文庫)

お気に召すまま (新潮文庫)お気に召すまま (新潮文庫)
(1981/07)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:お気に召すまま
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:194

おすすめ度:★★★★




お気に召すまま (岩波文庫 赤 204-7)お気に召すまま (岩波文庫 赤 204-7)
(1974/05/16)
ウィリアム・シェイクスピア

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お気に召すまま−シェイクスピア全集 15  (ちくま文庫)お気に召すまま−シェイクスピア全集 15  (ちくま文庫)
(2007/06)
W. シェイクスピア

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シェイクスピアの喜劇作品の中で、特によく読まれているものの一つがこの『お気に召すまま』だろう。
読みやすさでいえば『夏の夜の夢』や『十二夜』に匹敵する作品であろうし、右に示すように文庫本だけでも数種類の翻訳があるために入手に困ることもまずないはずだ。
シェイクスピアの作品の中でも特に気軽に手にしていただける一冊としてお勧めしたい。

領地を追われた公爵とその娘ロザリンド、さらにロザリンドに一目惚れしたオーランドーは兄に迫害されて、それぞれアーデンの森に逃げ場を求めていた。
不遇な身の男女が行き交うことになったアーデンの森であるが、逆境にあっても若者の恋をする心だけはすたれることはなく・・・。
『お気に召すまま』の筋書きは、どこか『十二夜』のようでもあり、『テンペスト』を思わせる節もある。
総じてきわめてシェイクスピアらしいプロットの戯曲であると言えるのではなかろうか。
モーパン嬢〈上〉 (岩波文庫)モーパン嬢〈上〉 (岩波文庫)
(2006/10/17)
テオフィル ゴーチエ

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モーパン嬢〈下〉 (岩波文庫)モーパン嬢〈下〉 (岩波文庫)
(2006/11/16)
テオフィル ゴーチエ

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『お気に召すまま』の読者にお勧めしたいのが右に挙げるテオフィル・ゴーチエの『モーパン嬢』だ。
『お気に召すまま』を大きなインスピレーション源として書かれたことが明白な小説作品であるため、『お気に召すまま』を読んだことがあるかないかで鑑賞の幅が格段に違ってくることは間違いないように思う。
ゴーチエは日本ではあまり有名な作家ではないかもしれないが、ロマン派の旗手の一人として活躍した彼の著作には見所のあるものが豊富だし、『モーパン嬢』も巧みに構成された優れた小説なので、『お気に召すまま』の読者には一読をお勧めしたい。

シェイクスピアが代表作を量産していた、いわば脂の乗り切った時期に書かれた傑作喜劇『お気に召すまま』。
王道的なシェイクスピアの喜劇作品の一つとして、これからも世界中で長く読まれ続けていくに違いない。

『ジュリアス・シーザー』 シェイクスピア(新潮文庫)

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)ジュリアス・シーザー (新潮文庫)
(1968/03)
シェイクスピア

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書名:ジュリアス・シーザー
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:218

おすすめ度:★★★★★




シェイクスピアの悲劇の中で、古代史に題材を求めた作品の代表作ともいえるのがこの『ジュリアス・シーザー』だ。
歴史上の人物としてあまりにも有名なジュリアス・シーザーことユリウス・カエサルをタイトルロールに据えた本作は、作者であるシェイクスピアの威光も相まって、多くの読者の興味を引き付けるに十分すぎる作品と言えるのではなかろうか。

作品のタイトルこそ『ジュリアス・シーザー』であるが、この作品の実際の中心人物はブルータスとなっている。
個人的感情と国を憂える気持ちとが闘い合った末に、ブルータスは刃を手にすることを決意するのだが・・・。
シェイクスピアが歴史家としてではなく、あくまで舞台用の作品として『ジュリアス・シーザー』を執筆したにせよ、作品自体や解説部分から、読者はシーザーの暗殺にまつわる、一般にあまり知られていない歴史的事実に触れることもできるように思う。
ジュリアス・シーザー (岩波文庫)ジュリアス・シーザー (岩波文庫)
(1980/10/16)
シェイクスピア

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ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)
(2007/01/11)
シェイクスピア

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右に挙げるように、『ジュリアス・シーザー』も数種類の文庫本が入手可能な、シェイクスピアの人気作品の一つである。
訳者が変われば訳文も変わるのはもちろんのことだが、一つの格言とすらなっている「ブルータス、お前もか」の部分をどう訳出するのかを読み比べてみるのも面白いのではなかろうか。

『ジュリアス・シーザー』は、シーザーその人の暗殺を軸に展開する作品となっているため、シーザーの軍人としての、また政治家としての活躍を読めるものと期待していた読者は裏切られることになるかもしれない。
しかし、シーザー暗殺の情景を作り上げ、それを広く世に知らしめたシェイクスピアの功績は、シーザーの偉業に敬服する方々にとっても非常に興味深いものであるに違いない。
そういう意味では、『ジュリアス・シーザー』はシーザーのことを詳しく知っておられる方もそうでない方も大いに楽しめる一冊ではないかと思う。

『アントニーとクレオパトラ』 シェイクスピア(新潮文庫)

アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)
(1972/03)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:アントニーとクレオパトラ
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:228

おすすめ度:★★★★




ジュリアス・シーザー』と並び、シェイクスピアのいわゆる「ローマもの」の悲劇の一つがこの『アントニーとクレオパトラ』だ。
事前に歴史的知識があるほうが鑑賞できる範囲を広げてくれるであろうことは他の史実を題材にした作品と同様であるが、クレオパトラについてその名前ぐらいしか知らない読者の場合は、歴史的背景を知っている方よりも先の展開を読めない分、かえって純粋に劇自体の進行を楽しめるかもしれない。

三頭政治を担う執政官の一人、アントニー。
エジプトの女王クレオパトラの美貌と手管に夢中になっていた彼だったが、二転三転するローマの政情は彼が懶惰な日々を送ることを許さない。
事あるごとにもう一人の執政官であるオクテイヴィアスとの対立が深まっていき、その打開策として、オクテイヴィアスの姉をアントニーの妻にすることが決まるが・・・。
『アントニーとクレオパトラ』はシーザー亡き後のローマ帝国をテーマにした作品なので、『ジュリアス・シーザー』の続編として読んでみるのも面白いように思う。
シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)
(2011/08/09)
W. シェイクスピア

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『アントニーとクレオパトラ』の文庫本は、右に挙げるようにちくま文庫からも出版されている。
新潮文庫版と比べれば若干値は張るが、日本でのシェイクスピア劇の上演にも深く携わっている松岡和子女史の訳文は非常に読みやすく、私自身『アントニーとクレオパトラ』には目を通していないものの、それでも安心してお勧めすることができる。

小説や戯曲はもちろん、画題としてもしばしば取り上げられる美貌の女王クレオパトラだが、それらの中で最も有名な作品がこのシェイクスピアによる『アントニーとクレオパトラ』であることは間違いない。
戯曲というスタイルのため読みやすいので、クレオパトラを描いた作品に関心のある方はぜひ気軽に手にしていただければと思う。

『じゃじゃ馬馴らし』 シェイクスピア(岩波文庫)

じゃじゃ馬馴らし (岩波文庫)じゃじゃ馬馴らし (岩波文庫)
(2008/04/16)
シェイクスピア

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書名:じゃじゃ馬馴らし
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:大場 建治
出版社:岩波書店
ページ数:254

おすすめ度:★★★★




シェイクスピア初期の喜劇作品の一つである『じゃじゃ馬馴らし』。
夏の夜の夢』などと比べればプロット自体の手が込んでいるとは言い難いにせよ、喜劇としてのスピード感と爽快さはむしろ後期作品より勝っていると言えるのではなかろうか。
『じゃじゃ馬馴らし』から劇作家としてのシェイクスピアの偉大さを感じ取ることは少ないかもしれないが、その反面、ストーリー展開の平易さを歓迎される方も少なくないはずだ。

わがままで好き勝手し放題のいわゆる「じゃじゃ馬」娘として知られるキャタリーナ。
彼女の横暴ともいえる気ままさは誰にも抑えることができなかったのだが、キャタリーナの財産に目を付けた一人の男が彼女を馴らすことに挑戦することになり・・・。
「じゃじゃ馬」の威勢のいい言動は自ずと読者を作品中に引き込むだろうし、作品に独特の活気を与えていてたいへん面白い。
数あるシェイクスピアの喜劇作品の中でも、特に幅広い読者層に受け入れられる作品の一つではないかと思う。
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)
(1972/01/29)
シェイクスピア

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じゃじゃ馬馴らし シェイクスピア全集20 (ちくま文庫)じゃじゃ馬馴らし シェイクスピア全集20 (ちくま文庫)
(2010/08/09)
ウィリアム シェイクスピア

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右に示すように、『じゃじゃ馬馴らし』は新潮社や筑摩書房からも文庫化されている。
シェイクスピアの代表作を挙げ連ねる際にはその名が漏れることの珍しくない『じゃじゃ馬馴らし』だが、その出版状況が今日の日本における人気の程を如実に明かしていると言えるはずだ。

シェイクスピアの作品を味読したい方はもちろん、シェイクスピアの作品世界を覗いてみたい方や、単に手軽な読み物を求める読者をも満足させうるのがこの『じゃじゃ馬馴らし』ではないかと思う。
世界に名だたる文豪の作であると構える必要のまったくない非常に読みやすい作品なので、ぜひ気軽に手にしていただきたい。

『から騒ぎ』 シェイクスピア(白水Uブックス)

から騒ぎ  シェイクスピア全集 〔17〕 白水Uブックスから騒ぎ シェイクスピア全集 〔17〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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書名:から騒ぎ
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:171

おすすめ度:★★★★




いかにもシェイクスピアらしい、イタリアを舞台にした喜劇作品の一つがこの『から騒ぎ』である。
たいていの喜劇作品は、筋の愉快さのみならず軽妙な言葉のやり取りが滑稽味を醸し出すものであるが、この『から騒ぎ』においては言葉で遊ぶという性格がきわめて強く、その方面においてはシェイクスピアの代表作と言っても過言ではないはずだ。

『から騒ぎ』は戦を終えた大公の一行が立ち寄った屋敷が舞台。
心地よい友人付き合いの最中に縁談話も持ち上がるという、とても和気あいあいとした雰囲気の中、大公を嫌う彼の弟だけが悪だくみをめぐらせて、結婚を控えた貞淑な乙女に濡れ衣を着せて憂さ晴らしをしようともくろむが・・・。
『から騒ぎ』には機知に富んだ口喧嘩の絶えない若い男女も登場し、どことなく『じゃじゃ馬馴らし』を髣髴とさせるところがある。
また、言い間違いだらけの道化た登場人物にも事欠かず、全般に喜劇としての仕上がりは上々と言えるはずだ。
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)
(1972/01/29)
シェイクスピア

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から騒ぎ シェイクスピア全集 17 (17) (ちくま文庫 し 10-17)から騒ぎ シェイクスピア全集 17 (17) (ちくま文庫 し 10-17)
(2008/10/08)
W. シェイクスピア

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シェイクスピアの喜劇の中ではよく読まれている部類に入る『から騒ぎ』には、現在複数の翻訳がある。
私自身は小田島氏の訳文で読んだので今回はそちらをメインで紹介させていただいているが、原文におけるシェイクスピアの数多くの洒落を日本語に移す際には、単語のチョイスや語感など、誰が訳すのかによって訳文に大いに差の出てくるところでもあろう。
きわめて巧みな言葉遊びの施された小田島氏の翻訳は非常にお勧めだが、『じゃじゃ馬馴らし』をも併録した新潮文庫版が価格的には最も手頃な一冊であることは間違いない。

『から騒ぎ』はその成立過程などをとことん詮索することも可能のようであるが、そこらへんを度外視して作品自体を読むだけでも十分楽しめることだろう。
ぜひ気楽に読んでみていただきたい作品の一つだ。

『ウィンザーの陽気な女房たち』 シェイクスピア(白水Uブックス)

ウィンザーの陽気な女房たち  シェイクスピア全集 〔18〕 白水Uブックスウィンザーの陽気な女房たち シェイクスピア全集 〔18〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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書名:ウィンザーの陽気な女房たち
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:181

おすすめ度:★★★★




作品の舞台に異なる時代の異国を選ぶのを常としているシェイクスピアにしては珍しく、シェイクスピアが戯曲家として活躍していた当時のイギリスを舞台に繰り広げられる喜劇作品がこの『ウィンザーの陽気な女房たち』だ。
ヘンリー四世』に登場し、ひときわ鮮烈な印象を放っていた道化た騎士フォールスタッフを主人公に迎えるという、史劇の中の人物を喜劇にも用いるという操作もまたきわめて珍しく、いろいろな観点から見てシェイクスピアにとっての異色の作品の一つと言えるだろう。
ちなみに、登場人物の重複はあっても直接的なストーリーの連関性はないので、『ヘンリー四世』を読まずして『ウィンザーの陽気な女房たち』だけを読んでもまったく問題はないはずだ。

金策も兼ねて裕福な人妻を口説いてかかる傍若無人な騎士、フォールスタッフ。
そのことに憤ったウィンザーの女房たちは、無礼なフォールスタッフに仕返しをしてやろうと考えをめぐらせ・・・。
横柄で滑稽な、いかにも喜劇的人物であるフォールスタッフ。
そのやられっぷりに読者は痛快さを覚えずにはいられないので、やはりフォールスタッフは喜劇の主役としては格好の存在といえるだろう。
ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)
(2001/05)
ウィリアム シェイクスピア

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右に示すように『ウィンザーの陽気な女房たち』はちくま文庫版も出されているとはいえ、作品自体が今日の日本で多くの読者を獲得しているとは言い難いところがある。
シェイクスピアの傑作としてその名が挙げられることはほぼないのかもしれないが、オペラに造詣の深い方であれば『ウィンザーの陽気な女房たち』はいくらか身近な作品であるはずだし、シェイクスピアの他の喜劇と比べても読みやすさは抜群となっている。
シェイクスピアに興味のある方はぜひフォールスタッフの活躍をお楽しみいただければと思う。

『リチャード二世』 シェイクスピア(白水Uブックス)

シェイクスピア全集 (〔11〕) (白水Uブックス (11))シェイクスピア全集 (〔11〕) (白水Uブックス (11))

書名:リチャード二世
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:217

おすすめ度:★★★☆☆




シェイクスピアの『リチャード二世』は、その表題からも察せられるように歴史劇に分類される作品の一つである。
ヘンリー四世』の第一部と第二部、さらには『ヘンリー五世』と合わせて四部作と呼ばれており、その一作目となる『リチャード二世』は四作品すべてを読み通そうという読者が真っ先に手にすべき作品であるといえる。
シェイクスピアの作品に限らず、これは歴史劇全般に共通して言えることだが、作品の背景となる歴史的事実をあらかじめ知っていなくても戯曲を楽しむことは十分可能なので、シェイクスピアに、もしくはイギリス史に関心のある方であれば気軽に手にしていただいていい一冊だと思う。

資金繰りや処遇などを巡って強引な裁定を下していたリチャード二世は、徐々に貴族たちからの支持を失いつつあった。
そんな中、人民からの信望も厚いボリングブルックが動きを起こして・・・。
登場人物たちにシェイクスピアが言わせる台詞、特に失意の人々に吐かせる台詞は読み応えがあり、シェイクスピアが用いた言い回しをそのまま目にすることのできる原書ではないけれども、それでもなお味読に値するものであるように感じられる。
シェイクスピア全集26 リチャード二世 (ちくま文庫)シェイクスピア全集26 リチャード二世 (ちくま文庫)

連作ということもあって、『リチャード二世』に続く『ヘンリー四世』との内容上のつながりは非常に密接なものがあり、当然ながら同じ登場人物が複数登場することとなる。
シェイクスピアの戯曲を悲劇、喜劇、歴史劇の三つに分類した場合、どちらかというと歴史劇はあまり脚光を浴びない部類であるが、基本的には一作で完結するものが大半を占めるシェイクスピアの作品群において、四部作というのは貴重な「長編」作品であるといえるのではなかろうか。
一般受けはしにくいのかもしれないが、シェイクスピアに強い興味を抱いている方には『リチャード二世』に始まる四部作をお勧めしたいと思う。

『ヘンリー五世』 シェイクスピア(白水Uブックス)

シェイクスピア全集 (〔19〕) (白水Uブックス (19))シェイクスピア全集 (〔19〕) (白水Uブックス (19))

書名:ヘンリー五世
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:227

おすすめ度:★★★★




リチャード二世』、『ヘンリー四世』に続く四部作を締めくくる作品がこの『ヘンリー五世』だ。
日本にまでその業績が知れ渡っているとは言えないヘンリー五世だが、イギリス王家の歴史の中では名君の一人といえるに違いない。
陰謀や裏切りもあるにはあるが影が薄く、全般に実直な雰囲気の中で進行する作品であるため、読後の印象はかなり好ましい部類の作品であるように思う。

放蕩無頼の青年期を過ごしていた王子ハリーも、ヘンリー五世として王位に就くと周囲を驚かせるほどに素行を改めた。
そんな彼の懸念材料といえば、フランスの王位継承権を主張しているにもかかわらず、当然ながらフランス王室はその権利を認めようとしないことだった。
忠臣たちとの議論の果てに、ついにヘンリー五世は決意を固め、海を越えて出兵することになり・・・。
各幕のはじめで説明役が前後の事情を述べてくれるため、読者は必然的に登場人物の台詞に引き付けられるに違いない。

ヘンリー四世』の読者であれば、『ヘンリー四世』において見事な道化っぷりを示したフォールスタッフのその後の運命に接することができるというのも『ヘンリー五世』の面白いところの一つに数えられるだろう。
フォールスタッフの取り巻きたちの活躍も見逃すことができないし、個性の強い軍人たちも読者を楽しませてくれるはずだ。

ネタばれを避けるために詳細には触れないことにするが、その筋書きからして『ヘンリー五世』はシェイクスピアの歴史劇の中でもやや特殊な位置づけになるのではなかろうか。
四部作を締めくくるのみならず、時系列的には『ヘンリー六世』にもつながっていく『ヘンリー五世』。
シェイクスピアの代表的な作品ではないものの、お勧めの歴史劇の一つと言える。
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