『ウィンザーの陽気な女房たち』 シェイクスピア(白水Uブックス)

ウィンザーの陽気な女房たち  シェイクスピア全集 〔18〕 白水Uブックスウィンザーの陽気な女房たち シェイクスピア全集 〔18〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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書名:ウィンザーの陽気な女房たち
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:181

おすすめ度:★★★★




作品の舞台に異なる時代の異国を選ぶのを常としているシェイクスピアにしては珍しく、シェイクスピアが戯曲家として活躍していた当時のイギリスを舞台に繰り広げられる喜劇作品がこの『ウィンザーの陽気な女房たち』だ。
ヘンリー四世』に登場し、ひときわ鮮烈な印象を放っていた道化た騎士フォールスタッフを主人公に迎えるという、史劇の中の人物を喜劇にも用いるという操作もまたきわめて珍しく、いろいろな観点から見てシェイクスピアにとっての異色の作品の一つと言えるだろう。
ちなみに、登場人物の重複はあっても直接的なストーリーの連関性はないので、『ヘンリー四世』を読まずして『ウィンザーの陽気な女房たち』だけを読んでもまったく問題はないはずだ。

金策も兼ねて裕福な人妻を口説いてかかる傍若無人な騎士、フォールスタッフ。
そのことに憤ったウィンザーの女房たちは、無礼なフォールスタッフに仕返しをしてやろうと考えをめぐらせ・・・。
横柄で滑稽な、いかにも喜劇的人物であるフォールスタッフ。
そのやられっぷりに読者は痛快さを覚えずにはいられないので、やはりフォールスタッフは喜劇の主役としては格好の存在といえるだろう。
ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)
(2001/05)
ウィリアム シェイクスピア

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右に示すように『ウィンザーの陽気な女房たち』はちくま文庫版も出されているとはいえ、作品自体が今日の日本で多くの読者を獲得しているとは言い難いところがある。
シェイクスピアの傑作としてその名が挙げられることはほぼないのかもしれないが、オペラに造詣の深い方であれば『ウィンザーの陽気な女房たち』はいくらか身近な作品であるはずだし、シェイクスピアの他の喜劇と比べても読みやすさは抜群となっている。
シェイクスピアに興味のある方はぜひフォールスタッフの活躍をお楽しみいただければと思う。
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『から騒ぎ』 シェイクスピア(白水Uブックス)

から騒ぎ  シェイクスピア全集 〔17〕 白水Uブックスから騒ぎ シェイクスピア全集 〔17〕 白水Uブックス
(1983/01)
ウィリアム・シェイクスピア

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書名:から騒ぎ
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:171

おすすめ度:★★★★




いかにもシェイクスピアらしい、イタリアを舞台にした喜劇作品の一つがこの『から騒ぎ』である。
たいていの喜劇作品は、筋の愉快さのみならず軽妙な言葉のやり取りが滑稽味を醸し出すものであるが、この『から騒ぎ』においては言葉で遊ぶという性格がきわめて強く、その方面においてはシェイクスピアの代表作と言っても過言ではないはずだ。

『から騒ぎ』は戦を終えた大公の一行が立ち寄った屋敷が舞台。
心地よい友人付き合いの最中に縁談話も持ち上がるという、とても和気あいあいとした雰囲気の中、大公を嫌う彼の弟だけが悪だくみをめぐらせて、結婚を控えた貞淑な乙女に濡れ衣を着せて憂さ晴らしをしようともくろむが・・・。
『から騒ぎ』には機知に富んだ口喧嘩の絶えない若い男女も登場し、どことなく『じゃじゃ馬馴らし』を髣髴とさせるところがある。
また、言い間違いだらけの道化た登場人物にも事欠かず、全般に喜劇としての仕上がりは上々と言えるはずだ。
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)
(1972/01/29)
シェイクスピア

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から騒ぎ シェイクスピア全集 17 (17) (ちくま文庫 し 10-17)から騒ぎ シェイクスピア全集 17 (17) (ちくま文庫 し 10-17)
(2008/10/08)
W. シェイクスピア

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シェイクスピアの喜劇の中ではよく読まれている部類に入る『から騒ぎ』には、現在複数の翻訳がある。
私自身は小田島氏の訳文で読んだので今回はそちらをメインで紹介させていただいているが、原文におけるシェイクスピアの数多くの洒落を日本語に移す際には、単語のチョイスや語感など、誰が訳すのかによって訳文に大いに差の出てくるところでもあろう。
きわめて巧みな言葉遊びの施された小田島氏の翻訳は非常にお勧めだが、『じゃじゃ馬馴らし』をも併録した新潮文庫版が価格的には最も手頃な一冊であることは間違いない。

『から騒ぎ』はその成立過程などをとことん詮索することも可能のようであるが、そこらへんを度外視して作品自体を読むだけでも十分楽しめることだろう。
ぜひ気楽に読んでみていただきたい作品の一つだ。

『じゃじゃ馬馴らし』 シェイクスピア(岩波文庫)

じゃじゃ馬馴らし (岩波文庫)じゃじゃ馬馴らし (岩波文庫)
(2008/04/16)
シェイクスピア

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書名:じゃじゃ馬馴らし
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:大場 建治
出版社:岩波書店
ページ数:254

おすすめ度:★★★★




シェイクスピア初期の喜劇作品の一つである『じゃじゃ馬馴らし』。
夏の夜の夢』などと比べればプロット自体の手が込んでいるとは言い難いにせよ、喜劇としてのスピード感と爽快さはむしろ後期作品より勝っていると言えるのではなかろうか。
『じゃじゃ馬馴らし』から劇作家としてのシェイクスピアの偉大さを感じ取ることは少ないかもしれないが、その反面、ストーリー展開の平易さを歓迎される方も少なくないはずだ。

わがままで好き勝手し放題のいわゆる「じゃじゃ馬」娘として知られるキャタリーナ。
彼女の横暴ともいえる気ままさは誰にも抑えることができなかったのだが、キャタリーナの財産に目を付けた一人の男が彼女を馴らすことに挑戦することになり・・・。
「じゃじゃ馬」の威勢のいい言動は自ずと読者を作品中に引き込むだろうし、作品に独特の活気を与えていてたいへん面白い。
数あるシェイクスピアの喜劇作品の中でも、特に幅広い読者層に受け入れられる作品の一つではないかと思う。
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)
(1972/01/29)
シェイクスピア

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じゃじゃ馬馴らし シェイクスピア全集20 (ちくま文庫)じゃじゃ馬馴らし シェイクスピア全集20 (ちくま文庫)
(2010/08/09)
ウィリアム シェイクスピア

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右に示すように、『じゃじゃ馬馴らし』は新潮社や筑摩書房からも文庫化されている。
シェイクスピアの代表作を挙げ連ねる際にはその名が漏れることの珍しくない『じゃじゃ馬馴らし』だが、その出版状況が今日の日本における人気の程を如実に明かしていると言えるはずだ。

シェイクスピアの作品を味読したい方はもちろん、シェイクスピアの作品世界を覗いてみたい方や、単に手軽な読み物を求める読者をも満足させうるのがこの『じゃじゃ馬馴らし』ではないかと思う。
世界に名だたる文豪の作であると構える必要のまったくない非常に読みやすい作品なので、ぜひ気軽に手にしていただきたい。

『マンスフィールド短編集』 マンスフィールド(新潮文庫)

マンスフィールド短編集 (新潮文庫)マンスフィールド短編集 (新潮文庫)
(1957/08)
マンスフィールド

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書名:マンスフィールド短編集
著者:キャサリン・マンスフィールド
訳者:安藤 一郎
出版社:新潮社
ページ数:316

おすすめ度:★★★★




細やかな心理描写が特徴の女流作家、キャサリン・マンスフィールド。
作家として活動していた地が主にイギリスであったため、イギリス文学史の一員に数えられることが多いようだが、実際にはニュージーランド生まれの数少ない国際的に知られた作家の一人である。
短編小説の結末に明確なオチを期待される読者には不向きかもしれないが、チェーホフやヴァージニア・ウルフ風の短編を好まれる方ならば、必ずやマンスフィールドの作品をも楽しめることだろう。

マンスフィールドの作品を紹介するにあたり、それぞれの作品のあらすじを述べてもさほど意味がないように思う。
おそらく彼女の作品の魅力はあらすじとは別のところに存するからだ。
事件性や衝撃性に乏しいため、作品の内容を長く記憶しておくことが難しいということは否定できないかもしれないが、それだけにマンスフィールドの作品は何度読んでも再び味わうことができる作品であるともいえるだろう。
マンスフィールド短篇集 (ちくま文庫)マンスフィールド短篇集 (ちくま文庫)
(2002/10)
キャサリン マンスフィールド

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幸福/園遊会―他17篇 (岩波文庫 赤 256-1)幸福/園遊会―他17篇 (岩波文庫 赤 256-1)
(1969/03/17)
キャサリン・マンスフィールド

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右に示すように、マンスフィールドの短編集は複数の出版社から出されていて、当然ながら収録されている作品もそれぞれ異なっている。
マンスフィールドの代表作としては、"The Garden Party"、"At the Bay"や"Miss Brill "などが挙げられるが、いずれの短編集もそれらを中心にして編まれたほとんど遜色のない選集なので、どれを読んでも大差はないのではなかろうか。
そしてマンスフィールドの作風を気に入られた方は、重複していない作品を読むために二冊目以降を手にしていただければと思う。

夭折の小説家キャサリン・マンスフィールドは、残念ながら作品数自体はそれほど多く残していない。
しかし、その中にはまさに珠玉と呼ぶべき作品が多く含まれていて、読者はマンスフィールドの才能のひらめきを随所に見出すことができるに違いない。

『アントニーとクレオパトラ』 シェイクスピア(新潮文庫)

アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)アントニーとクレオパトラ (新潮文庫)
(1972/03)
ウィリアム シェイクスピア

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書名:アントニーとクレオパトラ
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:228

おすすめ度:★★★★




ジュリアス・シーザー』と並び、シェイクスピアのいわゆる「ローマもの」の悲劇の一つがこの『アントニーとクレオパトラ』だ。
事前に歴史的知識があるほうが鑑賞できる範囲を広げてくれるであろうことは他の史実を題材にした作品と同様であるが、クレオパトラについてその名前ぐらいしか知らない読者の場合は、歴史的背景を知っている方よりも先の展開を読めない分、かえって純粋に劇自体の進行を楽しめるかもしれない。

三頭政治を担う執政官の一人、アントニー。
エジプトの女王クレオパトラの美貌と手管に夢中になっていた彼だったが、二転三転するローマの政情は彼が懶惰な日々を送ることを許さない。
事あるごとにもう一人の執政官であるオクテイヴィアスとの対立が深まっていき、その打開策として、オクテイヴィアスの姉をアントニーの妻にすることが決まるが・・・。
『アントニーとクレオパトラ』はシーザー亡き後のローマ帝国をテーマにした作品なので、『ジュリアス・シーザー』の続編として読んでみるのも面白いように思う。
シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)シェイクスピア全集21 アントニーとクレオパトラ (ちくま文庫)
(2011/08/09)
W. シェイクスピア

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『アントニーとクレオパトラ』の文庫本は、右に挙げるようにちくま文庫からも出版されている。
新潮文庫版と比べれば若干値は張るが、日本でのシェイクスピア劇の上演にも深く携わっている松岡和子女史の訳文は非常に読みやすく、私自身『アントニーとクレオパトラ』には目を通していないものの、それでも安心してお勧めすることができる。

小説や戯曲はもちろん、画題としてもしばしば取り上げられる美貌の女王クレオパトラだが、それらの中で最も有名な作品がこのシェイクスピアによる『アントニーとクレオパトラ』であることは間違いない。
戯曲というスタイルのため読みやすいので、クレオパトラを描いた作品に関心のある方はぜひ気軽に手にしていただければと思う。

『ジュリアス・シーザー』 シェイクスピア(新潮文庫)

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)ジュリアス・シーザー (新潮文庫)
(1968/03)
シェイクスピア

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書名:ジュリアス・シーザー
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:福田 恒存
出版社:新潮社
ページ数:218

おすすめ度:★★★★★




シェイクスピアの悲劇の中で、古代史に題材を求めた作品の代表作ともいえるのがこの『ジュリアス・シーザー』だ。
歴史上の人物としてあまりにも有名なジュリアス・シーザーことユリウス・カエサルをタイトルロールに据えた本作は、作者であるシェイクスピアの威光も相まって、多くの読者の興味を引き付けるに十分すぎる作品と言えるのではなかろうか。

作品のタイトルこそ『ジュリアス・シーザー』であるが、この作品の実際の中心人物はブルータスとなっている。
個人的感情と国を憂える気持ちとが闘い合った末に、ブルータスは刃を手にすることを決意するのだが・・・。
シェイクスピアが歴史家としてではなく、あくまで舞台用の作品として『ジュリアス・シーザー』を執筆したにせよ、作品自体や解説部分から、読者はシーザーの暗殺にまつわる、一般にあまり知られていない歴史的事実に触れることもできるように思う。
ジュリアス・シーザー (岩波文庫)ジュリアス・シーザー (岩波文庫)
(1980/10/16)
シェイクスピア

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ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)
(2007/01/11)
シェイクスピア

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右に挙げるように、『ジュリアス・シーザー』も数種類の文庫本が入手可能な、シェイクスピアの人気作品の一つである。
訳者が変われば訳文も変わるのはもちろんのことだが、一つの格言とすらなっている「ブルータス、お前もか」の部分をどう訳出するのかを読み比べてみるのも面白いのではなかろうか。

『ジュリアス・シーザー』は、シーザーその人の暗殺を軸に展開する作品となっているため、シーザーの軍人としての、また政治家としての活躍を読めるものと期待していた読者は裏切られることになるかもしれない。
しかし、シーザー暗殺の情景を作り上げ、それを広く世に知らしめたシェイクスピアの功績は、シーザーの偉業に敬服する方々にとっても非常に興味深いものであるに違いない。
そういう意味では、『ジュリアス・シーザー』はシーザーのことを詳しく知っておられる方もそうでない方も大いに楽しめる一冊ではないかと思う。
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