『シャミラ』 フィールディング(朝日出版社)

シャミラシャミラ

書名:シャミラ
著者:ヘンリー・フィールディング
訳者:能口 盾彦
出版社:朝日出版社
ページ数:99

おすすめ度:★★★☆☆




トム・ジョウンズ』で知られるフィールディングの初期作品がこの『シャミラ』だ。
一世を風靡したリチャードソンの『パミラ』をパロディ化した書簡体の短編小説となっていることから、『パミラ』の内容を知っているほうがより一層楽しめるではあろうが、本書の場合は訳注が細かく補ってくれるので、必ずしも『パミラ』を読んでおく必要はないと言えるように思う。

若く美しい使用人であるシャミラは、ご主人であるブービー氏から常々言い寄られている。
彼女の思わせぶりな素振りに自らの欲望を焚き付けられて見境のなくなったブービー氏は、強姦まがいのことまでやってのけるほどであり・・・。
シャミラによる財産狙いの打算的な結婚に至るまでの裏事情が見事に描き出されていて、全般にストーリー性は強めと言えるだろう。
シャミラの愛人が牧師であるというのも、本書の反社会的な性格を決定づける設定の一つと思われる。

確固たる原作の存在するパロディ作品ということもあり、『シャミラ』のあらすじにフィールディングの独創性はあまり期待できないだろうが、その反面、フィールディングのユーモアセンスが本書の見どころの最たるものとなっている。
同じイギリス文学でも、ビクトリア時代のユーモアと違って、性的な事柄への言及が多く見られるのも特徴と言えるかもしれない。

いろいろな事情が予想されはするが、フィールディングは生前、本書『シャミラ』が自作であることを認めなかったらしい。
確かに自作であることを自負できるような名作とは言い難い作品ではあるが、『パミラ』に対する痛烈な皮肉として興味深いものであることは間違いない。
リチャードソンの愛読者に向いているとは思わないが、フィールディングに関心のある方にはお勧めできる作品だ。
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『くるみ割り人形』 デュマ(東京音楽社)

くるみ割り人形くるみ割り人形

書名:くるみ割り人形
著者:アレクサンドル・デュマ
訳者:小倉 重夫
出版社:東京音楽社
ページ数:197

おすすめ度:★★★★




デュマ父子の合作として出版された童話がこの『くるみ割り人形』である。
あのあまりに有名なチャイコフスキーのバレエの原作になったとされているにもかかわらず、デュマが『くるみ割り人形』を出版していたということは実はそれほど知られていないのではなかろうか。

ドイツはニュルンベルクでのクリスマスのこと、子供たちへのプレゼントの中には一風変わったくるみ割り人形が交じっていた。
家の人々が寝静まった頃、棚にしまわれたくるみ割り人形めがけてネズミの大群が押し寄せてくるのだったが、勇敢なくるみ割り人形は、仲間の人形たちと応戦態勢を整えだし・・・。
言うまでもないことだろうが、『くるみ割り人形』は童話としての出来栄えが秀逸で、メルヘンチックでありつつミステリアスでもある展開ゆえに、読者はついつい物語に釣り込まれてしまう。
また、本書に用いられた豊富な挿絵は、子供はもちろん、大人の目をも存分に楽しませてくれることだろう。

デュマ父子の書いた『くるみ割り人形』を語るとなると、『くるみ割り人形』の真の原作者であるホフマンの名を出さずに済ますわけにはいかない。
著作権という概念の弱かった時代のことなので、盗作という意識はほとんどなかったのかもしれないし、何事も強気で押し通すデュマ・ペールのことだけに、盗作だとわかっていてもそんなことはまるで気にならなかった可能性もある。
何にせよ、デュマの書いた『くるみ割り人形』が優れた作品であるということだけは確かなところだ。
英国ロイヤル・バレエ団 「くるみ割り人形」(全2幕 ライト版) [DVD]英国ロイヤル・バレエ団 「くるみ割り人形」(全2幕 ライト版) [DVD]

すでにチャイコフスキー作曲のバレエを見てから本書を手にされた方も少なくないだろう。
もしバレエを見るより先に本書を手にした方がいれば、併せてバレエを観賞されることをお勧めしたい。
世界的に有名なバレエ作品だけあって、右に挙げたようなDVDであれば容易に入手可能だ。
原作とバレエの相乗効果で、双方の面白さが何倍にも膨れ上がるであろうことは疑いなしだ。
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