『三十女』 バルザック(水声社)

三十女 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)三十女 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)

書名:三十女 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者: 芳川 泰久、佐野 栄一
出版社:水声社
ページ数:340

おすすめ度:★★★☆☆




バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集の第五巻として刊行されたのが本書『三十女』である。
表題作である『三十女』と同じく、人間喜劇の「私生活情景」から『家庭の平和』も訳出されていて、いずれも選集のテーマ通りに結婚生活における愛の葛藤を扱った作品となっている。

美貌の青年貴族デグルモンに恋をした美しい乙女のジュリー。
デグルモンの無能を見抜いていた父親の反対を押し切ってまで結婚した彼女は、麗しい結婚生活を期待していたのだが・・・。
『三十女』には、バルザック得意の分析的思弁とでもいおうか、議論めいたものが延々と続いている箇所があったりして、物語のスピード感のなさにうんざりする読者もいるかもしれない。
また、6章から成る構成に一貫性がなく、読者がほぼ確実にちぐはぐだという印象を受けるというのも『三十女』の特徴と言えるだろう。
『三十女』の創作過程は解説に詳しく記されているが、それを読めば読者は自身の抱いた違和感についていろいろと納得させられるに違いない。

一方、『家庭の平和』のほうはというと、こちらは確固たる話の筋を持った、まとまりある短編小説である。
華やかな舞踏会で、誰もその名を知らない美人が人目のつかないところにひっそりとたたずんでいる。
彼女の存在に色男二人が目を付け、近付こうと画策するのだったが・・・。
素性の知れない美人を包み込むミステリアスな雰囲気が、登場人物のみならず、読者の好奇心をも強く引き付けること疑いなしの短編作品だ。

本書収録作品のうち、『家庭の平和』はバルザックらしいよくできた作品であるが、本書のメインである『三十女』の完成度はというと、お世辞にも高いとは言えない。
本書の場合は誤植もけっこうな頻度で目にすることから、残念ながらあまり高くは評価できない本となっている。
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