『ボルジア家風雲録』 デュマ(イースト・プレス)

ボルジア家風雲録 (上) 教皇一族の野望ボルジア家風雲録 (上) 教皇一族の野望ボルジア家風雲録 (下) 智将チェーザレの激闘ボルジア家風雲録 (下) 智将チェーザレの激闘

書名:ボルジア家風雲録
著者:アレクサンドル・デュマ
訳者:吉田良子
出版社:イースト・プレス
ページ数:208(上)、192(下)

おすすめ度:★★★★




デュマ初期の小説作品の一つがこの『ボルジア家風雲録』である。
原書はもっと大部の作品集なのだが、昔からなぜかこのボルジア家のパートだけが注目を集めていて、ここだけ抜粋されて訳出されるという運命にあるらしい。
他の部分を読んだことがないのでその抜粋の妥当性については判断がつかないのだが、翻訳出版されている『ボルジア家風雲録』に限って言えば、読み応え十分の歴史小説であると断言することができる。

『ボルジア家風雲録』は、権謀術数を駆使して自らの野心を実現していくアレクサンドル六世とその息子チェーザレ・ボルジアという、ボルジア家の中でも最も悪名高い二人の人物を中心に描かれている。
日本でいうところの戦国時代のように、イタリア国内では群雄割拠、さらにフランス、ドイツ、スペイン、トルコといった大国との油断ならない接点も多く、ローマの政治は綱渡りである。
そんな中、アレクサンドル六世とチェーザレ・ボルジアは、持ちうる宗教的権力や世俗的権力から最大限の利益を引き出すべく、同盟と裏切りを繰り返していく。
本書の読者は、なぜボルジア家の面々の評判が今日に至るまでこうも悪いのか、嫌でも納得させられることだろう。

『ボルジア家風雲録』は、歴史書ではなく、あくまでデュマによる歴史小説なので、明らかに史実と異なる記述や人物設定も散見するようだ。
これはデュマの認識誤りではなく、ドラマとしての効果を狙った演出の一種とみなされるべきものであり、この紛らわしい改変に対する賛否両論はあるにせよ、デュマの歴史小説とはそもそもそういうものとして読むしかないような気がする。
そういう意味では、ボルジア家の歴史に興味のある方には不向きな作品と言えるかもしれない。

デュマの小説といえば、その読みやすさとスピード感が売りであるが、『ボルジア家風雲録』においてもそれらは健在である。
その点、文豪と称されるデュマの作品には、チェーザレの口約束なんかとは訳が違い、裏切られることが少ないので安心だ。
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