『処女地』 ツルゲーネフ(岩波文庫)

処女地 (岩波文庫)処女地 (岩波文庫)
(1974/03/18)
ツルゲーネフ

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書名:処女地
著者:ツルゲーネフ
訳者:湯浅 芳子
出版社:岩波書店
ページ数:484

おすすめ度:★★★☆☆




ツルゲーネフには政治的・社会的なテーマを扱った作品が数点あるが、この『処女地』はそのうちの一冊。
社会をよくしようとナロードニキ運動に参加する若者たちを描いた作品で、当時のロシア社会からすれば問題作の一つであったことだろう。
ツルゲーネフの政治・社会に対する関心の高さを窺える作品である。

ツァーリによる絶対権力が健在の中で行われる運動だけあって、ナロードニキ運動はどこか謎めき、その雰囲気を一語で表すならば、疑心暗鬼という語こそがふさわしい。
あくまで作品に漂う雰囲気だけに限って言うと、ドストエフスキーの『悪霊』に似たところがないわけではない。
身の危険を顧みずに自らの理想の実現のために行動する青年たちは、その成果が乏しかろうとも、強く読者の胸を打つ。
自らの信念に従い行動する若者たちの運命、私はこの点を最大の読みどころだと思うのだがいかがだろうか。

ツルゲーネフの思想は、同じく貴族出身のトルストイと比較してみると非常に面白いはずだ。
ゴーゴリやドストエフスキーなどとは違い、どちらも生活に困る身分ではなかったにもかかわらず、社会の改良に対する関心が非常に高いのだ。
当然ながら、彼らの考える社会の改良によって境遇が改善されるのは社会の下層に位置する民衆である。
貧しい人々のために何かせずにはいられないツルゲーネフにトルストイ、彼らのことを考えると、私はフランス革命期にも民衆の味方をする貴族が少なからず存在したことを思い出さずにはいられない。
仮にも貴族を名乗るからには、こういった心情面での高貴さを持っていてしかるべきなのだろう。

現在新品での入手は非常に困難のようだが、ロシア文学やツルゲーネフに興味のある人なら『処女地』は必ずや楽しめる作品である。
初恋』とは一風変わったツルゲーネフを知りたい方にはお勧めだ。
『処女地』を気に入られた読者は、作者の国も時代も変わるが、ロシア人革命家を描いたコンラッドの『西欧人の眼に』も必ずや楽しめることと思うので、こちらも合わせてお勧めしたい。
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