『牧歌/農耕詩』 ウェルギリウス(京都大学学術出版会)

牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)
(2004/05)
ウェルギリウス

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書名:牧歌/農耕詩
著者:ウェルギリウス
訳者:小川 正広
出版社:京都大学学術出版会
ページ数:279

おすすめ度:★★☆☆☆




ウェルギリウスの『牧歌』と『農耕詩』を一冊にまとめたのがこの本である。
ラテン詩の雰囲気を感じ取ることのできる作品だが、『アエネーイス』と比べると格段にストーリー性に乏しく、退屈に思う人も少なくないだろう。
あまり一般受けする作品ではないと思うので、ラテン文学や、『アエネーイス』や『神曲』でウェルギリウスに興味を持った人向けである。

『牧歌』は、短い十の歌を集めたもの。
当時の世相を反映している詩行も多いが、脚注が充実しているので理解に苦しむ部分はまったくないと言ってもいいほどだ。
テオクリトスに始まる「牧歌」というスタイルは、ウェルギリウスを経て、後のタッソの牧歌劇『アミンタ』へと受け継がれていくだろう。

『農耕詩』は、ヘシオドスの『仕事と日』につながる作品として読むことができる。
畑作や葡萄の栽培、家畜の世話から養蜂まで、農村で必要な知識を網羅した詩作品となっている。
当時の世界観・宇宙観や自然学の未発達なさまなどを読み取ることができて興味深い反面、ほとんどの部分が実践を前提にした記述なので、後世でいうところの田園小説には程遠く、『アエネーイス』のような物語詩を期待すると大いに失望するに違いない。

作品数が少ないということもあり、たとえ翻訳であっても『アエネーイス』と『牧歌/農耕詩』を読めば、ラテン文学最高の詩人と評されるウェルギリウスの作品がどのようなものか、そのだいたいの輪郭をつかむことができる。
しかし、この『牧歌/農耕詩』に関して言えば、わかりやすい解説でウェルギリウスに対する理解を深めることができるという利点こそあるものの、必ずしもすべての人に楽しい読書時間を提供することはないだろう。
私のようにラテン語での鑑賞ができない読者には、あくまでギリシアからルネサンスをつなぐ鍵として読むことをお勧めしたい。
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