『エルサレム解放』 タッソ(岩波文庫)

タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)
(2010/04/17)
トルクァート・タッソ

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書名:エルサレム解放
著者:トルクァート・タッソ
訳者:鷲平 京子
出版社:岩波書店
ページ数:560

おすすめ度:★★★★




タッソの代表作である『エルサレム解放』は、そのままイタリア・ルネサンス文学の代表作でもある。
18、19世紀にはこの作品に言及している作家が数多く存在したし、絵画やオペラなどにも数々のテーマを提供してきている古典中の古典の一つだ。
日本での知名度はいまひとつだが、それというのもろくに翻訳・紹介されてこなかったからだろう。
文庫版での出版を機に、『イリアス』や『狂えるオルランド』に連なる英雄叙事詩の傑作として多くの読者を獲得することを期待したい。

ストーリーの本筋は、十字軍の第一次遠征である。
当然のことながら、『エルサレム解放』との表題からも予想できるとおり、やはり圧倒的にキリスト教的な視点で描かれているが、宗教臭くてつまらないという印象を受けることはなく、神に仕える騎士たちとそれを迎え撃つイスラム戦士の攻防は非常に読み応えがある。
とはいえ、本書はオリジナルの『エルサレム解放』を三分の一程度に圧縮した抄訳なので、ひょっとすると退屈な部分を省いただけなのかもしれないが・・・。
アンニーバレ・カラッチ『リナルドとアルミーダ』
表紙にはアンニバーレ・カラッチの『リナルドとアルミーダ』が使用されている。
奥の茂みから兜をかぶった兵士が仲睦まじい男女を覗き見しているという構図は、どこか『スザンナの入浴』を思わせる。
余談ながら、昨年、非常に運良くこの絵が来日していたようで、私は京都でそれを見ることができた。
実物は幅数メートルの大作なので、それを文庫本の表紙にしてしまうとカラッチの迫力が大いにそがれてしまうのがいささか残念にも思われるが、作品の雰囲気を伝える絵画としては素晴らしい選択だろう。

これまで翻訳のなかった『エルサレム解放』が、手にしやすい文庫版で出版されたというのは非常に喜ばしいことだ。
しかし、ただ一つ難を言うならば、それが抄訳だということ。
あらすじの説明は付されているので話の筋がわからなくなることはないが、古典的名作だけにできれば全訳で読みたかった、というのが素直な感想だ。
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