『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』 ボルヘス(岩波書店)

ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
(2000/09/26)
ホルヘ・ルイス ボルヘス、アドルフォ ビオイ=カサーレス 他

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書名:ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス
訳者:木村 栄一
出版社:岩波書店
ページ数:291

おすすめ度:★★★☆☆




ボルヘスとビオイ=カサーレスとが、オノリオ・ブストス・ドメックとのペンネームで執筆したのがこの『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』だ。
迷宮の作家であるボルヘスは、推理小説風の短編作品も残しているし、ポーやチェスタトンなどのミステリー作家に対する関心も高かったから、ボルヘスが推理小説に手を染めるのはある程度当然の成り行きだったのかもしれない。
推理小説としての完成度はそれほどでもないように思うが、六つの話がそれぞれ非常にコンパクトでたいへん読みやすいので、ボルヘスらしさこそないものの、ボルヘスの名を冠する本の中では最も気軽に手にすることができるものの一つだろう。

ドン・イシドロ・パロディは、無実の身ながら有罪を宣告され、そしてその有罪になるまでの経緯の滑稽さはなかなか傑作なのだが、いずれにしても、彼は監獄生活を送る囚人である。
そんな彼の独房に事件の関係者が相談に来るというのが本作のパターンだ。
そういうわけで、パロディはホームズのように入念に現場を探るタイプではなく、『モルグ街の殺人』のデュパンのように第三者からの伝聞によって推論するという、いわゆる「書斎の人」タイプの名探偵だ。

この『ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』、文章のほとんどが事件に関する描写のみに絞り込まれており、ストーリーがきわめて簡潔にまとまっているのは長所でもあるが、同時に短所でもあるように思う。
パロディのもとに相談に来る人々は戯画化され、一定の性格が窺えるのだが、肝心のパロディの方はというと性格づけが明らかに物足りなく、主人公としての存在感や風格に欠けていて、パロディのファンになる読者は一人として現れないのではないかと考えたくなるほどだ。

長いものでも60ページ程度と、それぞれの事件がとても簡潔に語られ、軽い読み物である反面、ミステリーとしては少々物足りない印象も受ける。
推理小説をお探しの方にというよりは、ボルヘスやビオイ=カサーレスの著作に興味のある人向けの本だろう。
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