『砂の本』 ボルヘス(集英社文庫)

砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
(2011/06/28)
ホルへ・ルイス・ボルヘス

商品詳細を見る

書名:砂の本
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:篠田 一士
出版社:集英社
ページ数:288

おすすめ度:★★★★★




ボルヘスの短編集としては後期の作品である『砂の本』。
執筆時点でボルヘスは七十代も半ばに達していたはずであるが、創作力の衰えは微塵も感じられず、まさに作家人生の集大成とも呼ぶべき傑作である。

ボルヘスの短編集に見られる作風の変遷には興味深いものがある。
初期の作品である『伝奇集』と『エル・アレフ』は、作風も似通っていて、二冊を続けて読んでもほとんど違和感がない。
そのボルヘスが、『ブロディーの報告書』では、直截的でリアリスティックな作品群を書き上げたものだから、中には期待外れに感じた読者もいたことだろう。
そしてその五年後に発表されたものがこの『砂の本』である。
こちらは一般の読者が思い描くボルヘスのイメージ、前衛的な初期の作風に回帰したかのような晩年の作品集で、ボルヘスの描き出す迷宮を期待する読者を裏切ることはないだろう。
ラテンアメリカ/集英社ギャラリー「世界の文学」〈19〉ラテンアメリカ/集英社ギャラリー「世界の文学」〈19〉
(1990/02/20)
川村 二郎、 他

商品詳細を見る

右は「集英社ギャラリー」のラテンアメリカ編で、ボルヘスの作品では『伝奇集』、『エル・アレフ』、『砂の本』を収録している。
一冊でこれだけのボルヘスの短編集を収めているものはおそらく他に例がないし、さらにこの本にはアストゥリアスの『大統領閣下』やガルシア=マルケスの『族長の秋』といった中南米を代表する作家の作品も併録されているという圧倒的なボリュームが非常に魅力なのだが、1300ページ超えの分厚さは扱いに困ることがあるかもしれない。

ボルヘスの短編作品を堪能したい読者は、上記の「集英社ギャラリー」が選抜したように、『伝奇集』、『エル・アレフ』、『砂の本』、この三つは必読である。
それらの中にはエッセイ風の短編も含まれているが、ボルヘスの描く世界に魅了された読者は、『続審問』や『七つの夜』のような、ボルヘスが多用するモチーフをより深く掘り下げたエッセイや講演集、これらも必ずや楽しんでいただけることと思う。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク