『七つの夜』 ボルヘス(岩波文庫)

七つの夜 (岩波文庫)七つの夜 (岩波文庫)
(2011/05/18)
J.L.ボルヘス

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書名:七つの夜
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:野谷 文昭
出版社:岩波書店
ページ数:256

おすすめ度:★★★★




晩年のボルヘスが七夜にわたり行った講演を一冊の本にまとめたものがこの『七つの夜』である。
ボルヘスの愛読書である『千一夜物語』をテーマにした夜もあるのだが、一夜ごとに一つのテーマを決めて語るというこの構成自体が、故意なのか偶然なのか、すでに『千一夜物語』風になっている。
扱っているのはボルヘスが長年心中で温めてきたテーマばかりであり、本書の編集途中のボルヘスに「私の遺言書になりそうだ」と言わしめたそうだ。
語り口調で訳されているためにたいへん読みやすく、一見難しそうに思えるテーマも肩肘張らずに読めることだろう。

『七つの夜』は、『千一夜物語』の他に、『神曲』、「悪夢」、「詩」、「仏教」、「カバラ」、「盲目」をテーマにした講演を収めている。
宗教的・神秘的なものに強い関心を示し続けたボルヘスだけに、彼の口から語られる「仏教」や「カバラ」の話は非常に興味深い。
また、徐々に光を失っていったボルヘスが、ホメロスやミルトンを引き合いに出しつつ論じる「盲目」についての話も、一味違う感動を与えてくれることだろう。

ボルヘスが高く評価してやまなかった『千一夜物語』と『神曲』は、ボルヘスの中で確固たる地位を占めている。
これら二作品については、『続審問』などの他の作品でもしばしば言及されてきているし、『神曲』に至っては『ボルヘスの「神曲」講義』という単行本まで出しているほどだ。
そのあまりの長大さが敬遠される原因でもあり、同時に魅力の源でもある『千一夜物語』はともかくとしても、『神曲』をまだお読みでない方は、ボルヘスに勧められたと思ってぜひ一読を。

作家としてのボルヘスの魅力だけではなく、老境に差し掛かったボルヘスの人間性の美しさも垣間見ることのできる『七つの夜』。
枕元にでも置いておき、七晩に分けて読んでみてはいかがだろうか。
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