『ホーソーン短篇小説集』 ホーソーン(岩波文庫)

ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)
(1993/07/16)
ホーソーン

商品詳細を見る

書名:ホーソーン短篇小説集
著者:ナサニエル・ホーソーン
訳者:坂下 昇
出版社:岩波書店
ページ数:363

おすすめ度:★★★★




『緋文字』の作者として有名なホーソーンだが、彼は同時に多くの優れた短編小説を残した作家でもあった。
そんな彼の、『緋文字』以前の短編作品12点を収めたのがこの『ホーソーン短篇小説集』である。
ゴシック風のものあり、メルヘン風のものありと、幅広い作風の作品が集められていると感じる一方で、ピューリタン、悪魔や魔女、罪などといった、非常にホーソーンらしいテーマが散見する短編集でもある。

育った環境も大きな要因の一つであろうが、ホーソーンの作品はその多くが宗教的なイメージに彩られている。
牧師や魔女、罪の意識といったテーマは定番中の定番であり、読者はこの『ホーソーン短篇小説集』においてもそれらに頻繁に出くわすことだろう。
後に『緋文字』を書いた作者の手になる短編だと思えば、いかにも納得の内容と感じられるに違いない。

最大のお勧めは、『ウェークフィールド』というボルヘスが激賞してやまなかった作品で、作風でいうとポーやカフカに近い。
他の収録作品と比べると、舞台がロンドンであるというだけですでにホーソーンの作品としてはやや異色の感があるのだが、事実、全体を通して他の作品との類似性がきわめて弱い。
18、19世紀のアメリカ社会を反映していない分、それだけより普遍的な人間心理に迫った名作と言えるであろうか。

表紙には、ホーソーンの短編小説のうち、「物語性に優れた12篇を厳選」したとある。
すべてがすべて傑作であるとは言いがたいものの、筋の巧みさの感じられる作品もあれば、建国間もない頃のアメリカの閉鎖的で不寛容な社会を反映しているものもあったりと、ホーソーンという作家とその時代を知る上では格好の短編集となっている。
手軽に読める文庫版でもあることだし、『緋文字』を読んだ方であれば、一度手にしてみても悪くない本だろうと思う。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク