『永遠の薔薇・鉄の貨幣』 ボルヘス(国書刊行会)

永遠の薔薇,鉄の貨幣 (文学の冒険シリーズ)永遠の薔薇,鉄の貨幣 (文学の冒険シリーズ)
(1989/08)
ホルヘ・ルイス・ボルヘス

商品詳細を見る

書名:永遠の薔薇・鉄の貨幣
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:鼓直、清水憲男、篠沢真理
出版社:国書刊行会
ページ数:197

おすすめ度:★★★★




ボルヘス後期の詩集である『永遠の薔薇』と『鉄の貨幣』を一冊にまとめたものが本書である。
発表年が相次いでいるので作風は類似している印象を受けるが、いずれも非常にボルヘスらしさが出ている詩集だ。
ボルヘスの詩集を初めて読む人にもとっつきやすい作品であるように思う。

いずれの詩集においても、詩、鏡、盲目など、ボルヘスおなじみのテーマを用いた作品の中に、アルゼンチン人としてのアイデンティティーを表すかのようなラテンアメリカを舞台にしたもの、アングロ・サクソンやヴァイキングを題材にしたものが混ざり合い、そこにオリエンタルな雰囲気の作品も織り交ぜられている。
この本に限ったことではないが、『永遠の薔薇・鉄の貨幣』はボルヘスの世界の幅広さを窺い知ることができる作品であると言えるだろう。
ボルヘスの助手で、後に妻となるマリア・コダマと世界を旅した記録である『アトラス―迷宮のボルヘス』と合わせて読めば、ボルヘスの依拠する世界、彼が作り上げた迷宮世界のほうではなく現実に存在する世界のことだが、そのイメージをより膨らませることができるはずだ。
とはいえ、ボルヘス本人はその現実世界をも「夢」であると言うかもしれないが・・・。

『永遠の薔薇』と『鉄の貨幣』は、いずれも甲乙付けがたい二作品であるが、強いて言うならば『鉄の貨幣』のほうが南米色が強いだろうか。
邦訳の出ている南米の作家はそう多くはないので、ラテンアメリカをテーマにした作品は、ボルヘスをあまり知らない読者には新鮮なものと感じられることだろう。

『永遠の薔薇・鉄の貨幣』は、国書刊行会から「文学の冒険シリーズ」の一冊として出されたものだ。
「冒険」というニュアンスからすれば、ボルヘスの初期の作品のほうがシリーズ入りするにふさわしかったような気がしないでもないが、二つの詩集を収録しているということもあり、読み応えは十分の本に仕上がっている。
中古でしか手に入らないのが現状であるが、ボルヘスファンには自信を持ってお勧めできる本だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク