『ブストス=ドメックのクロニクル』 ボルヘス(国書刊行会)

ブストス=ドメックのクロニクルブストス=ドメックのクロニクル
(2001/03)
ホルヘ・ルイス ボルヘス、アドルフォ ビオイ‐カサーレス 他

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書名:ブストス=ドメックのクロニクル
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス
訳者:斎藤 博士
出版社:国書刊行会
ページ数:213

おすすめ度:★★★☆☆




ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件』で共同制作を行ったボルヘスとビオイ=カサーレスの二人だが、そんな彼らの用いたペンネームが、他ならぬ「オノリオ・ブストス=ドメック」であった。
そして今回は書名にしてからが『ブストス=ドメックのクロニクル』であるが、作風や内容は探偵小説の『ドン・イシドロ・パロディ』とはまるで異なっていて、論理的に組み立てられた一種の知的遊戯のような小論の連続から成っている作品である。
いずれの小論もストーリー性が弱く、一般受けしにくいものかもしれないが、ボルへスらしさが随所に感じられるため、ボルヘスを好きな人なら面白く読めるはずだ。

『ブストス=ドメックのクロニクル』は、様々な分野で行われた非現実的な試みを現実的な装いのもとに、あたかも新聞のコラムかのような文体で描き出した20の小論から構成されている。
取り扱うテーマは多岐にわたり、詩、散文、彫刻、絵画、建築、演劇と、芸術分野の大半を網羅しているし、さらにはファッションから料理にまで至るという射程の広さだ。
ユーモアや風刺にも満ちており、堅苦しさはあまり感じられない文章なので、テーマの深刻さのわりにはすらすら読めることだろう。
とはいえ、それはボルヘスの書くものすべてに共通することでもあるのだが。

それぞれの分野でその極意に到達しようと試行錯誤を繰り返すあまり、常人の理解を超えた地点にまで行き着いてしまうという筋書きは、芸術家小説の王道的なストーリー展開の一つでもある。
関連作品をお探しの方には、芸術家小説の代表作であるバルザックの『知られざる傑作』をお勧めしたい。
こちらはブストス=ドメックの小論とはまた一味違う傑作短編だ。

ページによってインクに時折濃淡が見られるのは少々残念であるが、解説は充実しているし、ボルヘスの他の作品へのつながりも感じられる。
創作と現実との境界線があやふやな『ブストス=ドメックのクロニクル』に導かれ、その境界線上をふらついてみるのも悪くないのではなかろうか。
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