『詩という仕事について』 ボルヘス(岩波文庫)

詩という仕事について (岩波文庫)詩という仕事について (岩波文庫)
(2011/06/17)
J.L.ボルヘス

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書名:詩という仕事について
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:鼓 直
出版社:岩波書店
ページ数:231

おすすめ度:★★★★




かつて岩波書店から出されていた『ボルヘス、文学を語る 詩的なるものをめぐって』、それを文庫化したのがこの『詩という仕事について』である。
詩人でもあるボルヘスが詩について語っているわけなので、最後の章を除き自作の詩についての言及はほぼないとはいえ、その内容にはたいへん興味深いものがある。
六十代も後半になって行った講義を活字にしたものであるだけに、長年詩人として活躍してきたボルヘスが最終的に辿り着いた詩論の総括とみなしていいように思う。
ボルヘスにはあまり関心がなくとも、ボルヘスの詩は読んだことがなくとも、それでも十分面白く読める本なので、幅広い読者にお勧めできる一冊だ。

『詩という仕事について』は、メタファー、語り、翻訳の可能性などのテーマに関して行われた、六回にわたるボルヘスの講義の記録だ。
いずれの論旨においても、豊富な実例を交えて解説してくれるので、ボルヘスの言うことにはいつもながらとても説得力がある。
現代の日本人にとってはあまりなじみのない詩人も多々引用されているが、ボルヘスの途方もない博識や、彼がアルゼンチン人であるという背景を思えば、読者が未知の領域に言及されるのはやむをえないことだろう。

個人的に最も楽しめたのは「言葉の調べと翻訳」の章で、詩の翻訳の可能性もしくは不可能性を、また原文と訳文の文学的価値の優劣について論じている。
その章においてボルヘスは、そもそも詩は翻訳できるのかできないのかという単純な二元論を超えた新しい視点を提供してくれている。
翻訳された詩をすなわち質の劣ったものであると考える姿勢に修正を迫る内容なのだが、改めて翻訳者の詩的才能の重要さに気付かされもする。

講義録ということで、口語で翻訳されているためにとても読みやすい『詩という仕事について』。
文学の一ジャンルとしての詩に、欧米文学の礎とも言うべき詩に興味のある方を楽しませる、非常に示唆に富んだ本であるといえるだろう。
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