『エルナニ』 ユーゴー(岩波文庫)

エルナニ (岩波文庫)エルナニ (岩波文庫)
(2009/07/16)
ユゴー

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書名:エルナニ
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:稲垣 直樹
出版社:岩波書店
ページ数:308

おすすめ度:★★★★




ユーゴーの戯曲が全集以外で出版されることはあまり多くないのが現状だが、数少ない一つがこの『エルナニ』だ。
二十代後半の頃の作と、ユーゴーがまだ若いときのものだが、『エルナニ』は彼の名を世間に知らしめた出世作でもある。
制作年代こそかけ離れているが、作品から読み取ることのできる思想にユーゴーの代表作である『レ・ミゼラブル』へと通ずるところの垣間見られる作品なので、ユーゴーに関心のある方には特にお勧めだ。

『エルナニ』の舞台はスペインである。
山賊となり、過去になされた非道に対して復讐心を燃やすエルナニだが、ついに敵を追い詰める日がやってくる・・・。
血と短剣に彩られたかのような主人公だが、そんなエルナニには殺伐たるスペインの野がよく似合う。
主人公の剛毅さは、それだけで作品を面白くするものだが、『エルナニ』もその例外ではない。
男気あふれるエルナニに惹かれる読者も多いことだろう。

『エルナニ』は、古典派とロマン派の大論争を引き起こした、いわゆる「エルナニ合戦」で知られる問題作でもある。
しかし、今日の読者が本作を読んでも、我々にはそもそも古典的劇作がいかなるものかという下地ができていないので、解説を読んで納得こそすれ、読書中にはその革新性に気付かない読者が大半だと思う。
そういう意味では、戯曲に関する一教養として読むという側面がおのずと強調されやすい作品かもしれないが、ロマン派ののろしとでも言うべき『エルナニ』には教養的な価値も十分あるはずだ。

ストーリーそのものを楽しむこともできるし、劇作上の作法の差異を考察することもできる。
当然ながら、ユーゴーに対する理解を深めることもできる。
戯曲ということでたいへん読みやすい作品でもあるので、多様な読み方の可能な『エルナニ』が、この文庫化を機に多くの方に読まれることを期待したい。
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