『九十三年』 ユーゴー(潮文学ライブラリー)

九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)九十三年〈上〉 (潮文学ライブラリー)
(2005/03)
ヴィクトル ユゴー

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九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)九十三年〈下〉 (潮文学ライブラリー)
(2005/03)
ヴィクトル ユゴー

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書名:九十三年
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:辻 昶
出版社:潮出版社
ページ数:294(上)、381(下)

おすすめ度:★★★☆☆




ユーゴー晩年の長編作品である『九十三年』。
「九十三年」とは1793年を意味していて、これはすなわちロベスピエールが台頭してきた時代であり、フランス革命の混乱が頂点に達していた頃の物語である。
レ・ミゼラブル』にも革命を志す人々が描かれているが、『九十三年』は革命と反革命とのせめぎあいがより鮮明に描かれており、革命をテーマにした作品と言ってもいいだろう。

『九十三年』は、フランス革命の最中にフランス西部のヴァンデ地方で起きたヴァンデの反乱を題材にしている。
ヴァンデの反乱そのものはあまり日本では知られていないように思うが、フランス革命前後のおおよその事情を知っていれば、作品中でなされるユーゴーの説明の意味も把握できるだろうし、共和国派と王党派との間の熾烈な戦いの由来はほぼ察することができよう。
反乱軍と革命政府軍の激しい戦闘、権力を巡って揺れ動くパリ、司令官の心に生じた良心と義務の葛藤・・・大作家としての地位を不動のものとしていたユーゴーの手になる『九十三年』の読みどころは豊富である。
革命もの、戦争ものの好きな読者は必ずや楽しめるはずだ。

革命期を描いた文学作品は少なくないが、たいていの作品はごく一部の登場人物にスポットを当てて、革命はその背景として存在することが多いように思う。
歴史書ではなく文学作品であるから、そうなるのも当然といえば当然のことだろう。
文学作品として書かれた『九十三年』にしても、そういった私的なエピソードから成っている部分が目立つが、私には革命が凄惨をきわめた「九十三年」自体を描き出そうとしたユーゴーの意図が透けて見えるような気がした。
自由と博愛をうたった革命の負の側面を、「九十三年」が流した多くの血を・・・。

生と死が紙一重の戦争状態を多く描いた作品だけに、『九十三年』は決して明るい話ではない。
ユーゴーならではの、読者の心を揺さぶる重みのあるストーリーを求めている方にお勧めしたいと思う。
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