『死刑囚最後の日』 ユーゴー(岩波文庫)

死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8)死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8)
(1982/06/16)
ヴィクトル・ユーゴー

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書名:死刑囚最後の日
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者:豊島 与志雄
出版社:岩波書店
ページ数:169

おすすめ度:★★★★




ユーゴーが若い頃に書き上げた中編作品がこの『死刑囚最後の日』だ。
人が人の命を合法的に奪うという死刑制度の撤廃を求める立場から書かれた本なので、作品に盛り込まれた思想自体は容易に読み取ることができる。
死刑囚の目線で書かれた独白というスタイルが本書をたいへん読みやすくしており、ページ数も手頃なので、多くの人が死刑制度について考えるいい機縁となることだろう。

『死刑囚最後の日』には、主人公である死刑囚が刑の執行を一日一日と数え、迫りくる死に怯えながらも奇跡的な救いの訪れを期待せずにはいられないという哀れな様が克明に描かれている。
視点が一方的であるという事実は否めないが、そんな彼に同情しないでいることもまた不可能であろう。
同情に値する死刑囚を引き合いに出して死刑制度の是非を問うのはやや不適切な気がしないでもないが、あくまで文学作品として読んだ場合、この本の心理描写が優れていて、読者の興味を強く引き付けるものであることは間違いないように思う。

既述のとおり、『死刑囚最後の日』は死刑反対の立場で書かれたものなので、いくらか思想的なプロパガンダとしての性格も備えているため、読者が死刑制度に賛成か反対かによって、本書の評価が分かれたとしても何ら不思議ではない。
私自身が死刑制度をどう考えているかはともかくとしても、そもそも私は自らの主張を広めるための手段として芸術を用いるというやり方にあまりいい気がしないほうだ。
とはいっても、ユーゴーが『死刑囚最後の日』を執筆した頃のフランスは、同じ法治国家といえども、死刑判決の下される頻度や合理性、犯罪捜査の緻密さなどにおいて、今日とはまったく状況が異っていたのであろうという点は考慮すべきかもしれない。
ユーゴーの正義感がそのような人命の軽視を許すことができなかったということなのだろうか。

『死刑囚最後の日』は、タイトルから読者が想像し、期待するところの内容を備えた本である。
テーマがテーマだけに大いに議論の余地のある作品ではあるが、その余地をも楽しむことのできる作品として、強くお勧めしたい一冊だ。
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