『光あるうち光の中を歩め』 トルストイ(新潮文庫)

光あるうち光の中を歩め (新潮文庫)光あるうち光の中を歩め (新潮文庫)
(2005/05)
トルストイ

商品詳細を見る

書名:光あるうち光の中を歩め
著者:レフ・トルストイ
訳者:原 久一郎
出版社:新潮社
ページ数:153

おすすめ度:★★★☆☆




トルストイの作品が宗教色を強めて以降、初期の作品に分類される中編作品がこの『光あるうち光の中を歩め』だ。
そのせいか、登場人物の口を通してトルストイの思想が端的に表現されているように感じられた。
たいへん読みやすく、手頃な文章量でもある『光あるうち光の中を歩め』は、小説と『イワンのばか』などの民話風のものとの中間的な性格の作品ととらえてもいいように思う。

『光あるうち光の中を歩め』は、ローマ帝国によってキリスト教が過酷な弾圧を受けている、二世紀の辺境地域に舞台を設定している。
裕福な家庭に生まれ育った主人公ユリウスは、贅沢に溺れた青春時代を送りながらも、次第に商売でも頭角を現し始める。
世間からの信望も高まり、世俗的な意味合いで言うところのいわゆる「成功者」だ。
そんな彼にはキリスト教徒の友人がいて、ユリウスはキリスト教徒の生活に憧れると同時に、大多数の人々のように疑いと反発を感じてもいたのだが、最後には・・・。

原始キリスト教徒たちのような相互扶助を旨とする暮らしを自らの理想としたトルストイにとっては、『光あるうち光の中を歩め』の舞台設定は絶好であったといえよう。
ユリウスとキリスト教徒、ユリウスと非キリスト教徒との間に、一方はキリスト教を擁護し、他方は非難するという宗教談義がとめどなく繰り広げられるが、トルストイ自身が「回心」に至るまでの逡巡も、同じようなものだったのかもしれない。
そう考えると、この作品を読むことは、すなわちトルストイの心の声を聞くことのようにも思えてくる。

『光あるうち光の中を歩め』からトルストイの思想を汲み取ることはたやすいが、その分作品としての奥行きは欠けているように思う。
ストーリー自体はやや平板なので、万人が楽しめる作品とは言い難いものの、トルストイの思想や宗教をテーマにした小説作品に興味のある方にはぜひお勧めしたい。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク