『大使たち』 ヘンリー・ジェイムズ(岩波文庫)

大使たち〈上〉 (岩波文庫)大使たち〈上〉 (岩波文庫)
(2007/10/16)
ヘンリー ジェイムズ

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大使たち (下) (岩波文庫 赤)大使たち (下) (岩波文庫 赤)
(2007/11/16)
ヘンリー ジェイムズ

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書名:大使たち
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:青木 次生
出版社:岩波書店
ページ数:458(上)、432(下)

おすすめ度:★★★★




鳩の翼』、『金色の盃』と並び、ヘンリー・ジェイムズ後期の代表的な長編作品が、この『大使たち』である。
主人公の心理とその「視点」から見たその他の登場人物の心理に対する徹底的な描写は、それまでの文学作品には例のない革新性があるだろう。
一般に難解であるという評価を受けている作品であるが、思想的に難解であるとか、豊富な予備知識を要するという意味ではないので、ぜひ挑戦してみていただきたいと思う。

『大使たち』の主人公ストレザーは、これまで充実した生涯を送っていたとは感じていない、初老のアメリカ紳士である。
そんな彼が知人の富豪の女性からある依頼を受けてパリに、すなわち「大使」として赴くわけである。
周囲の人間との触れ合いを通じてストレザーの心理がいかに変化するか、深層に至るまで描き出すジェイムズの筆致は素晴らしく、それだけを追って読み進めても十分楽しめるものと思う。

ジェイムズ後期の作品では、多くのページ数を割いて登場人物の心理について克明に記述しているようでいて、不明瞭のままに留め置かれている部分が多い。
その不分明さを読者が補わなければならない点が難解であると言われる所以かとも思われるが、それだけ読者の能動性を促す作品であるとも言えるだろう。
ストーリーの転変がぐいぐい読者を引っ張っていくタイプの小説ではないにもかかわらず、ジェイムズの作品を読者が面白いと思えるのは、推理小説かと思えるほどに謎めいた雰囲気が漂っていて、その謎を解くためのヒントが徐々に与えられていくからなのかもしれない。

評価が高いわりに読まれないというジェイムズの後期作品だが、三部作と言われる本書と『鳩の翼』、『金色の盃』とは、いずれも文庫化されている。
確かに向き不向きがあると思われる作風で、すべての読者が楽しめるとは限らないが、高い評価を受けるのもうなずけるたいへん完成度の高い傑作だと思うので、一度試してみることをお勧めしたい。
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