『ボヌール・デ・ダム百貨店』 エミール・ゾラ(藤原書店)

ボヌール・デ・ダム百貨店―デパートの誕生 (ゾラ・セレクション)ボヌール・デ・ダム百貨店―デパートの誕生 (ゾラ・セレクション)
(2004/02)
エミール ゾラ

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書名:ボヌール・デ・ダム百貨店
著者:エミール・ゾラ
訳者:吉田 典子
出版社:藤原書店
ページ数:651

おすすめ度:★★★★




ルーゴン・マッカール叢書第十一巻がこの『ボヌール・デ・ダム百貨店』。
第十巻の『ごった煮』の続編として紹介されることも多いが、『ごった煮』を知らずとも十分一つの作品として完結している。
とはいえ、『ごった煮』の主人公オクターヴ・ムーレのその後が描かれているので、両方とも読む予定なら順序としては『ごった煮』を先に読むのがベターだ。

『ボヌール・デ・ダム百貨店』は、世界最初の百貨店といわれるボン・マルシェ百貨店をモデルにした、デパートの黎明期を描いた作品。
ゾラの目指したものは歴史書ではないから、記述のすべてを鵜呑みにするわけにはいかないが、それでもおよそ150年前のデパートの様子を想像してみるよすがとはなる。
今日のデパートのあり方と比べてみるだけでも、興味深い相違点が多いことだろう。

ところで、同時期のフランスの作家たちを思い返してみても、本格化した産業革命の進展や、大量消費社会の形成など、社会の一大変革を取り扱った作品を残した作家は意外と少ないのではなかろうか。
百貨店を取り上げるということ自体が、様々な角度から第二帝政期を浮き彫りにしようとしようとしたゾラらしい焦点の当て方なのだろうし、このような手法によって、ゾラのライフワークとも言うべきルーゴン・マッカール叢書は、その分量では大きく引けを取るとはいえども、バルザックの「人間喜劇」にはない幅と奥行きを獲得している。
そういう意味では、急速に普及していった鉄道を舞台にした作品である『獣人』に通ずるところのある、時代性に富んだ素晴らしいテーマの選び方だと思う。

テーマの選び方は非常にゾラらしく、百貨店内に陳列された商品の描写にも、印象派を擁護したゾラらしい華やかな色使いは健在だ。
しかし、ストーリーの力強さやインパクトにやや欠けるところがあるだけではなく、ルーゴン・マッカール叢書内において異色の観もあるので、これだけで読むよりは叢書内の一作品として読むほうが面白みも倍増することだろう。
そういうわけで、やや玄人向けの作品だと思う。
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