『死者の祭壇』 ヘンリー・ジェイムズ(審美社)

死者の祭壇死者の祭壇
(1992/03)
ヘンリ・ジェイムズ、牛玖 健治 他

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書名:死者の祭壇
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:野中 恵子
出版社:審美社
ページ数:108

おすすめ度:★★☆☆☆




長編のみならず、優れた短編作品も数多く残しているヘンリー・ジェイムズだが、そんな彼の短編作品一つを取り上げ、挿絵入りで一冊の単行本として出版したものが本書『死者の祭壇』だ。
『死者の祭壇』自体は、『大使たち』や『鳩の翼』といった後期作品より少し前に発表された作品であり、心理描写の精密さやすべてを明かさない曖昧な筆致からは、それらの長編作品の縮図のような印象を受ける読者もいるかもしれない。

『死者の祭壇』は舞台をロンドンに置き、主人公は内向的で、少しばかり偏執的な傾向のある初老の紳士である。
その彼が「ストランサム」という名を名乗るとあっては、そこから『大使たち』を思い浮かべる読者がいても不思議ではない。
ストーリーはタイトルから想像できるとおりの暗めの雰囲気に支配されたものなので、読みどころはやはり登場人物の心理描写になってくるのではなかろうか。

本書には牛玖健治氏の絵が複数挿入されている。
それが理由で、本書は画用紙と言っても過言ではないほどに厚手の用紙を使ったのだろうか。
ここで絵画について詳細に論じるつもりはないが、ギュスターヴ・ドレの挿絵をこよなく愛する私からすると、牛玖氏の作風は必ずしもストーリー中の一場面を反映しているようには見えないため、あまり好きになれない絵であるように感じられた。

審美社から出されたこの『死者の祭壇』は、さほど有名ではない一つの短編に挿絵を入れて単行本化するというやや珍しい試みが実現した本であるが、その割高感はどうしても拭い去ることができない。
20年ほど前の本であるために新品での入手はほぼ不可能で、まして中古が新品の価格を上回って販売されているのでなおさらである。
小説としての『死者の祭壇』の出来は決して悪くないものの、よほどのジェイムズ愛好家でもない限りお勧めできない本だ。
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