『美と芸術の理論―カリアス書簡』 シラー(岩波文庫)

美と芸術の理論―カリアス書簡 (岩波文庫 赤 410-2)美と芸術の理論―カリアス書簡 (岩波文庫 赤 410-2)
(1974/06/17)
シラー

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書名:美と芸術の理論―カリアス書簡
著者:フリードリヒ・フォン・シラー
訳者:草薙 正夫
出版社:岩波書店
ページ数:96

おすすめ度:★★★★




おそらく日本ではシラーという作家は戯曲の作者として最も知られているだろうが、彼は詩人でもあり歴史家でもあり、そして美学に関する著作を発表する思想家としての一面もあるという、文芸に関して多方面で活躍した人物であった。
そんな彼の美学を最もわかりやすく述べたものがこの『美と芸術の理論―カリアス書簡』である。
『カリアス書簡』とあることからもわかるように、書簡という形でシラーの美に対する思想が平易に説明されており、まして100ページに満たないという手頃さもあるので、シラーの美学はもちろん、美学そのものに関心のある方が始めて手に取る本としても悪くないように思う。

シラーの美学におけるキーワードを一つ述べろと言われれば、私は「自律性」を選ぶだろう。
法則性の中における自律性が美しい、これがシラーの主張の根底だと私はとらえているが、確かにたいていの美はそれで説明がつくのではなかろうか。
とはいえ、より厳密に考えれば彼の美学にもいくつか論理の脆弱さを見出すことができるはずだ。
大部の著作と異なり、本書から一つの論題に関して論及し尽くしたという印象を受けることはないので、それだけ読者が異論・反論など、自らの考えをぶつけやすい本でもあると言えるかもしれない。
シラーの美学はカントの哲学を発展させたものと指摘されているが、カントの哲学や美学を知らずとも本書の理解にさほど影響はないように思うので、ぜひ気軽に読んでみていただきたい。

美術館や展覧会に赴く前に本書『美と芸術の理論―カリアス書簡』にざっと目を通しておくだけでも、絵画や彫刻をシラーの視線で鑑賞することが可能となり、自らの美術に対する造詣が深まったと実感していただけることと思う。
さらに言えば、シラーの美学を知った上で『ヴァレンシュタイン』や『ヴィルヘルム・テル』などのシラーの手になる戯曲を読めば、また新しい楽しみ方が開けてくるに違いない。
豊富な例示がなされているためにたいへん理解しやすいこの『美と芸術の理論―カリアス書簡』、芸術論や美学論は難解そうで敬遠しがちという方にもお勧めできる本だ。
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