『ヘンリー・ジェイムズ短編集-「ねじの回転」以前』ヘンリー・ジェイムズ(文芸社)

ヘンリー・ジェイムズ短編集―「ねじの回転」以前―ヘンリー・ジェイムズ短編集―「ねじの回転」以前―
(2010/05/01)
ヘンリー・ジェイムズ

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書名:ヘンリー・ジェイムズ短編集-「ねじの回転」以前
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:李 春喜
出版社:文芸社
ページ数:320

おすすめ度:★★★★




ジェイムズの短編集はいくつか出されているが、それらの中でおそらく最も新しいものがこの『ヘンリー・ジェイムズ短編集-「ねじの回転」以前』だ。
わざわざ副題で『ねじの回転』以前と断ってはいるものの、必ずしも内容の上で『ねじの回転』に直結する作品集というわけでもないため、単純にジェイムズ初期の短編集ととらえたほうがいいかもしれない。
収録作品六編はいずれも本邦初訳とのことなので、初期のジェイムズに興味のある方はぜひ手にしていただきたいと思う。

ジェイムズが二十代から三十代前半にかけて発表した作品を集めた本書には、心理主義的な作風の強いものや確固たる「視点」から描かれた作品も収められているため、読者が『ヘンリー・ジェイムズ短編集』という名の本に期待するところのものに仕上がっている。
そんな中、モーパッサンを思わせるようなストーリー重視の作品に出会うという、うれしい期待はずれもある。
とはいえ、舞台がヨーロッパだったりアメリカだったり、登場人物が大西洋を行き来したりすることから見ても、やはりジェイムズらしさが存分に発揮されている短編集であると言っていいのではなかろうか。

収録作品は、『過ちの悲劇』、『友人ビンアム』、『ある肖像画の物語』、『ある問題』、『ユースタス様』、『アディナ』の六編で、私のお勧めは『ある肖像画の物語』だ。
ジェイムズで「肖像画」といえば、『ある婦人の肖像』を思い起こしてしまいがちかもしれないが、こちらはまさしく「肖像画」とそれを取り巻く人々の物語で、多少強引な比較を許してもらえるならば、『ある婦人の肖像』よりはむしろワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』に近いように思う。

文芸社の出版物にこれまであまりなじみがなかった私だが、いざ読んでみると、誤字や脱字は少ないし、製本上の質の良さから考えれば、1600円+税という値段も相当に手頃であるという印象を受けた。
3000円以上の本を買ってそのつくりが粗雑だとあまりいい気がしないものだが、そういう面でこの本に失望することは絶対にないだろう。
収録作品はややマイナーな作品ばかりなので、ジェイムズを初めて読んでみようという方には不向きのような気もするが、ジェイムズ初期の作風を俯瞰する上で格好の一冊であることは確実だ。
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