『たくみと恋』 シラー(岩波文庫)

たくみと恋 (岩波文庫 赤 410-0)たくみと恋 (岩波文庫 赤 410-0)
(1991/03)
シラア

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書名:たくみと恋
著者:フリードリヒ・フォン・シラー
訳者:実吉 捷郎
出版社:岩波書店
ページ数:180

おすすめ度:★★★☆☆




若者たちの悲恋を扱った、シラーの若い頃の戯曲作品である『たくみと恋』。
悲劇の登場人物は通常貴族等の上流社会の人間に限られていたが、主要登場人物に平民を選ぶという新しさが見られる作品だ。
シラーの作品の中では上演回数も多いほうらしく、シラーの初期の代表的な作品として、一読の価値ある本であると言えるだろう。

宰相の息子であるフェルディナントは、町に暮らす平凡な音楽家の娘ルイーゼと相思相愛の恋に落ち、将来を誓い合う。
しかし、それを知った娘の父親は娘が弄ばれることを危惧し反対を唱え、さらに悪いことには、それを知った宰相が二人を別れさせるための陰険な策略をめぐらし・・・。
身分の違いが恋を破綻させるというあらすじ自体に斬新さを見出すことはできないが、登場人物が多くないだけにそれぞれの人物の描き分けが非常に鮮明で、若きシラーのほとばしるような筆致にも助けられ、一気に読み通せてしまう作品であろう。

『たくみと恋』は、『群盗』などと同様、シラーの権力筋への反抗心を垣間見ることができる作品でもある。
自由に対するシラーの考え方や、その結実である戯曲が時の権力者に喜ばれるわけもなく、若くして亡命生活を余儀なくされたシラーは、この作品において権力者と平民階級を対比させ、当然のように後者に精神的優位を認めたかのようだ。
一見すると思想性のなさそうな市民悲劇であるが、シラーの熱情は『たくみと恋』の底流として存在しており、この作品にシラーのファンを喜ばせる色を添えていると言えようか。

高い理想を抱き続け、作品世界にもその理想が浸透しているシラー。
彼の理想は必ずしも古びて魅力が失せてしまったわけではないはずなので、この『たくみと恋』を通じて、そこに表れている高邁な精神の一端に触れていただければと思う。
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