『デミアン』 ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)

デミアン (新潮文庫)デミアン (新潮文庫)
(1951/11)
ヘッセ

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書名:デミアン
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:高橋 健二
出版社:新潮社
ページ数:223

おすすめ度:★★★★★




車輪の下』と並び、ヘッセの代表作として知られる小説が『デミアン』だ。
ヘッセの作風が大きく変わる転換点として注目されてもいるが、その反面、しばしば彼の作品が難解さを増していく契機とも言われているらしい。
確かに、よくわからなかったという感想も多く聞かれる作品であるが、悩める主人公が自身の精神を掘り下げ、手探りながらも己の進むべき道を見出そうとする様は、多くの読者を魅了するに違いない。
いかにもヘッセらしい傑作として強くお勧めしたい。

主人公の少年シンクレールは、ひょんなことからデミアンという少年に出会う。
他の少年たちにはない大人びた風格を備えたデミアンから影響を受けたシンクレールは、世界や自己などについての模索を始めるが・・・。
『デミアン』を読んでいるうちに、若いときにデミアンのような人間に出会えるという幸福に対して、憧れとも羨望ともつかぬ気持ちを抱いてしまうのは、おそらく私だけではないのではなかろうか。

ヘッセが創造したデミアンという人間像は、その年齢の割にあまりにも老成し、万事に達観したかのような精神態度ゆえに、ひょっとすると現実味が薄いと感じられるかもしれない。
デミアンに限らず、文学作品に登場する理想的な人物像は、確かにいくらかリアリティが損なわれていることが多いようにも思われるが、それが原因で作家の思い描いた理想まで、その価値が減ずるわけではないだろう。
外的事件の連鎖からなる物語を好まれる方には『デミアン』は退屈と感じられるかもしれないが、高邁な理想が帯びる美しさに触れたい方には自信を持ってお勧めできる本の一つだ。

青年期の主人公を描いた名作が多いからか、ヘッセには青年向けの作品を書くというイメージがある。
そして『デミアン』はそのイメージを裏切らない、まさしく青年期に読まれるべき本だろう。
すべての青年に感銘を与えるかどうかはもちろんわからないが、自らも思い悩むことの多かった作家であるヘッセが、作中の主人公に混沌たる外面世界・内面世界からどのような光明を見出させるのか、それを読み解こうと試みるだけでも十分楽しめる、また、十分読む価値のある作品ではなかろうか。
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