『シッダルタ』 ヘルマン・ヘッセ(岩波文庫)

シッダルタ (岩波文庫)シッダルタ (岩波文庫)
(2011/08/19)
ヘルマン・ヘッセ

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書名:シッダルタ
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:手塚 富雄
出版社:岩波書店
ページ数:224

おすすめ度:★★★★




長きにわたり精神世界の彷徨を続けたヘッセによる釈迦の物語がこの『シッダルタ』である。
宗教談義にはまったく興味がないという方もおられるだろうから、一般受けはしにくいかもしれないが、平易な文章で書かれた含蓄のある作品があるとすれば、ヘッセの場合は『シッダルタ』こそがそれに該当するだろうし、さらには心や風景を巧みに描いた詩的作品として読むことも可能に思われる。
内容が内容だけにすらすら読める作品ではないかもしれないが、さほど厚い本ではないので、気軽に手に取ってみていただきたい作品だ。

世界的に高名である『シッダルタ』の主人公について、あまり多くを語る必要はないだろう。
ここでは、ヘッセのファンであれば、平和と沈思黙考を好むシッダルタの姿に、作者であるヘッセの姿を重ね合わせることもできるのではないかとだけ言い添えておきたい。

ドイツはかねてよりインド思想に関する研究が盛んで、ショーペンハウアーを筆頭に、ドイツの知識人のインド思想への接近は一つの伝統と化しているような気もしないでもないが、父が宣教師としてインドに滞在したことがあり、その地で出会ったインド生まれの女性との間に生を享けたというヘルマン・ヘッセは、人一倍東洋思想に憧れと親近感を抱きやすい環境で育ったという経緯がある。
成人してからアジアへ旅行した経験もあるヘッセであるからこそ、『シッダルタ』を物すことにもなったのだろう。

読者が仏教徒であるかどうかにかかわらず、『シッダルタ』はキリスト教的な作品よりも日本人に親しみやすいのではなかろうか。
シッダルタという実在の偉人を描いた作品なので、どこまでが真実なのか、もしくはどこまでが仏教徒の認める正統的なシッダルタの生涯と一致するのかと気になる読者も少なからずいることだろう。
何を隠そう私もその一人なのだが、『シッダルタ』が古来より日本に根付いている仏教の教えや釈迦の生涯に対して新たな関心を呼び起こす作品であることは間違いないと思う。
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