『ベートーヴェンの生涯』 ロマン・ロラン(岩波文庫)

ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫)ベートーヴェンの生涯 (岩波文庫)
(1965/04/16)
ロマン・ロラン

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書名:ベートーヴェンの生涯
著者:ロマン・ロラン
訳者:片山 敏彦
出版社:岩波書店
ページ数:200

おすすめ度:★★★★




偉大な芸術家の伝記を数多く残しているロランだが、その中で最も知られ、ロランの代表作の一つにも数えられているのがこの『ベートーヴェンの生涯』である。
音楽史の講師となったという経歴を持つロランだけあり、音楽家に対しては並の作家以上の知識を持っていたので、この作品にもそれが存分に生かされているといえるだろう。
音楽家の生涯を描いたロランの代表作『ジャン・クリストフ』との関連が言及されることも多く、ロランに関心のある方はぜひ読んでみていただきたい一冊だ。

『ベートーヴェンの生涯』の記述は、全体にいかにもロランらしい焦点の絞り方をしている。
苦悩し、創造し、褒められ、けなされ、そしてまた新たな創造へと赴く・・・そんな芸術家の姿が浮き彫りにされている。
世間が思い描く毅然たる芸術家像と重複するエピソードが多く、本書を読めば、誰もがその名を知るベートーヴェンに対する賞賛の念が、よりいっそう強まるはずである。

文庫本、なおかつ解説を含めて200ページと、とても手頃な文章量にまとまっているので手に取りやすい作品だが、決して短命というわけではなかったベートーヴェンの伝記として読むのであれば、少々物足りなさが感じられるかもしれない。
なにしろ対象となる人物が生前から偉大な音楽家として高い評価を得ていたベートーヴェンであるから、伝記的事実に事欠くことはないのである。
他の長編伝記作品と比べれば、ロランのそれは断片的な継ぎはぎに思われても仕方ないことだろう。
また、ベートーヴェンの偉大な面を強調しすぎたとして、公平さを欠くという批判もできるだろう。
とはいえ、偉大な芸術家の偉大な精神を現前させようというロランの目的に沿って構成されている本書を、その同じ目的を持って読むのであれば、これに勝る書き方はなかったのではなかろうかと思えるほど、本書は素晴らしい出来の作品である。
そういう意味では、ベートーヴェンに強い関心を抱いている読者向けというよりは、ベートーヴェンのことをあまり知らない方に向いているのかもしれない。
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