『プラッサンの征服』 エミール・ゾラ(論創社)
書名:プラッサンの征服
著者:エミール・ゾラ
訳者:小田 光雄
出版社:論創社
ページ数:441
著者:エミール・ゾラ
訳者:小田 光雄
出版社:論創社
ページ数:441
おすすめ度:★★★★☆
ルーゴン・マッカール叢書第四巻、『プラッサンの征服』。
第一巻の『ルーゴン家の誕生』の続編的位置付けであるだけではなく、後の作品で重要な登場人物となるムーレ家の人々が準備されてもおり、叢書内において枝分かれの起点の一つとなる作品だ。
同じ続編的性格を備えているといえども、『ごった煮』と『ボヌール・デ・ダム百貨店』の二作品より、『ルーゴン家の誕生』と『プラッサンの征服』のほうが、筋の上での結びつきが強い。
家族関係も多少複雑なので、『プラッサンの征服』だけを読んでも理解しにくい部分が多く、やはり『ルーゴン家の誕生』と合わせて読まれることをお勧めしたい。
本作『プラッサンの征服』は、この論創社版が本邦初訳とのこと。
訳者の小田光雄氏は、『プラッサンの征服』がこれまで翻訳されなかったのは、前後との関係性が強い分、単独訳が出版されにくかったのではないか、と推測されている。
非常にうなずける考えのように思うが、これは裏を返せば、『プラッサンの征服』が叢書の中で重要な役割を占めているということだろう。
ルーゴン・マッカール叢書に興味のある読者が飛ばしてはいけない必読の一巻ということだ。
『プラッサンの征服』の舞台はもちろんプラッサン。
ムーレ家に下宿人として謎めいた神父がやってくるところから話は始まる。
その怪しげな神父をはじめ、登場人物たちのうち何人かの目論見がなかなか明かされず、ミステリアスな雰囲気が持続しているため、読者は嫌でも興味をそそられる。
人物関係さえ把握できれば、ストーリー自体は非常にわかりやすいし、作品中における会話の割合も高いので、とても楽に読み進めることのできる作品だ。
『ルーゴン家の誕生』についても同じことが言えるが、ある程度フランスの歴史を知っておいたほうが理解が深まるかもしれない。
そうは言っても、もちろん歴史的知識は必須ではないし、理解を深めずともストーリーを追っていくだけでも『プラッサンの征服』は十分面白いはずだ。
そしてさらに、『ルーゴン家の誕生』の後に続けて読めば何十倍も楽しめる、これは間違いない。
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