『風景画家』 ヘンリー・ジェイムズ(文化書房博文社)

風景画家―ヘンリー・ジェイムズ名作短編集風景画家―ヘンリー・ジェイムズ名作短編集
(1998/12)
ヘンリー ジェイムズ

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書名:風景画家 - ヘンリー・ジェイムズ名作短編集
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:仁木 勝治
出版社:文化書房博文社
ページ数:253

おすすめ度:★★★★




多くの短編小説を残したヘンリー・ジェイムズだが、表題作を含む全五編を収めた短編集がこの『風景画家』である。
初期から後期まで、幅広くジェイムズの作品を集めている一冊なので、文庫化されている作品以外もいろいろ読んでみたいという方には格好の短編集といえるだろう。
難解な作家と評されることの多いジェイムズだが、本書の短編はどれも読みやすいものばかりであるから気軽に手にしていただければと思う。

本書は表題作である『風景画家』の他に、『異常な病人』、『古い衣装のロマンス』、『ほんもの』、『知恵の木』の四編を収録している。
ちなみに、私は『異常な病人』を読んで『ある婦人の肖像』を、『古い衣装のロマンス』を読んで『ねじの回転』を、それぞれ思い出した。
個人的に最もお勧めなのは、物語性が強く、読後の印象もよい『ほんもの』であるが、他の作品もみな独特の味わいがあって多くの方が楽しめるものだと思う。

芸術家小説から幽霊譚まで収録している本書は、ジェイムズが得意とする短編のジャンルは網羅しており、中・上流階級の人々を描いているというジェイムズらしさも健在だ。
仮にジェイムズの短編に対するイメージをこの一冊から作り上げても、邦訳の出ている限りを読み尽くした場合と比べて、それら二つのイメージにさほど大きな隔たりはないのではなかろうかと思えるほど、『風景画家』は「ジェイムズ名作短編集」との副題にふさわしい、適度なまとまりを見せている。

この『風景画家』にはジェイムズの代表的な作品は収録されていないが、それにもかかわらずジェイムズの作風がよく表れている短編集となっているように思う。
少々誤字・脱字の類が気になるものの、作品数の割りには単行本化されていないジェイムズの短編を読みたいと思われる方は、必ずや楽しめる本といえるだろう。
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