『雲』 ヘルマン・ヘッセ(朝日出版社)

ヘルマン・ヘッセ『雲』ヘルマン・ヘッセ『雲』
(2001/04)
ヘルマン ヘッセ

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書名:
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:倉田 勇治
出版社:朝日出版社
ページ数:196

おすすめ度:★★★☆☆




小説も詩も書き、多くのエッセイも残したヘッセだが、そんな彼の雲にまつわる作品をまとめ上げたのが本書『雲』である。
ヘッセは比較的多作な作家であるとはいえ、雲を主題とした作品がここまで多いものかと、読者はいまさらのように驚かされることだろう。
『雲』はヘッセの死後に第三者の編集を経た本であり、ヘッセ自身の監修による本ではないのだが、詩作品はもちろん、『郷愁 - ペーター・カーメンチント』などの小説からの抜粋や、遺稿から生前未発表の原稿をも収録するなど、「雲」というテーマの下で死後出版ならではのまとまりを見せている。
ヘッセの水彩画もいくつか掲載されているし、さらにはトーマス・シュミットというカメラマンによる美しい写真を複数織り交ぜて編まれた非常に味わいのある仕上がりなので、ヘッセに関心のある方にはぜひ読んでみていただきたい一冊だ。

ヘッセが自然の美しさに対する感受性のきわめて強い作家であることはよく知られているように思うが、雲とヘッセとの関係性は、単にその美しさを鑑賞するという傍観者的な立場には止まらないものがある。
自身の存在のはかなさや孤独、そういったものを痛切に感じていたヘッセは、しばしば雲を人間にたとえ、共感し憧れるような目線を送る。
浮雲のような自分は、どこへ向かっていくのだろうか・・・。
そんな問いかけが聞こえてくるような気がする。

あまり再版されることがなかったからか、この『雲』は現在新品があまり出回っていないが、中古品ならばアマゾンでとても安く売られている。
ヘッセのファンであれば、本書から汲み取ることのできるヘッセの自然に対する感受性の強さを楽しむことができることは請け合いだ。
ある晴れた日に空を見上げ、流れる雲を目で追い、その変幻自在に漂う様を美しいと感じたことのあるすべての人に。
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