『失踪者』 カフカ(白水uブックス)

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)
(2006/04)
フランツ カフカ

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書名:失踪者
著者:フランツ・カフカ
訳者:池内 紀
出版社:白水社
ページ数:361

おすすめ度:★★★★




審判』、『』と並び、カフカの長編三部作と呼ばれているのがこの『失踪者』だ。
かつては、カフカの友人であり遺稿を編集・出版したマックス・ブロートの命名による『アメリカ』が表題として用いられていたが、現在では研究の成果を踏まえた結果、カフカの本来の意図に基づいて『失踪者』というタイトルを用いるのが一般的になっている。
とはいえ、断片の処理の仕方や配列順序などに若干の異同はあるのかもしれないが、基本的には『アメリカ』と『失踪者』の両者は同じ作品である。

『失踪者』の主人公カール・ロスマンは、不祥事が原因で両親からアメリカ行きを命じられた若い青年である。
親戚の下へ身を寄せつつ、未知の国でいろいろな人々と出会うカールだが、ひょんなことから「失踪者」となってしまい・・・。
審判』や『』と同様、『失踪者』も未完の作品で、断章と合わせて読むと途切れ途切れの感を強く受けるが、カールを主人公にした教養小説として読むことも可能であろう。
そういう意味では、カフカが厳密にはチェコ人であるとはいえ、ドイツ文学の一大潮流に沿った作品ととらえることもできるのではなかろうか。

審判』のヨーゼフ・K、『』のK、そして『失踪者』のカール・ロスマン。
長編作品の主人公の名前に連関性が見受けられ、まして「K」というイニシャルは作者であるカフカをも連想させずにはいない。
それらがいずれも刊行時には変更するつもりの仮の名前だったとしても、大いに興味をそそる点ではある。

カフカの代表作といえば、たいていは『変身』、『審判』、『』の三作が挙げられる。
これら三作は邦訳の種類も豊富であり、それと比べると『失踪者』もしくは『アメリカ』はその注目度がやや劣っているようだ。
事実、『失踪者』においてはカフカらしい不条理さがやや薄められているような印象を受けるが、それでも他の作品と合わせて読むと大いに楽しめる本であることは間違いなく、カフカに関心のある方はぜひ読んでみていただきたいと思う。
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