『流刑地にて』 フランツ・カフカ(白水uブックス)

流刑地にて―カフカ・コレクション (白水uブックス)流刑地にて―カフカ・コレクション (白水uブックス)
(2006/07)
フランツ カフカ

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書名:流刑地にて
著者:フランツ・カフカ
訳者:池内 紀
出版社:白水社
ページ数:184

おすすめ度:★★★★




表題作をはじめ、カフカの代表的な短編四編を収録したのがこの『流刑地にて』である。
カフカという作家は『変身』や『審判』といった中編・長編以外の作品にもその特徴が非常によく表れているため、カフカに関心のある読者であれば、カフカ像を補完するためにも、その短編作品に接することは不可欠であろう。
収録作品はいずれもカフカが生前刊行した作品ということで、第三者がカフカの死後に遺稿を編集した長編作品とは異なり、確実にカフカが意図したところのものが訳出されているという意味では、本書はカフカを知るための格好の手がかりとなるはずだ。

本書『流刑地にて』は、『判決』、『観察』、『火夫』が併録されている。
流刑地に設置された処刑のための奇妙な機械とそれを取り巻く人々を扱った『流刑地にて』は、現実味の薄まった血の香りの描かれた、いかにもカフカらしい作品である。
タイトルこそ似ているものの、『審判』とは異なる雰囲気を帯びている『判決』は、カフカの伝記的事実と照らし合わせて鑑賞すると大いに興味をそそられることだろう。
また、『火夫』は『失踪者』の第一章に該当するため、すでにその内容を知っている読者も多いかもしれない。
カフカ短篇集 (岩波文庫)カフカ短篇集 (岩波文庫)
(1987/01/16)
カフカ

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『流刑地にて』は、岩波文庫からも同じく池内紀氏の翻訳が出されている。
こちらは『カフカ短篇集』と題されているが、本書『流刑地にて』の収録作品との重複を含む約20の短編を収めており、カフカの短編世界を堪能するうえではこちらのほうが手頃でいいのかもしれない。

カフカ研究の第一人者であるにもかかわらず、専門家風を吹かせることのない池内先生の訳業は、いつもながらカフカ文学を一般の読者にも親しみやすいものとしてくれている。
変身』や『審判』を読み、さらに『流刑地にて』にも触れた読者は、他の作家には真似することのできないオリジナリティとミステリアスさが魅力のカフカ・ワールドにどっぷりとはまり始めることだろう。
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