『少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集』 ヘルマン・ヘッセ(草思社)
![]() | 少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集 (2010/12/21) ヘルマン・ヘッセ 商品詳細を見る |
書名:少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:岡田朝雄
出版社:草思社
ページ数:200
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:岡田朝雄
出版社:草思社
ページ数:200
おすすめ度:★★★★☆
『車輪の下』に代表される、ヘッセの若い頃の作品4点を収録したのが本書『少年の日の思い出 ヘッセ青春小説集』だ。
表題作の他に、『ラテン語学校生』、『大旋風』、『美しきかな青春』の3編が収められており、特に『美しきかな青春』はヘッセの代表的な中編作品でもあるので、ラインナップは充実しているといえるだろう。
副題にもあるようにヘッセの青春小説を集めたということで、情感豊かな主人公は多くの読者の共感を得るに違いない。
いずれの作品からも後期のヘッセに見られるような難解な思想性は感じられず、たいへん読みやすいのが特徴でもある。
『少年の日の思い出』は、蝶の採集に夢中になっていた少年のエピソードである。
10ページそこそこの小品ながら、読む者の胸を打つ力は決して小さくはないはずだ。
ヘッセの蝶にまつわる散文・詩作品を集めた『蝶』に収録されている『クジャクヤママユ』を改稿したものが『少年の日の思い出』らしいが、その『蝶』のほうはずいぶん前から廃刊とのことなので、多少の異同はあるにせよ、本書によって再び日の目を見た作品といえるだろう。
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併録されている作品のうち、『美しきかな青春』は新潮文庫でいうところの『青春は美わし』と訳者は違えど同じ作品であり、こちらの文庫版にはさらに『ラテン語学校生』も訳出されているため、『少年の日の思い出』とたいへん似通った一冊となっている。
肝心の『少年の日の思い出』こそ載っていないが、いっそう手頃な形でヘッセの青春小説を味わいたい方にはこちらもお勧めだ。
『少年の日の思い出』は、長きにわたって複数の中学の国語教科書に採用されていて、それが現在でも続いているらしい。
私自身は不幸にして『少年の日の思い出』を採用していない教科書で学んだらしく、『少年の日の思い出』にまつわる、それこそ少年の日の思い出は一つも持ち合わせていないのだが、読者の中には懐かしい気持ちを胸にしながら読まれる方もおられるのではなかろうか。
仮に『少年の日の思い出』を知らずとも、ヘッセの描く甘く、そしてほろ苦い青春の一ページは、読者の追憶を誘ってやまないことだろう。
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