『娼婦の栄光と悲惨』 バルザック(藤原書店)

娼婦の栄光と悲惨―悪党ヴォートラン最後の変身〈上〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)娼婦の栄光と悲惨―悪党ヴォートラン最後の変身〈上〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)
(2000/12)
バルザック

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娼婦の栄光と悲惨―悪党ヴォートラン最後の変身〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)娼婦の栄光と悲惨―悪党ヴォートラン最後の変身〈下〉 (バルザック「人間喜劇」セレクション)
(2000/12)
バルザック

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書名:娼婦の栄光と悲惨(上・下巻)
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:飯島 耕一
出版社:藤原書店
ページ数:440(上)、432(下)

おすすめ度:★★★★★




ヴォートラン3部作の第3作目、『娼婦の栄光と悲惨』。
これは面白い、四の五の考えずにストーリーを追って読み進めていくだけでも十分面白い。
3部作の前2作においてヴォートランの活躍に物足りなさを感じていた読者も、『娼婦の栄光と悲惨』を読んでなお彼の働きに不満が残るということはないだろう。
バルザックのすべての作品に目を通したわけではないが、『娼婦の栄光と悲惨』こそ、現時点で私が思うバルザックの最高傑作だ。

『娼婦の栄光と悲惨』は、『幻滅』の続編に当たる。
3部作とはいっても、『ペール・ゴリオ』と『幻滅』との間に筋の上での直接的なつながりはないが、『娼婦の栄光と悲惨』を『幻滅』と切り離して考えることは不可能であるほどに話がつながっているので、『幻滅』を先に読んでおくとさらに面白みが増すはずだ。
幻滅』の主人公であるリュシアンは、『娼婦の栄光と悲惨』でもまた主要登場人物であり、彼のその後の運命が語られている『娼婦の栄光と悲惨』は、『幻滅』の読者には非常に興味深いものとなるだろう。

『娼婦の栄光と悲惨』は、娼婦とそれを取り巻く男たちの物語であると要約できなくもないが、終盤にさしかかってからのヴォートランの目覚ましい活躍ぶりと、彼を中心とした急展開の連続によって、『娼婦の栄光と悲惨』を読み終えた読者は、もっぱらヴォートランの物語を読んでいたかのような錯覚に包まれるかもしれない。
これはなにもバルザックが娼婦の描き方に失敗したからでも、リュシアンの使い方がまずかったからというのでもなく、他の登場人物の存在を霞ませてしまうぐらいヴォートランという男が面白いということだ。
そういうわけで、藤原書店のこの版では「悪党ヴォートラン最後の変身」という副題をつけているのだろう。
とはいえ、私は訳者や出版社が勝手につけた副題にはあまり感心しないことが多いのだが・・・。

本作にはラスティニャックやニュシンゲンも再登場する。
つまり、ヴォートラン3部作の1作目である『ペール・ゴリオ』とは、ヴォートラン以外の点でも結びついているということだ。
縦横無尽に人物網を張り巡らせることによって、人間喜劇は前代未聞の幅と奥行きを獲得しているわけだが、読者がこの網にからめ取られることこそ、まさにバルザックの思うつぼなのだろう。
現に私はまんまとバルザックの術中に陥っており、バルザックの小説を読んでいて、貴族、軍人、代訴人、政治家、伊達男など、知った名前の人物が顔を出すとそれだけでうれしくなってしまう。
人間喜劇を代表するこの3部作を皮切りに、少しでも多くバルザックの作品に触れてもらえれば、旧友に再会したかのようなこの独特の喜びを感じていただけるのではないかと思う。
『娼婦の栄光と悲惨』だけではなく、バルザックが私のお勧めだ。
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