『分別と多感』 ジェーン・オースティン(ちくま文庫)

分別と多感 (ちくま文庫)分別と多感 (ちくま文庫)
(2007/02)
ジェイン オースティン

商品詳細を見る

書名:分別と多感
著者:ジェーン・オースティン
訳者:中野 康司
出版社:筑摩書房
ページ数:535

おすすめ度:★★★★




自負と偏見』や『エマ』を代表作とするオースティンは、主に六つの長編作品によって知られているが、その一つがこの『分別と多感』である。
文章の読みやすさや読者を引き込む物語性の強さは全二者に劣らないものがあり、一冊の文庫本になっているという手頃さもあるので、幅広い読者層にお勧めしたい作品だ。

『分別と多感』も、若き乙女の結婚問題が軸となる点はオースティンの他の作品と変わらない。
父の死により境遇が一変した一家の、理知的で分別ある姉のエリナー、多感で素直な感情表現を好む妹のマリアン、この二人の恋愛模様が巧みに描かれている。
二人の姉妹がそれぞれ「分別」と「多感」、ひいては理性と感情を代表するわけであるが、そのような構成を忘れさせるほどストーリー展開に没入する読者がいても何ら不思議はないはずだ。
いつか晴れた日に [DVD]いつか晴れた日に [DVD]
(2010/09/22)
エマ・トンプソン、ヒュー・グラント 他

商品詳細を見る

右は『分別と多感』を原作にした映画『いつか晴れた日に』である。
小説としての『分別と多感』が日本ではあまり有名な作品ではないからか、タイトルこそ大幅に改変されているが、内容は概ね原作に忠実になっており、映画としての出来栄えも悪くないように思う。
原作にはないシーンの若干の追加、さらにはエピソードの削除や統合が数か所行われているのは事実であるが、500ページを超える長編作品である『分別と多感』を二時間そこそこという映画の枠に収めるに当たり、全体に非常にうまく脚色されているように感じられた。
『分別と多感』の読者はぜひこちらも鑑賞していただきたいと思うし、先に映画を見られた方は次に活字で味わっていただければと思う。

翻訳の種類がさほど多くない『分別と多感』だが、それはこの作品が退屈だからとか出来が悪いからというわけではなく、単に一般的には『自負と偏見』や『エマ』の方が評価が高いというだけのことなのだろう。
オースティンの鋭い人間観察眼を裏付けるかのような、的確になされた登場人物の性格付けは『分別と多感』にも表れていて、時折皮肉のとげが秘められた文体も心地よく、オースティンのファンならずとも楽しめる作品であると言えるはずだ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク